多発性筋炎・皮膚筋炎

多発性筋炎・皮膚筋炎の抗体一覧【ARS・Jo-1・Mi-2・MDA5・Tif1-γ・SRP・NXP-2】

こんにちは、今回は「多発性筋炎・皮膚筋炎の抗体一覧」について取り上げていきたいと思います。

私の筋炎の抗体が、どういった特徴があるのか、気になっていました。

多発性筋炎・皮膚筋炎の抗体一覧

多発性筋炎・皮膚筋炎には、とてもたくさんの抗体があります。膠原病の中でも、最もたくさんの特異抗体が見つかっています。

(※ 皮疹があるものを皮膚筋炎、皮疹がないものを多発性筋炎といいます)

ターゲットとする抗原にそれぞれ違いがあり、それぞれの抗体ごとに症状にも微妙な違いがあります。

筋炎特異抗体には、以下のものが知られています。

多発性筋炎・皮膚筋炎の抗体一覧
  1. 抗ARS抗体
    • 抗Jo-1抗体
    • 抗PL-7抗体など
  2. 抗Mi-2抗体
  3. 抗MDA5抗体
  4. 抗TIF1-γ抗体
  5. 抗SRP抗体
  6. 抗NXP-2抗体

本当にたくさんの特異抗体があるのですね。。。

それぞれの特徴

では、各抗体ごとの特徴を見ていきたいと思います。

皮疹筋炎間質性肺炎悪性腫瘍頻度
抗ARS抗体◉(慢性型)
(70~95%)
25 ~ 30 %
抗Mi-2抗体5 ~ 10 %
抗MDA5抗体◉(急性型)20 %
抗TIF1-γ抗体5 ~ 10 %
抗SRP抗体
(20%)
5 %
抗NXP-2抗体1 ~ 5 %

頻度の目安: ー:稀 △:低○:中◉:高

抗核抗体で、Cytoplasmicパターン(細胞質)を認めたら筋炎を疑う!

膠原病を疑う時や、間質性肺炎、皮疹、筋症状を認めたときは、血液検査で『 抗核抗体 』を調べると思います。

この時に、『 Cytoplasmicパターン(細胞質)』を認めたら、『 多発性筋炎・皮膚筋炎 』を疑うことが大切です。

これは、筋炎の抗体の中でも、特に『 抗ARS抗体 』や『 抗MDA5抗体 』がCytoplasmicパターンを取るためです。

さらに、

抗ARS抗体や抗MDA5抗体が陰性だった場合は、外注検査で『 筋炎関連抗体セット(ユーロラインとも言ったりします) 』を提出することもできます。

  1. 筋炎関連抗体セットに含まれる抗体(保険未収載)
    • Mi-2、Ku、PM-Scl100、PM-Scl75、SRP、Jo-1、PL-7、PL-12、OJ、EJ、Ro-52

抗核抗体が40倍だけど、よくみたら「Cytoplasmic pattern」だった。この時に、抗ARS抗体などをさらに調べると、陽性であることも時々あるんだ。

多発性筋炎・皮膚筋炎の抗核抗体の染色パターン

抗ARS抗体 Cytoplasmic:細胞質
抗Mi-2抗体 Homogenous:均一型
Speckled:斑紋型
Nucleolar:核小体型
抗MDA-5抗体 Cytoplasmic:細胞質
抗TIF1-γ抗体 Nucleolar:核小体型
抗SRP抗体 Cytoplasmic:細胞質
Speckled:斑紋型
Nucleolar:核小体型
抗核抗体の見方【Homo型? Speckled型ってなに?】 えーと、まなみさんの抗核抗体は160倍で、「Homogenous &Speckled パターン」ですね。 160倍??...

