関節リウマチ

関節リウマチと悪性腫瘍(がん)について【RA】

こんにちは、今回は「 関節リウマチと悪性腫瘍(がん)について 」取り上げていきたいと思います。

リウマチと悪性腫瘍の関係については、とても気になっていました。

高齢化するリウマチの発症

関節リウマチと悪性腫瘍の関係性については、気になる方も多いかもしれません。

関節リウマチの『 平均発症年齢は 51.3 歳 』、『 平均年齢は 63.9歳 』高齢化の傾向にあり、

また同時に、ご存じのとおり、悪性腫瘍の罹患率も50歳代から80歳台まで増加するため

両者は、年齢的にも併発する可能性があります。

今回は、関節リウマチと悪性腫瘍はどういった関係があるのか、見ていきたいと思います。

関節リウマチと悪性腫瘍

関節リウマチ患者さんにおける悪性腫瘍の発生率は、

一般人口と比べて、変わらないと報告されています1,2)

ただし、関節リウマチにおいて発症率が高いといわれる疾患が一つあります。

それは、

『 悪性リンパ腫 』で、

一般人口と比べて発生率が 3〜4 倍高いとされています1,2)




悪性リンパ腫とは?

悪性リンパ腫とは、

主にリンパ節、脾臓や扁桃腺などのリンパ組織に発症する悪性腫瘍のことです。

時に、胃、腸管、甲状腺、肺、肝臓、皮膚、骨髄および脳など、リンパ組織以外の臓器にも発生することがあります。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫33 %
T / NKリンパ腫25 %
濾胞性リンパ腫18 %
ホジキンリンパ腫7 %
MALTリンパ腫3 %
慢性リンパ性白血病1.4 %

〈 悪性リンパ腫の種類別頻度 〉

また、関節リウマチ以外の膠原病において、シェーグレン症候群も悪性リンパ腫の発生率が一般総人口と比べて、高いといわれています。

悪性リンパ腫はどんな時に疑いますか?

悪性リンパ腫を疑う主な症状

以下のような症状を認めた際は、悪性リンパ腫を疑うことが大切です

“悪性リンパ腫を疑う主な症状”
  1. 痛みを伴わないリンパ節の腫脹がある。
  2. 発熱がある(38 ℃以上)。
  3. 体重減少がある。
  4. 大量の寝汗がある(寝具を交換するくらい)。
  5. 10 〜 35 %はリンパ節外から発症するため、臓器別の症状がある。
    • 消化器症状、中枢神経症状、呼吸器症状、皮疹など
  1. リウマチによるリンパ節腫脹
    • リウマチの場合は、リウマチの炎症によるリンパ節腫脹も認めます。
    • 例えば、リウマチによって肩や肘に強い関節炎があると、罹患部位側の腋窩リンパ節などのリンパ節腫脹を認めることがあります。
  2. メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患
    • 関節リウマチの治療薬である、メトトレキサート(MTX)を内服している際に、まれにメトトレキサートによるリンパ増殖性疾患を認める場合があります
    • これを、『 メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD) 』と言います。
    • MTX-LPDの場合は、まずはメトトレキサートを休薬することが大切です
    • メトトレキサートの休薬で、約 30 %が1ヶ月以内にリンパ節腫脹が改善すると言われています(全てが悪性であるわけではないため、悪性リンパ腫ではなく、リンパ増殖性疾患といいます)。
    • しかし、その後に再燃することもあるので慎重なフォローが必要です。

MTX-LPDについては、別の機会に取り上げたいと思います。

生物学的製剤による悪性腫瘍の再発は関連するか?

