ステロイド

ステロイドによる血液検査の影響について【見方】

こんにちは、今回はステロイド内服中の血液検査の味方について取り上げていきたいと思います!

ステロイドについて

ステロイドの内服を開始した後、WBCやBUNが上昇していて、あれっおかしいなと思ったことはないでしょうか。実は、それはステロイドによる影響かもしれません。

このことは、実は研修医も知らなかったりします。ただ、ステロイドを内服されている方は、非常に大切なことなので、知っていおいておくのが良いかと思います。

また、ステロイドはどうしてもあまり良いイメージがないことが多いですが、一般的にストレスホルモンと呼ばれ、身体が頑張らなければならない時に出るホルモンです。

腎臓の上にある「副腎」という臓器から分泌され、通常朝から午前中にかけて多く分泌されます。これにより目覚めの寝ぼけた状態が、ステロイドホルモンによってシャキッとなり午前中に活動出来るようになるのです。

副腎の解剖

また、コーヒーに入っている「カフェイン」も身体のステロイドホルモン値を上昇させる働きがあり、それによって身体を覚醒させてくれているのです。

このように、ステロイドホルモンは実は私たちの生活になくてはならないものであり、私たちが頑張りたい時に知らぬ間にサポートしてくれていたのです。

前置きが長くなりましたが、それではステロイドが血液検査にどう影響を与えているか、具体的にやっていきましょう!

WBC(白血球)↑

ステロイド内服中は、WBCつまり白血球数は増加します。これは、炎症によるものではなく、ステロイドにより末梢血に白血球が遊走するためです。

具体的には、白血球のうち、「好中球」が上昇し、一方で「リンパ球や好酸球」は低下します。

血液検査では、好中球は「Neutro」、リンパ球は「Lympho」、好酸球は「Eosino」などと表現されています。

好中球、リンパ球や好酸球は、「白血球分画」と言われ、他に単球や好塩基球という種類もあり、こちらもステロイドにより減少します。WBCの上昇は、基本的に病的意義はありません。

BUN↑

BUNは「尿素窒素」と呼ばれ、ステロイド内服中はBUNが上昇します。

これは、ステロイドによりタンパクの異化が亢進されるためです。ステロイドにより筋力が低下するのは、筋肉内のタンパク質がステロイドにより分解(異化)されてしまうことによります。

BUNのタンパク質の分解産物であるため、タンパク質の異化をを反映して上昇してしまうのです。

Na↑ / K↓

ステロイドには「鉱質コルチコイド作用」という作用があり、これが腎臓に作用し、Na(ナトリウム)の再吸収を促進し、K(カリウム)の排泄を促進します。

これによって、Naは上昇し、Kは低下することがあります。

このため、血液中のNaが増えることで、血圧上昇も認める場合があります。

ただし、電解質の異常は通常の診療では問題になることは多くはありません。

HbA1c↑ / 随時血糖↑

ステロイドには、インスリン抵抗性を増強する作用があるため、随時血糖値が上昇します。また、ステロイドを慢性的に内服する場合は、常に身体が高血糖となってしまうため、「HbA1c」という採血項目も上昇します。

HbA1cは、過去 1〜2ヶ月の血糖値を反映し、その瞬間の血糖値を表す随時血糖値よりも、糖尿病の指標としてよく使われます。

HbA1c 6.5 だと、糖尿病である疑いが強くなります。

また、話がややこしくなってしまうかもしれませんが、定期外来にて朝食を抜いてとった血糖値は、「空腹時血糖」と呼ばれます。空腹時血糖はその名の通り、朝何も食べていない状態で取った血糖値のことです。

空腹時血糖 126 だと、空腹時も常に血糖が高いということを表しており、こちらも糖尿病の疑いが強くなります。

なので、血液検査の血糖値が空腹時血糖なのか(朝食を抜いてとった血糖)、それとも随時血糖なのかは、意味合いが違ってきますので注意してください。

LDL-Chol↑、TG↑(脂肪)

ステロイドは、LDL-コレステロールやTG(中性脂肪)を上昇させる作用があります。TGよりもLDL-コレステロール上昇作用の方が強いです。

LDL-コレステロールは、通称「悪玉コレステロール」と呼ばれています。

LDL-コレステロールで注意しなければいけないのは、脂肪の中で動脈硬化に一番悪い影響があると言われています。なので、中性脂肪よりもより厳格にコントロールすることが大切になります。

動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞のリスクは、高脂血症の他に、高血圧や糖尿病を併存する方でリスクが上がることがわかっており、こういった疾患を併存している場合は、積極的な治療が必要です。

治療には、「スタチン系薬」という高脂血症治療薬を内服します。

またステロイドには、HDL-コレステロール(善玉コレステロール)も上昇させます。しかし、善玉も増えるからといってステロイドが動脈硬化へ及ぼす影響に関しては、増悪因子であるとする意見が多いです。

ステロイドによる血液検査の影響 一覧

WBC↑末梢血に好中球を遊走させる作用
BUN↑タンパク質の異化亢進
Na↑ / K↓腎でのNa再吸収亢進とK排泄亢進
HbA1c↑ / 随時血糖↑インスリン抵抗性の作用
LDL-Chol↑ / TG↑インスリン抵抗性の作用の一つ
“今回のまとめ”
  • ステロイドは、WBC、BUN、Na、HbA1c、血糖値、LDL-Chol、TGを上昇させる働きがある。
  • 逆に、Kは低下する場合がある。

今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。参考になりましたら、高評価、コメントを頂けましたら嬉しいです?またTwitterのフォローもお願いします?

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