では、抗体ごとにさらに深掘りしていきたいと思います。

抗ARS抗体:25 ~ 30 %

抗ARS抗体は、『 アミノアシルtRNA合成酵素(Aminoacyl-tRNA Synthetase:ARS)』に対する抗体で、多発性筋炎・皮膚筋炎の中でも、最も頻度の多い抗体です。

抗ARS抗体は、全体の25 〜 30 %を占めます。

抗 ARS 抗体の特徴
  1. 皮疹筋炎いずれも認める。
  2. 慢性経過の間質性肺炎の合併が多い。
  3. 悪性腫瘍の合併はまれ
  4. 他に、多関節炎Raynaud現象機械工の手発熱なども特徴的。

抗ARS抗体は、抗Jo-1抗体などの総称

抗ARS抗体には、抗Jo-1抗体、抗PL-7抗体など数種類の筋炎特異抗体があります。

その中でも、「抗 Jo-1 抗体」は、抗ARS抗体の中でも一番頻度が高い抗体です。

抗ARS抗体の中に含まれる抗体
  1. 抗Jo-1抗体:15 ~ 20 %
  2. 抗PL-7抗体:< 5 %
  3. 抗EJ抗体:< 5 %
  4. 抗PL-12抗体:< 5 %
  5. 抗OJ抗体:< 5 %
  6. 抗KS抗体:< 5 %
  7. 抗Zo抗体:症例報告
  8. 抗Ha抗体:症例報告

たくさんの種類があって覚えられないですね、、、^^;

基本的には、いずれの抗体も抗ARS抗体に含まれるので、いずれの抗体が陽性であっても、上記に記載する抗ARS抗体に認める臨床的特徴を呈します




抗Mi-2抗体: 5 ~ 10 %

抗Mi-2抗体は、『 NuRDヘリカーゼ 』に対する抗体です。

抗 Mi-2 抗体の特徴
  1. 皮膚症状と筋症状のいずれも認める ➡︎ 『 皮膚筋炎パターンが多い 』
  2. CK上昇と筋症状が強い
  3. 間質性肺炎の合併は少ない
  4. 皮疹として、『 ショール徴候 』が特徴的

ショール徴候(サイン)ってどんな皮疹?

https://kawamuranaika.jp/etc/5158 より引用)

頚部から背中の上側に掻痒感の強いびまん性浮腫性紅斑を生じます。

これを、ショールをまとった様な形状から『ショールサイン shawl sign』と言います。

【えっ、これも皮膚筋炎の皮疹なの?!】皮膚筋炎の皮疹 一覧 こんにちは、今回は「多発性筋炎・皮膚筋炎の皮疹 一覧」について取り上げていきたいと思います。 多発性筋炎や皮膚筋炎の皮疹には、実...

抗MDA-5抗体:20 %

抗MDA5抗体は、ウイルス感染時における自然免疫機構で重要な役割を果たす『 MDA5分子 』に対する抗体です。

抗 MDA-5 抗体の特徴
  1. 皮疹を認めるが、筋症状は無い ➡︎ 『 筋無症候性皮膚筋炎パターン(amyopathic dermatomyositis) 』
  2. 急速進行性間質性肺炎を認め、重症化することが多い。
  3. 逆ゴットロン丘疹皮膚潰瘍も認めることがある。

抗MDA抗体陽性皮膚筋炎の詳細は、こちらをご参考ください ⬇︎

【 抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎について 】 〜 The Point 〜 治療抵抗性の高い急速進行性間質性肺炎を発症する皮膚筋炎である。 現時点ではステロイド...



