こんにちは、今回は『膠原病における皮膚病変』について取り上げていきたいと思います。
膠原病で認める皮膚病変にはどういったものがあるのか気になります。
よろしくお願いします。
膠原病における皮膚病変について
膠原病は、異常な自己免疫により全身にさまざまな症状を認める病気ですが、多くの疾患で皮膚病変を認めます。
それぞれの疾患によって特徴的な皮膚病変があり、皮膚病変から病気の存在に気付くことも多いです。
今回は、それぞれの皮膚病変にフォーカスを当てて見ていきたいと思います。
全身性エリテマトーデス(SLE)
蝶形紅斑
(画像引用:http://www.sapporo-nenkin.jp/?page_id=488)
〈 SLEで認める蝶形紅斑の特徴 〉
- 左右ほぼ対称の分布をとる
- 鼻根部に皮疹がある
- 鼻唇溝(ほうれい線)を避けること(鼻唇溝を避けない例もある)
環状紅斑
( 画像引用:https://www.nakayamashoten.jp/sample/pdf/978-4-521-73344-9.pdf )
環状紅斑は辺縁は発赤が強く、軽度隆起しており、中心は辺縁よりも紅斑が薄くなるのが特徴です。
環状紅斑はSLE以外でも、シェーグレン症候群の皮疹としても認めることが有名です。
その他の疾患でも認めることがあるため、しっかりと鑑別をすることが大切です。
以下に、環状紅斑を認める疾患を挙げました。
〈 環状紅斑の鑑別疾患 〉 | 環状紅斑を認める疾患 |
感染症 | ・慢性遊走性紅斑 ・リウマチ性環状紅斑 |
膠原病 | ・シェーグレン症候群 ・全身性エリテマトーデス ・新生児エリテマトーデス |
悪性腫瘍 | ・匍行性迂回状紅斑 ・壊死性遊走性紅斑 |
円板状皮疹
( 画像引用:https://www.dermatol.or.jp/qa/qa7/s2_q05.html )
円板状皮疹はディスコイド疹とも呼ばれ、SLEでは慢性皮膚ループスに含まれます。
円板状皮疹は境界明瞭で落屑(フケのようにボロボロ剥がれ落ちること)や毛孔開大を伴います。
類円形の紅色局面が単発ないし多発し、潰瘍を形成することもあります。
頭部に生じると不可逆性の瘢痕性脱毛になります。
手掌紅斑
(画像引用:https://plaza.rakuten.co.jp/kobaruto4105/diary/201608060000/)
手掌紅斑はSLE以外にも、血中エストロゲン上昇(妊娠や肝機能障害)に関連して生じることが多いです。
脱毛
脱毛は、SLEのおよそ50%で認め、頭部にびまん性にみられます。
特に前頭部の毛が短く細く、折れやすくなって不揃いな長さとなります(ループスヘアー)。
治療が難治な場合もあるが、ヒドロキシクロロキン(プラケニル®︎)で改善する場合もあります。
光線過敏症
光線過敏症はSLEの約30-40%で認められるといわれています。
SLEによる日光過敏の皮疹は、日光暴露後、数日〜3週間程度経過してから遅発性に出現することが特徴的で、これが通常の日焼けとの鑑別に有用です。
口腔潰瘍
口腔潰瘍はSLEの40%で認め、SLE ACR/EULAR classification criteria(2019)1) においては、急性皮膚ループス、慢性皮膚ループスとは独立した項目として挙げられ、診断に重視されています。
口腔内潰瘍は、補体化や抗dsDNA抗体価とは独立してSLEの病性を反映するとも言われています2)。
SLEで認めるその他の皮疹
SLEでは他にも、
- 深在性ループス
- 凍瘡性ループス
- 水疱性ループス
- 非典型的皮疹(Raynaud現象、リベド、蕁麻疹様血管炎 / 紅斑など)
といった皮疹を認めます。
強皮症
皮膚硬化
(画像引用:https://www.dermatol.or.jp/qa/qa7/s2_q06.html)
皮膚硬化は強皮症に特徴的な皮膚病変で、手足の指から進行していき、指が硬化してソーセージの様に腫れたり、前腕や足の皮膚が硬くなってきます。
また、顔面の皮膚が硬くなると「仮面様顔貌」といって、表情が少ない顔貌になってしまいます。
皮膚硬化は強皮症のタイプによって重症度が違い、『びまん皮膚硬化型』の方が『限局皮膚硬化型』より皮膚硬化は広範囲となり、より重症になります。
びまん皮膚硬化型と限局皮膚硬化型の違い
びまん皮膚硬化型 | 限局皮膚硬化型 | |
皮膚硬化の範囲 | 肘より近位に拡大する | 肘より末梢に限局 |
病勢の進行 | 比較的急速 | 緩徐なことが多い |
皮膚毛細血管 | 減少 | 毛細血管拡張 |
爪上皮毛細血管拡張 | (+) | (++) |
石灰沈着 | (±) | (+) |
特異抗体 | ・抗Scl-70抗体(抗トポイソメラーゼI抗体) ・抗RNAポリメラーゼⅢ抗体 |
・抗セントロメア抗体 |
Raynaud現象(レイノー)
(画像引用:https://www.nakano-med.or.jp/topics/2017/01.php)
レイノー現象は、強皮症の初発症状として最も多い症状です。
レイノー現象とは突然指趾が、蒼白化し、数分後に紫色となり、その後びまん性に紅潮となり正常皮膚色に戻る一連の現象を言います。
指尖・爪の変化
(画像引用:https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000066.html)
