こんにちは、今回は『 ミチーガ®︎(ネモリズマブ)の特徴 』について取り上げていきたいと思います!
アトピー性皮膚炎のかゆみに対する新しい生物学的製剤が出たのですね!よろしくお願いします!
ミチーガ®︎(ネモリズマブ)の特徴について
ミチーガ®︎(ネモリズマブ)は、2022年8月8日に発売されたばかりの『 ヒト化抗ヒトIL-31 受容体A モノクローナル抗体 』です。
ミチーガ®︎は、アトピー性皮膚炎の強いかゆみに対して使用されます。
適応疾患は?
ミチーガ®︎の適応疾患は、以下のようになります。
- アトピー性皮膚炎に伴うそう痒
どんな時に良い適応となりますか?
- 既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎に伴う痒みに良い適応となります。
用法は?
ミチーガ®︎(ネモリズマブ)は、1本 60 mg のシリンジ製剤です。
用法用量 | 成人及び 13 歳以上の小児には、ネモリズマブ 1回 60mg を 4週間間隔で皮下投与 |
薬価は、以下のようになります。
〈 薬価の目安 〉 | 1本 | 1ヶ月(30日)の目安 |
60 mg シリンジ | 117,181円 | 35,200円 (3割) 23,400円 (2割) 11,700円 (1割) |
3割負担で、1月あたり35,000円は、決して安い金額ではないですね。
副作用は?
5%以上 | アトピー性皮膚炎(18.5 %) 皮膚感染症(ヘルペス感染、蜂巣炎、膿痂疹、二次感染等)(18.8%) 上気道炎 |
5 %未満 | 脱毛症、紅斑、蕁麻疹、ニキビ(ざ瘡)、自家感作性皮膚炎 胃腸炎、結膜炎 注射部位反応(内出血、紅斑、腫脹など) 血清TARC上昇、好酸球増加 頭痛、末梢性浮腫 アレルギー性結膜炎、咳嗽、腹痛 血中CPK増加、高尿酸血症など |
重大な副作用
- 重篤な感染症(3.4%)・・・ウイルス、細菌、真菌など
- 重篤な感染症、敗血症、日和見感染症が起きた場合は、感染のコントロールが得られるまでは、本剤を中止します。
- 重篤な過敏症(0.3%)・・・アナフィラキシー(血圧低下、呼吸困難、蕁麻疹など)など
ミチーガ®︎(ネモリズマブ)のエビデンス
今回は、ネモリズマブの臨床試験であるアトピー性皮膚炎患者を対象とした第Ⅲ相比較/長期継続投与試験(M525101-01)1)を参考にします。
そう痒VAS変化率(患者さんによるかゆみ評価)は改善しましたか?
ベースラインから16週時のそう痒VAS変化率は、ミチーガ®︎(ネミリズマブ)群がプラセボ群よりも有意に高く、ミチーガ®︎のアトピー性皮膚炎によるかゆみに対する有効性が示されました。
また、ミチーガ®︎の効果発現も早く、投与翌日時点で、プラセボと比べてそう痒VAS変化率に有意差を認め(p<0.001)、その後も有意にかゆみの改善は持続しました。
〈 16週時 〉 | ミチーガ®︎(ネモリズマブ)群 | プラセボ群 |
そう痒VAS変化率 | – 42.84 % | – 21.39 % |
95%CI:- 30.19 〜 – 12.71% | p<0.0001 (有意差あり) |
● そう痒VASとは?
そう痒VASは、患者さんによるかゆみの大きさを評価する指標です。
具体的には、10cm(100mm)の線を示し、
10cmをMAXのかゆみ(最悪のかゆみ)、0をまったくかゆみがないとして、大体どの位置にあるかの線(VAS値)を引き、かゆみの大きさを評価します。
かゆみスコアが1以下になった方はどれくらいいましたか?
投与開始16週後にかゆみスコアが1以下になった割合は、ミチーガ®︎(ネモリズマブ)群がプラセボ群よりも有意に高い結果でした。
〈 16週時 〉 | ミチーガ®︎(ネモリズマブ)群 | プラセボ群 |
かゆみスコア≦1になった割合 (そう痒NRS) | 16.8 % | 5.6 % |
95%CI:- 3.0 〜 25.1% | p=0.0144 (有意差あり) |
● かゆみスコアとは?
過去24時間のかゆみの程度を、5段階(「なし:0」〜「高度:4」)で患者さんが評価します。
そう痒VASと同様に、時系列で患者さんのかゆみの変遷を定量化することができます。
かゆみスコアが1以下とは、かゆみが軽微(日中:時にむずむずするがかく程ではない、夜間:書かなくても寝れる)〜ほとんどかゆみを感じない程度となります。
EASIスコア(アトピー性皮膚炎の活動性の評価スケール)は改善はどうでしたか?