それでは、生物学的製剤による悪性腫瘍の再発率はどういった報告があるのでしょうか。

関節リウマチで使用される生物学的製剤における悪性腫瘍の再発率は、

上昇しないという報告が多いですが、エビデンスは十分ではありません

TNF-α阻害薬における報告は比較的多いですが、IL-6阻害薬やT細胞選択的共刺激調節薬についての報告は少ないのが現状です。

癌種別の生物学的製剤の再発率について

乳がん

  • TNF阻害薬に関して、乳癌の既往のあるリウマチ患者を対象にした2件のコホート研究。
  • 2研究計 1695 人のリウマチ患者において、TNF阻害薬の投与により乳癌の再発率に、有意な増加は認めなかった3,4)
  • 統合 ハザード比 = 1.12, 95 %CI[0.55~1.82]

非メラノーマ性皮膚癌

  • TNF阻害薬の投与に関して、非メラノーマ性皮膚癌の既往のあるリウマチ患者の、非メラノーマ性皮膚癌の再発率は有意な増加を認めた( ハザード比 = 1.49, 95%CI[1.03~2.16])5)
  • 一方、リツキシマブ(リツキサン®︎)の投与に関しての報告では、非メラノーマ性皮膚癌の既往のあるリウマチ患者の、リツキシマブ投与において、再発率の有意な増加は認めなかった(ハザード比 = 1.44, 95%CI[0.26~8.08])5)
  • また、アバタセプト(オレンシア®︎)の投与に関しての報告では、非メラノーマ性皮膚癌の既往のあるリウマチ患者の、アバタセプト投与において、再発率の有意な増加は認めなかった(ハザード比 = 1.40, 95%CI[0.48~4.03])5)

癌種の限定なし

癌種の限定しない研究についてはどうでしょうか。

  • TNF阻害薬の投与に関しての2件のコホート研究では、癌の既往のあるリウマチ患者の、TNF阻害薬の投与において、全ての癌の再発率の有意な増加は認めなかった6,7)
  • リツキシマブ(リツキサン®︎)の投与に関して、癌の既往のあるリウマチ患者の、リツキシマブ投与において、全ての癌の再発率の有意な増加は認めなかった(ハザード比 = 0.44, 95%CI[0.11~1.82])7)
  • 生物学的製剤の投与に関して、癌の既往のあるリウマチ患者の、生物学製剤投与において、全ての癌の再発率の有意な増加は認めなかった(ハザード比 = 1.11, 95%CI[0.74~1.67])8)

メタ解析

  • 生物学的製剤の投与に関して、上記の研究も含め12件の研究(13598 人のリウマチ患者、TNF阻害薬 10件、リツキシマブ 3 件、アナンキラ 1件)のメタ解析。
  • 癌の既往のあるリウマチ患者の、生物学的製剤はメトトレキサート等の抗リウマチ薬(csDMARD)と比較して、癌の再発率の有意な増加は認めなかった9)
  • TNF阻害薬:リスク比 = 0.95, 95%CI[0.83~1.09]
  • リツキシマブ:リスク比 = 0.89, 95%CI[0.52~1.53]
“まとめ”
  1. 固形癌治療後十分な時間が経過し、癌が治癒したと考えられる場合は、生物学的製剤の投与は可能
  2. ただ、IL-6阻害薬やT細胞選択的共刺激調節薬については十分なデータが少なく、安全性が確率しているわけではない

〈参考〉

  • 1) Hashimoto A, et al. J Rheumatol 2015;42:564-71.
  • 2) Harigai M, et al. Ann Rheum Dis 2021;80:113.
  • 3) Raaschou P, et al. Ann Rheum Dis 2015;74:2137-43.
  • 4) Mamtani R, et al. Arthritis Rheumatol 2016;68:2403-11.
  • 5) De Cock D, et al. 2018;32:869-886.
  • 6) Raaschou P, et al. Ann Intern Med 2018;169:291-99.
  • 7) Silva-Fernandez L, et al. Rheumatology 2016;55:2033-39.
  • 8) Dreyer L, et al. Ann Rheum Did 2018;77:510-14.
  • 9) Xie W, et al. Rheumatology 2020;59:930-39.
  • 一般社団法人日本リウマチ学会 関節リウマチ診療ガイドライン2020 診断と治療社




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今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、よろしくお願いします?

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