ステロイド

ステロイドによる骨粗鬆症について【メタアナリシス】

こんにちは、今回はステロイドによる骨粗鬆症についてのメタアナリシス解析を取り上げていきたいと思います。

ステロイドを長く使っているので、骨粗鬆症についてずっと心配していました。骨折リスクや骨密度についてどういったことが言われているのでしょうか。

ステロイドと骨粗鬆症について

今回は、少し前の論文になってしまいますが、2002年に報告されたステロイドによる骨粗鬆症の関係のメタアナリシス分析の論文『 The Epidemiology of Corticosteroid-Induced Osteoporosis: a Meta-analysis 1)を見ていきたいと思います。

  • レビューは、2891人のステロイド使用者の66件の研究を解析
    1. 横断的研究:56件(総n = 2631)
    2. 縦断的研究:10件(総n = 260)

メタアナリシス分析とは?

メタアナリシス分析とは、ある程度似ている研究の複数の結果をまとめ、ある要因が特定の疾患や結果と関係するかを解析する統計手法のことで、下のピラミッドにあるようにエビデンスレベルが高い統計解析となります。

(画像引用:https://netdekagaku.com/systematic-review-metaanalysis/)




ステロイドと骨折リスクについて

まず、ステロイドの使用と骨折リスクについて見ていきたいと思います。

ステロイド 何 mgで骨折リスクが上がりますか?

ステロイド(主にプレドニゾロン)何 mgから、骨折のリスクが上昇するのかは、とても気になる点です。

下のグラフを見ると、

ステロイドの骨折リスクは、1日用量がプレドニゾロン5mg以下ではリスク比が1.2で比較的安定していましたが、それ以上の用量になると増加するのがわかります。

プレドニゾロン 5mg 以上で特に骨折リスクが上昇する。

ただし、5mg 未満では、骨折が起こらない、安全であるわけではないことに注意が必要です(安全域はない)

〈 ステロイドの1日服用量と非椎体骨折の調整相対リスク 〉

ステロイド 累積投与量で骨折リスクが上がりますか?

では、ステロイド累積投与量ではどうでしょうか。

累積投与量とは、今までステロイドを飲み続けてきた総量のことです。

ステロイドの累積投与量(総投与量)と骨折リスクについては、

正の相関を示した研究(累積投与量が増えると骨折リスクが上昇する)が多くあります76,89,97,101)

しかし、「ステロイド投与量と骨折リスク」と「1日投与量と骨折リスク」がどちらがより相関するかについては、議論が分かれています

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ステロイド開始後、いつから骨折リスクは上昇しますか?

そしたら、ステロイドによる骨折のリスクは、飲み始めていつ頃から気をつける必要がありますか?

下のグラフは、ステロイド(プレドニゾロン)療法開始後の非椎体骨折と椎体骨折の発生率を示しています。

下のグラフを見ると、

プレドニゾロン 2.5mg/日以上の群(△、□)において、3~6ヶ月以内椎体骨折のリスクが上昇しているのがわかります。

つまり、

ステロイド開始後 3〜6ヶ月以内に椎体骨折のリスクが上昇し、特にプレドニゾロン 7.5mg/日以上の場合は、リスクが継続するため注意が必要です。

また、非椎体骨折については、プレドニゾロン 1 日 7.5mg 以上の群において、治療開始後 1 年間にベースラインと比較して非椎体骨折のリスクが 54%増加しているのもわかります。

〈 ステロイド開始後の椎体骨折と非椎体骨折別のリスク 〉




ステロイドと骨密度(BMD:Bone Mineral Density)について

今度は、ステロイドと骨密度の影響の観点から見ていきたいと思います。

ステロイド開始後、いつから骨密度は低下しますか?

下のグラフは、縦断的研究9,20,25,33,38,42,51,56,67,71)で追跡された、初回プレドニゾロン(ステロイド)使用者の脊椎の骨量減少を示したものです。

こちらをみると、骨密度は、ステロイド開始後 1年以内に急速に低下しているのがわかります。

〈 10の縦断的研究におけるステロイド開始後の椎体骨密度低下率 〉

ステロイド累積投与量と骨密度(BMD)の関係

次に、ステロイド累積投与量と骨密度(BMD)の関係について見ていきます。

ステロイド累積投与量と脊椎(Spine)および股関節(Hip)の骨密度の減少との間に強い相関が認められました。

つまり、ステロイドの総使用量が増えるほど、特に椎体や股関節の骨密度は低下してしまいます。

〈 ステロイド累積投与量と骨密度の関係 〉

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骨折のリスク因子について

骨折については、全ての患者さんが起こるわけではありません。

特にどういった方にリスクがあるでしょうか?