ベースラインから16週時のEASI変化率は、ミチーガ®︎(ネミリズマブ)群がプラセボ群よりも有意に高く、ミチーガ®︎がアトピー性皮膚炎の活動性も改善したことが示されました。
〈 16週時 〉 | ミチーガ®︎(ネモリズマブ)群 | プラセボ群 |
ベースラインからのEASI変化率 | – 45.85 % | -33.24 % |
95%CI:-23.95 〜 -1.27% | p=0.0295 (有意差あり) |
● EASI スコア : アトピー性皮膚炎の活動性の評価スケール
医師が測定する湿疹の重症度や範囲をあらわすスコアです。
4つの身体部位(頭頸部、体幹、上肢、下肢)のスコアを合計します。
EASI | スコア |
軽度 | 1.1〜7.0 |
中等度 | 7.1〜21.0 |
重度 | 21.1〜50.0 |
最重度 | 50.1〜72.0 |
安全性はどうでしたか?
重篤な副作用は、プラセボ/ミチーガ®︎群※では2例に2件(蜂巣炎及び剥脱性皮膚炎)、
ミチーガ®︎群では4例に6件(菌血症が2件、メニエール病、肺炎、カポジ水痘様発疹及び円形脱毛症が各1件)認められました。
主な副作用については、プラセボ/ミチーガ®︎群※でアトピー性皮膚炎(11.9%)、蜂巣炎(6%)、上咽頭炎(6%)等があり、
ミチーガ®︎群でアトピー性皮膚炎(19.6%)、サイトカイン異常(7%)、好酸球数増加(4.2%)等がありました。
治療によって、逆説的にアトピー性皮膚炎を悪化させてしまう可能性があるので、原則的に外用療法も併用しながら治療を行います。
それでも、アトピーが悪化してしまう場合は、ミチーガ®︎(ネモリズマブ)の中止を検討します。
※:プラセボ/ミチーガ®︎群は16週までプラセボを、それ以降はミチーガ®︎の投与を行っています。
ミチーガ®︎(ネモリズマブ)の作用機序について
ミチーガ®︎は、抗IL-31 受容体A抗体で、IL(インターロイキン)-31を阻害することでアトピー性皮膚炎の改善を図ります。
● インターロイキン(IL)・・・インターロイキンは炎症性サイトカインの一つです。
では、IL-31はアトピー性皮膚炎に対してどうした作用をしているのでしょうか?
IL-31(インターロイキン31)は かゆみを誘発する
アトピー性皮膚炎の病態形成には、リンパ球の一つであるT細胞の、Th2細胞(ヘルパーT細胞2)やILC2(自然リンパ球2)が主に関与しています。
このうちTh2細胞は、『 IL(インターロイキン) – 4、5、13、31 』というサイトカインを分泌します。
これらのサイトカインのうち、IL-31はアトピー性皮膚炎において強いかゆみを誘発します。
また、IL-31は強い掻痒感の誘発だけでなく、アトピーにおける炎症やバリア機能の調節にも関与していることが報告されています1)。
- IL-31は アトピーにおいて 強い掻痒感を誘発する。
- IL-31は アトピーにおける炎症やバリア機能に関与することも報告されている。
アトピー性皮膚炎におけるサイトカインの作用
アトピー性皮膚炎に関わるサイトカインは、以下のものがわかっております。
- IL-4・・・Th(ヘルパーT細胞)2炎症に関与
- IL-13・・・Th2炎症に関与
- IL-31・・・痒みに関与
- IL-22・・・皮膚バリアーに関与
- TSLP(胸腺間質性リンパ球新生因子)・・・Th2炎症と痒みに関与
- ミチーガ®︎(ネモリズマブ)は、アトピー性皮膚炎に対するかゆみに有効性が高い。
- IL-31を抑えることで、アトピーの炎症やバリア機能も改善させることが期待でき、臨床試験でもEASIスコア(活動性評価スケール)の有意な改善を認めた。
- 逆説的にアトピー性皮膚炎を悪化させる場合があり、原則的に外用療法(ステロイド外用など)を併用する。
〈参考〉
- 1) https://www.maruho.co.jp/medical/articles/mitchga/clinical01/index.html
- 2) Takeshi Nakahara, et al. Current Treatment Options in Allergy 2018;5:405-14.
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、ぜひよろしくお願いします?
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※個人個人で症状の違いがあるため、詳細な治療などにつきましては直接医療機関へお問い合わせください。