抗TIF1-γ抗体: 5 ~ 10 %

抗TIF1-γ抗体は、『 transcriptional intermediary factor-1(TIF1)γ 』に対する抗体です。

抗 TIF1-γ 抗体の特徴
  1. 皮疹の頻度は多いが、筋症状の頻度は少ない➡︎ 『 皮膚筋炎パターンが多い 』
  2. 悪性腫瘍を合併する頻度が高い

抗SRP抗体: 5 %

抗 SRP 抗体とは、『 シグナル認識粒子(signal recognition particle:SRP)』に対する自己抗体です。

抗 SRP 抗体の特徴
  1. 急性の重症筋力低下(近位部優位)を認める。 ➡︎ 『 多発性筋炎パターンが多い 』
  2. ステロイド抵抗性のことが多い
    • 免疫抑制剤(メトトレキサート、アザリオプリン、シクロスポリンなど)、リツキシマブ、免疫グロブリン大量静注療法が併用される。
  3. 間質性肺炎は比較的稀である。
  4. 他に、関節痛、Raynaud現象、発熱などの筋外症状の頻度は低い
  5. 通常の筋炎と異なり、炎症細胞浸潤に乏しく、壊死が見られる(壊死性ミオパチー)という組織学的特徴をもつ。
  6. 嚥下障害を認めることもある。
  7. 日本人に比較的多い

抗NXP-2抗体:1 ~ 5 %

抗 NXP-2 抗体とは、『核マトリックスタンパク質2 』に対する自己抗体です。

抗 NXP-2 抗体の特徴
  • 皮疹、筋症状のいずれも認め、嚥下障害を認めることもある。
  • 抗NXP-2抗体は、小児の皮膚筋炎で多く検出される抗体である(他に小児では抗 TIF1-γ抗体も多い)。
  • 小児では、皮下石灰沈着の頻度が多い。
  • 成人では、抗TIF-γ抗体陽性皮膚筋炎ほどではないが、悪性腫瘍の合併が関連する(20 ~ 30 %程度)
  • 間質性肺炎の併発は少ない




まとめ

最後にまとめを見てみましょう!

皮疹筋炎間質性肺炎悪性腫瘍頻度
抗ARS抗体◉(慢性型)
(70~95%)
25 ~ 30 %
抗Mi-2抗体5 ~ 10 %
抗MDA5抗体◉(急性型)20 %
抗TIF1-γ5 ~ 10 %
抗SRP抗体
(20%)
5 %
抗NXP-2抗体1 ~ 5 %

頻度の目安: ー:稀 △:低○:中◉:高

多発性筋炎パターンが多い抗体(皮疹なし)

➡︎ 抗SRP抗体

皮膚筋炎パターンが多い抗体

➡︎ 抗Mi-2抗体、抗MDA5抗体、抗TIF1-γ抗体、抗NXP-2抗体

特に、抗MDA5抗体は、筋症状が無いため、筋無症候性皮膚筋炎と呼ばれる。

間質性肺炎に注意が必要な抗体

➡︎ 抗ARS抗体(慢性型)、抗MDA5抗体(急性型)

悪性腫瘍を検索した方が良い抗体

➡︎ 抗MDA5抗体、抗NXP-2抗体

【多発性筋炎・皮膚筋炎について】 〜 The Point 〜 皮膚症状を認めるものは皮膚筋炎で、認めないものが多発性筋炎である。 皮膚症状は、「ヘ...
【多発性筋炎・皮膚筋炎の治療について】 〜 The Point 〜 多発性筋炎・皮膚筋炎は、症状によってステロイドの他に使われる免疫抑制剤が違う。悪性腫瘍を認め...
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〈参考〉

  • Hospitalist 特集 膠原病 メディカル・サイエンス・インターナショナル
  • 清水宏 あたらしい皮膚科学 第3版 中山書店
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“今回のまとめ”
  1. 皮膚筋炎パターンが多い抗体と、多発性筋炎パターンが多い抗体がある。
  2. 間質性肺炎を認めやすいのは、抗ARS抗体、抗MDA5抗体で、悪性腫瘍の合併が多いのは、抗TIF1-γ抗体、抗NXP-2抗体である。
  3. 抗核抗体で「 Cytoplasmic pattern 」を認めた時は、多発性筋炎・皮膚筋炎を疑い、特に抗ARS抗体、抗MDA5抗体(抗SRP抗体)を調べる。

今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、よろしくお願いします?

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