まなみさん、今回は、肝臓の数値が少し高いみたいです。
肝臓?
(採血結果の紙を見て)
えっどこを見ればいいの??
そんな疑問を思ったことがあるでしょうか。
今回は、そんな血液検査での疑問を、簡単に解説していきたいと思います!
血液検査での肝障害の見方
まずはこれに注目する!
血液検査にて、肝障害を見るときは、この『 5項目 』に注目してください!
- AST
- ALT
- T-Bil
- γ-GTP
- ALP
AST / ALT で『 肝臓の障害 』を評価する。
『 肝臓の障害 』を見るためには、ASTとALTを参考にします。
以前は、ASTはGOT、ALTはGPTと表記されていたんだにゃ。
AST(エーエスティー、GOT)
ASTは、肝細胞や心筋、骨格筋に多く含まれる酵素です。
ALT(エーエルティー、GPT)
ALTは、肝臓にのみ多く含まれる酵素です。
なので、ASTよりもALTの方が、肝臓により特異的な酵素となります。
ASTとALTが上昇する原因
➡︎ 以上の特徴から、ASTとALTの上昇度合いよって、上昇の原因を推測することができます。
原因 | |
AST > ALT | アルコール性肝炎、肝硬変 など |
AST < ALT | 急性・慢性肝炎、脂肪肝 など |
ASTのみ上昇 | 心筋梗塞、多発性筋炎、溶血性貧血 など |
重症度の目安
AST | ALT | |
基準値 | 7 〜 38 IU/L | 4 〜 44 IU/L |
ショック肝 劇症肝炎 急性肝炎 重度の薬剤性肝障害 |
1000以上 | 1000以上 |
中等度上昇 | 100 〜 1000 | 100 〜 1000 |
軽度上昇 | <100 | <100 |
※ 基準値は、各施設によって多少違いがあります。
T-Bil / γーGTP / ALP は『 胆道系の異常 』を評価する
『 胆道系の異常 』を見るためには、T-BilやγーGTP、ALPが参考になります。
この3つを評価することで、簡単に胆道系の異常を評価することができます。
T-Bil(ティービル)
T-Bilは、total bilirubin:総ビリルビンのことです。
ビリルビンとは、主に赤血球中のヘモグロビンが体内で分解された物質です。
ビリルビンは、血流に乗ってまず肝臓に運ばれ、そこで処理された後に胆汁に排出されます。
胆管が詰まる(閉塞)すると、胆汁が十二指腸に排出されなくなり、胆汁がうっ滞してしまいます。
胆汁がうっ滞すると、胆管が拡張し、T-Bilが十二指腸に排出されずに血液中に漏れ出ることで、血液検査での上昇を認めます。
I-BilとT-Bilはどう違うのですか?
時々、血液検査で、『I-Bil』という項目が採られているのですが、T-Bil(総ビリルビン)とどう違うのですか?
確かに、I-BilとT-Bilはどう違うのか、と思われることはありますよね。
まず、
通常は、血液検査では、T-Bilのみ調べることが多いです。
I-Bilが病気にかかわる際には、定期的に調べることはありますが、検査項目が増えると、算定料が増えたり、保険点数の関係などから、通常はT-Bilのみで調べることが多いです。
I-Bilは、必要な時に、さらに詳しく調べます。
ビリルビンには、『 直接ビリルビン 』と『 間接ビリルビン 』がある。
では、『 I-Bil 』とはなんでしょうか?
I-Bilとは、『 間接ビリルビン: Indirect birirubin 』のことです。
間接ビリルビンは、赤血球が古くなって壊れる時に出てくるビリルビンのことを、間接ビリルビンと呼んでします。
これが、肝臓で処理されて、胆汁に排泄されると、『 直接ビリルビン: Direct birirubin 』となります。
そして、T-Bil、つまり総ビリルビンとは、直接ビリルビンと間接ビリルビンの両方を合わせたもののことを言います。
T-Bil = 間接ビリルビン + 直接ビリルビン
では、I-Bilを調べるのが必要な時は、どういった時でしょうか?
それは、
- 溶血性貧血などの溶血性疾患
- 体質性黄疸の一部
- 新生児黄疸
- 進行した肝硬変や肝不全
といった場合に限られます。
なので、I-Bilが上昇する病態はかなり限られるため、T-Bilが上昇している場合は、通常は直接ビリルビンが上昇していると考えることが多いです。
(溶血性の病態が考えられるときは、間接ビリルビンの上昇を考えます。)
- 閉塞性黄疸(胆汁うっ滞)
- 胆管胆石
- 胆管炎
- 胆道癌
- 膵頭部癌など
- 急性肝炎
- 原発性胆汁性胆管炎(PBC)
- 原発性硬化性胆管炎
- 薬剤性肝炎
- 肝細胞癌
- 体質性黄疸など
〈 溶血が疑われる場合 〉
溶血が疑われる場合は、I-Bilが上昇していることが予想されるので、I-Bilなど溶血に関する検査項目を追加します(I-Bil、 LDH、ハプトグロビンなど)。
- 通常の血液検査では、T-Bil(総ビリルビン)のみ評価することが多い。
- I-Bil(間接ビリルビン)は、肝臓で処理される前のビリルビンのことを言う。
- 直接ビリルビンは、間接ビリルビンが肝臓で処理されて、胆汁に排出されたもののことを言う。
γ-GTP(ガンマ-ジーティーピー)
γ-GTPは、肝臓の解毒作用に関わる酵素で、肝細胞で合成されたあと、一部が胆汁に排出されます。
γ-GTPは、アルコールで上昇することは有名ですね。
その他にも、薬剤や胆管の閉塞などの胆道系の異常によっても上昇します。
- アルコール
- 薬剤
- 肥満
- 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
- 肝疾患
- 急性・慢性肝炎
- 肝硬変
- 肝細胞癌など
- 胆汁うっ滞
- 胆管に胆石がつまる
- 胆管炎
- 胆道癌
ALP(エーエルピー)
ALPは、アルカリフォスフォスファターゼ(Alkaline Phosphatase)のことで、リン酸化を分解する酵素で、肝臓や腎臓、腸粘膜、骨などで作られます。
そして、最終的に肝臓で処理されて胆汁中に排泄されます。
このため、胆汁のうっ滞があると、ALPは大きく上昇します。
ですが、ALPは胆汁うっ滞でも上昇しますが、骨でも多く作られているため、骨折などの骨疾患がある場合も上昇することが注意が必要です。
- 胆石や胆管炎、胆道癌による胆汁のうっ滞
- 閉塞性黄疸
- 薬剤性肝障害
- 転移性肝がん
- 骨疾患
- 骨折、骨軟化症、癌の骨転移、骨肉腫など
- 成長期の子供、妊娠など
まとめ
- 肝障害や胆道系の異常を見たいときは、『 AST、ALT、T-Bil、γ-Bil、ALP 』に注目する。
- 肝障害を評価する時には、『 AST / ALT 』を参考にする。
- 胆道系の異常を評価するときは、『 T-Bil / γ-GTP / ALP 』を参考にする。
- T-Bilは、間接ビリルビン(I-Bil)と直接ビリルビン(D-Bil)を合わせたもので、間接ビリルビンが上昇する場合は、主に溶血性疾患に限られる。
〈参考〉
- 三橋知明 臨床試験ガイド 文光堂
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、ぜひよろしくお願いします?
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