多発性筋炎・皮膚筋炎

【多発性筋炎・皮膚筋炎の間質性肺炎の特徴(抗MDA5抗体は除く)】


〜 The Point 〜

  • 呼吸機能検査では、肺活量=%VCに注目する。%VCが80%以下の場合は、拘束性障害に該当する。
  • 息切れが最近ひどくなったなどの症状があれば、早めに病院に相談する。

今回は、多発性筋炎・皮膚筋炎の中でも間質性肺炎にフォーカスを当てて紹介していきたいと思います。間質性肺炎は、多発性筋炎・皮膚筋炎の方の約50%が発症すると言われています。




検査は?

「胸部レントゲン」や「CT検査」によって画像的評価します。

最近ではCT検査は、「HRCT」といって、より高画質で肺を見れる撮像方法もあります。HRCTにするかどうかは、基本的に医師の判断によるかとは思いますが、検査によって特に痛みが増えたりとかはありません。

間質性肺炎のCT画像

また、呼吸機能検査を行い、呼吸の状態を評価します。

呼吸機能検査では、「肺活量」と「1秒量」に注目します。

肺活量は、最大吸気位より最大呼気位までの容量を見ており、「%VC」という数値でわかります。

1秒量は、最大吸気位より1秒間の呼出される空気の量を見ており、「FEV1.0%」という数値でわかります。

間質性肺炎の方は、「拘束性障害」という肺障害のパターンを認めるため、肺活量が減少します。

つまり、「%VC」が減少し、これが80%以下になると、拘束性障害に該当します。

拘束性障害とは、間質性肺炎により肺が硬くなった状態で、うまく肺が広がっていきません。

※ちなみに、もう一つ閉塞性障害というのもあり、これは喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などで認めます。閉塞性障害は、気管支が炎症によって細くなり、空気の吸ったり吐いたりがうまくできなくなってしまいます。(このため、喘息の方は、呼吸のたびにヒューヒューとした音がなります)

閉塞性障害の場合は、1秒率が低下し、FEV1.0%が70%以下の時に該当します。

治療は?

間質性肺炎を認めた場合は、以下の3つのパターンに分かれます。

  • ほとんど進行しない場合
  • 慢性的に進行して徐々に呼吸機能が障害される場合
  • 急性に発症し、進行が急速な場合

① ほとんど進行しない場合

ほとんど間質性肺炎の進行がない場合は、ステロイドなどの積極的な免疫抑制剤の使用は控え、レントゲンやCT検査などで画像的にフォローしていくことが多いです。

間質性肺炎の第一選択薬は、今日でもステロイドが使用されますが、進行がほぼない場合、ステロイドによる副作用も多く、慢性的な使用によるデメリットの方が大きくなってしまうため、無治療で経過観察をしていくことが多いです。

また、経過にて急性に間質性肺炎が悪化した場合は、ステロイドやその他の免疫抑制剤を使用する場合もあります。

② 慢性〜亜急性に進行して徐々に呼吸機能が障害される場合

間質性肺炎を合併する、多くの方は、このパターンに該当するかと思います。

慢性〜亜急性に経過する間質性肺炎は、ステロイドの反応は良好とされてきましたが、減量に伴う再発例も多く、徐々に進行して長い経過で呼吸器機能が低下する場合もあります。そのため、最近では、早期から免疫抑制剤の併用が推奨されています。

ステロイドは、主に高用量が使われますが(プレドニン®︎ 40〜60mg)、高齢者の方など感染のリスクを減らしたい方には、中等量の30mg程度から開始する場合もあります。

併用する免疫抑制剤は?

免疫抑制剤には、カルシニューリン阻害薬である、プログラフ®︎(タクロリムス)やネオーラル®︎(シクロスポリン)が使用されることが多いです。

その中でも、プログラフ®︎の方が、筋炎に対しての保険適応もあるため、使用される頻度が高いです。

その他の免疫抑制剤としては、イムラン®︎(アザチオプリン)が使用されます。

維持療法はどうですか?

症状が落ち着き、維持療法の段階に入っていくと、ステロイド少量単独(プレドニン®︎ 5〜10mg)や免疫抑制剤併用でコントロールしていきます。

急性に発症し、進行が急速な場合

進行が急速な場合は、「急速進行性間質性肺炎」と呼ばれ、ほとんどが『抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎』であることが多いです。『抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎』は筋炎の中でも、特殊なため、改めてご紹介します。

ステロイド免疫抑制剤
ほとんど進行しない使用しない使用しない
慢性〜亜急性に進行する場合高用量〜中等量プログラフ®︎(他にネオーラル®︎、イムラン®︎)

注意点は?

間質性肺炎の病態が安定していても、風邪やストレスがきっかけとしてなど、急激に悪化してしまう場合もあります。

その場合、「最近息切れがひどくなった」や「動いたらすぐ息があがる」、「空咳がひどくなった」などの症状として現れることが多いので、早めにかかりつけ医に相談してください。

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