強皮症では指趾先端は先細り、症状が強い場合、循環不全により激痛を伴う小潰瘍が形成されることもあります。
爪甲では爪上皮の延長と毛細血管拡張がみられます。
皮膚筋炎
ゴットロン丘疹
ゴットロン丘疹は、両手指関節背面の扁平隆起性丘疹のことです。
ヘリオトロープ疹
(https://www.dermatol.or.jp/qa/qa7/s2_q07.html より引用)
ヘリオトロープ疹は、眼瞼、眼周囲の浮腫性紫紅色斑のことです。
皮膚筋炎の約30%で観察され、とても頻度の高い皮疹です。
ゴットロン徴候
(https://medu4.com/101G53 より引用)
ゴットロン徴候は、肘頭や膝などの関節伸側に認める角化性紅斑のことです。
機械工の手 mechanic’s hand
(https://www.dermatol.or.jp/qa/qa7/s2_q07.html より引用)
機械工の手指に出来る職業性変化に似た症状も知られており、これを『機械工の手』と言います。
メカニクスハンドとも呼ばれます。
後爪郭の毛細血管拡張
(http://www.touei-clinic.jp/app/Blogarticleview/index/ArticleId/374 より引用)
皮膚筋炎では、爪の後爪郭(こうそうかく)という部分の毛細血管が拡張し、画像のように赤く見えることがあります。
後爪郭は、爪甲を取り囲んでいる皮膚の部分のことです。
ただし、後爪郭の毛細血管拡張は皮膚筋炎に特異的というわけではなく、強皮症など他の膠原病でも認める所見です。
また、毛細血管拡張以外でも、色素沈着、色素脱失、爪上皮の黒色出血点なども爪病変として認める所見です。
皮膚筋炎で認めるその他の皮疹
皮膚筋炎では他にも、
- 逆ゴットロン徴候
- Vネックサイン
- ショールサイン
といった皮疹を認めます。
混合性結合組織病(MCTD)
手指のソーセージ様腫脹
混合性結合組織病の皮膚症状は、手指のソーセージ様腫脹が特徴的です。
手指のソーセージ様腫脹は、診断基準の中核所見の一つにも入っている重要な症状で、MCTDの93%で認めます。
Raynaud現象(レイノー)
(画像引用:https://www.nakano-med.or.jp/topics/2017/01.php)
レイノー現象は、手指のソーセージ様腫脹と共に、診断基準の中核所見の一つにも入っている症状で、MCTDのほぼ全例で認めます。
MCTDでは、その他の症状として、SLE様症状として顔面紅斑や強皮症様症状として手指の硬化を認めたりします。
シェーグレン症候群
環状紅斑
( 画像引用:https://www.nakayamashoten.jp/sample/pdf/978-4-521-73344-9.pdf )
シェーグレン症候群の皮疹は、環状紅斑が特徴的です。
シェーグレンの環状紅斑は顔面に好発し、抗SS-B抗体陽性の方で多いです。
高ガンマグロブリン血症性紫斑
(画像引用:https://www.dermatol.or.jp/qa/qa7/s2_q08.html)
時にシェーグレン症候群は、『 高ガンマグロブリン血症性紫斑 』を認めることがあります。
これは、シェーグレン症候群では高IgG血症を認めることが原因です。
高ガンマグロブリン血症性紫斑は、下肢を中心に色素沈着を伴う点状出血、斑状出血、リベドが出現し、年余に渡って繰り返します。
成人Still病
サーモンピンク疹
(画像引用:https://ameblo.jp/namiayuyu/entry-12649334680.html)
成人Still病の皮疹は、「サーモンピンク疹」という特徴的な皮疹を認めます。
頸部、前胸部や四肢が好発部位と言われています。
まとめ
膠原病で認める皮膚病変(頻度)
〈 全身性エリトマトーデス(SLE) 〉 |
蝶形紅斑 |
環状紅斑 |
円板状ループス:円板状皮疹(16 %) |
手掌紅斑 |
脱毛(50 %) |
光線過敏症(30〜40 %) |
口腔潰瘍(41 %) |
深在性ループス |
凍瘡性ループス |
水疱性ループス |
非典型的皮疹(Raynaud現象、リベド、蕁麻疹様血管炎 / 紅斑など) |
〈 強皮症 〉 |
皮膚硬化 |
Raynaud現象(99 %) |
爪の変化(指尖潰瘍、毛細血管拡張、爪上皮の延長など) |
〈 皮膚筋炎 〉 |
ゴットロン丘疹 |
ヘリオトロープ疹(30 %) |
ゴットロン徴候 |
機械工の手 |
後爪郭の毛細血管拡張 |
〈 混合性結合組織病(MCTD)〉 |
手指のソーセージ様腫脹(93 %) |
Raynaud現象(99 %) |
〈 シェーグレン症候群 〉 |
環状紅斑 |
高ガンマグロブリン血症性紫斑 |
〈 成人Still病 〉 |
サーモンピンク疹 |
〈参考〉
- 1) Aringer M, et al. Ann Rheum Dis 2019;78:1151-59.
- 2) Urman JD, et al. Arthritis Rheum 1978;21:58.
- 清水宏 あたらしい皮膚科学 第3版 中山書店
- エリテマトーデスを極める Visual Dermatology 2017;8:737-824.
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、よろしくお願いします?
リンク
※個人個人で症状の違いがあるため、詳細な治療などにつきましては直接医療機関へお問い合わせください。