ステロイド療法による骨折リスクは基礎疾患,年齢,性別とは無関係でした

(※ ステロイド骨粗鬆症のリスクではなく、骨折リスクであることにご注意ください。)

なので、ステロイド使用者は、基礎疾患、年齢、性別に関係なく骨折には注意していく必要があります

個々の報告別に見ていくと、

  • 年齢に関しては、若年者は高齢者よりも影響を受けやすいとする報告もあります104)が、他の研究では年齢による影響がないと報告されています77,35,61,66,101)
  • 性別に関しては、女性がより感受性が高いことが示され12,37,48) 、別の研究では、男性における影響の増加が観察されています49)。 一方で、他の研究では男女間に大きな差がないことが示されています11,21,61,64,101)
  • 基礎疾患に関しては、リウマチまたは肺疾患(閉塞性肺疾患等)を有する患者におけるステロイドによる骨折リスクに差はないと報告しています77,14,61)

ステロイド自体が、椎体骨折のリスク因子である

骨折リスクとして、骨密度を見ることは重要ですが、それ以外の要素もあることに注意が必要です

ある報告では、骨密度が同程度であるにもかかわらず、ステロイド使用者は非使用者に比べて有意に多くの椎体骨折を有することが報告されています117)

また、別の報告では、ステロイド使用者は非使用者と比較して椎体変形リスクが6倍増加しましたが、腰椎の骨密度は0.79SD減少しただけでした57)

今は、『 骨強度は、骨密度骨質の2つの要素が重要である 』と考えられています。

そのうち、骨密度は70%を占め、残りの30%は骨質が占めるとされています。

なので、ステロイドは骨密度だけでなく、骨質にも影響をもたらし、ステロイドの使用自体が骨折リスクとなります

  • ステロイドは、骨密度だけでなく骨質にも影響を与える

骨粗鬆症といえば骨密度が大切と思っていましたが、ステロイドは骨質にも影響があるのですね。




ステロイド中止によって骨密度(BMD)は改善しますか?

低下してしまった骨密度は、ステロイドを止めた後は改善しますか?

結論から言いますと、

ステロイド中止後、低下した骨密度は改善するとするデータは多く、ステロイド中止によって骨密度の改善は十分に見込めます

つまり、ステロイドによる骨密度低下は可逆的であるといえます。

ステロイド中止によって骨密度が改善する多くの報告

  • GPRD試験では、骨折の過剰リスクのほとんどは、治療中止後1年以内に消失しました。この効果は、椎体骨折で最も顕著でしたが、大腿骨頸部骨折(股関節骨折)でも明らかでした75) 。 
  • また、経口ステロイドを中止した場合、より高用量を過去に使用した患者においても、骨折の割合が減少する報告もあります76)
  • 小規模の横断的研究で、過去のステロイドの使用(現在は内服なし)と対照群の椎体骨折の割合が同等であることが報告されています41)。 
  • 縦断的研究では、ステロイド療法中止後の骨密度の大幅な増加が示されています38)
  • 2件の横断研究で、過去のステロイド使用者の骨密度は非使用者と同等であることが示されています28,41)
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まとめ

“今回のまとめ”
  1. 累積投与量と骨密度の低下、1日投与量と骨折のリスクには強い相関が認められた。 
  2. 骨折のリスクは,経口ステロイドの開始後(3~6 ヵ月以内)に急速に増加しする。
  3. しかし、経口ステロイドを中止すると骨折リスクは減少する。
  4. プレドニゾロン 5 mg/日 以上 は、治療期間中の骨折リスクの上昇をもたらす(ただし、安全域があるわけではありません)。
  5. そのために、ビスホスホネート製剤などの骨粗鬆症治療薬を早期に開始することが大切である。
  6. ステロイドで低下した骨密度は、中止によって改善を認め、骨密度低下は可逆的である。

〈参考〉

    • 1) T.P. van Staa, et al. Osteoporos Int 2022;13:777-87.
    • 9) Adachi JD, et al. Osteoporosis APS, 1990:1745–7.
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    • 38) Laan RFJM, et al. Ann Intern Med 1993;119:963–8.
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    • 76) van Staa TP, et al. Rheumatol 2000;39:1383–9.
    • 77) van Staa TP, et al. Pharmacoepi Drug Saf 2000;9:359–66.
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    • 97) Walsh LJ, et al. Thorax 2001;56:279–84.
    • 101) Dykman TR, et al. Arthritis Rheum 1985;28:361–8.
    • 117) Selby PL, et al. J Bone Miner Res 2000;15:952–6.




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今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです🥝 Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、よろしくお願いします🕊

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