SLEは、抗ds-DNA抗体、抗Sm抗体など多くの自己抗体を産生する病気ですが、別名『IFN病(インターフェロン病)』とも言われています。
今回は、なぜSLEが「IFN病」と呼ばれるのか、自己抗体産生のメカニズムも合わせて解説していきたいと思います!
SLEがインターフェロン病と呼ばれるのは、すごい気になってました!
自己抗体産生のメカニズムも合わせて教えて欲しいです!
- IFN・・・インターフェロンと読む。炎症性サイトカインの一つです。
- SLE・・・全身性エリテマトーデス。systemic lupus erythematosus。
SLEでIFNが大量に産生されるメカニズムはよくわかっていない?!
SLEが、なぜ「IFN(インターフェロン)病」と呼ばれるのかを探るために、
2018年にAnnals of the Rheumatic Diseasesという欧州のリウマチ疾患における有名な医学雑誌に掲載された、
『Apoptosis-derived membrane vesicles drive the cGAS–STING pathway and enhance type I IFN production in systemic lupus erythematosus1)』を参考にしたいと思います。
この研究論文は、大阪大学の熊ノ郷先生の研究グループが発表されたものです。
実はSLEにおいて、炎症性サイトカインの一つであるIFNが大量に産生されている理由はあまりよくわかっていません。
今回熊ノ郷先生の研究グループは、このSLEにおいて、なぜIFNが過剰に産生されているかを見つけ出す研究をされています。
そもそも、IFNってなにもの?
インターフェロン(IFN)は、炎症性サイトカインの一つですが、さらに「Ⅰ型〜Ⅲ型」まであります。
SLEでは、その中でも特に『 1型IFN 』が関与しております。
ヒトのⅠ型IFNは、「IFN-α、IFN-β、IFN-ε、IFN-κ、IFN-ω、IFN-υ」がみつかっています2)。
1型IFNはどのような役割があるかというと、
1型IFNは、特にウイルス感染時に活躍するサイトカインであることがわかっています。
具体的には、I型インターフェロンは、通常、多くのウイルスやいくつかの病原体に応答して、マクロファージ、好中球、樹状細胞および他の体細胞から産生されます。
SLEでは『1型IFN』が過剰産生されている。
IFNの産生経路
SLEでは、1型IFNが過剰に産生されているといいましたが、
熊ノ郷教授の研究チームは、
この1型IFNの過剰産生されている理由が、
細胞内の核酸センサーである『cGAS-STING経路』の刺激が亢進していることを突き詰めました。
これにより、1型IFNの産生が亢進していることがわかりました。
〈 図:cGAS-STING経路の刺激によりIFN産生が亢進している3) 〉
自己抗体産生のメカニズム
SLEで、抗ds-DNAや抗Sm抗体など多くの自己抗体が産生されます。
実は、この自己抗体を産生させるメカニズムは、『1型IFN』が関与しています。
つまり、過剰な1型IFNによって、自己抗体の産生が促されています。
SLEでは、こういった自己抗体と抗原と補体が結合し、『免疫複合体』を形成します。
この免疫複合体が、腎臓、皮膚、肺などの臓器に沈着し、ループス腎炎や蝶形紅斑などの皮疹を起こします。
〈 SLEにおける免疫複合体の沈着の模式図4) 〉
免疫複合体の沈着によって、組織の細胞が障害されます。
障害された細胞由来のものである『 細胞外膜小胞中に含まれる核酸 』が、
先ほど出た、核酸センサーである『cGAS-STING経路』をさらに刺激します。
これによって、さらにIFN産生がさらに亢進し、
これが、抗ds-DNA抗体といった自己抗体産生を促し、SLEの『負のスパイラル』が起こります。
IFN過剰産生
➡︎ 自己抗体産生
➡︎ 免疫複合体の沈着
➡︎ 細胞死
➡︎ cGAS-STING経路がさらに刺激
➡︎ さらなるIFNの産生
〈 図:SLEにおける自己抗体産生の負のスパイラル4) 〉
抗IFN抗体 サフネロー®︎(アニフロルマブ)の登場について
ここで、今年2021年11月25日にアストラゼネカより抗1型IFN受容体抗体製剤であるサフネロー®︎(アニフロルマブ)が発売されました。
もう、お分かりでしょうか。
抗1型IFN受容体抗体が1型IFNの作用を抑制することで、SLEの負のループを形成している『過剰な1型IFN』を抑えてくれます。
これにより、自己抗体産生や免疫複合体産生を抑制し、SLEの改善を認めます。
サフネロー®︎については、以下のリンクをご参考ください。
抗1型IFN受容体抗体製剤であるサフネロー®︎(アニフロルマブ)は、I型IFNの作用を抑えることで、治療効果を発揮する。
大阪大学の研究チームは、、、
〈 大阪大免疫学フロンティア研究センター5) 〉
さらに、大阪大学の研究チームは、
細胞内核酸センサーである「cGAS-STING経路」を遮断することが、SLEの新たな治療ターゲットとなるのでないかと、さらに研究を進められています。
今後もSLEの新たな治療法が登場するかもしれませんね。
続報を待ちましょう!
〈参考〉
- 1) Yasuhiro Kato, et al. Ann Rheum Dis 2018;77(10):1507-1515.
- 2) https://www.cosmobio.co.jp/product/detail/interferon.asp?entry_id=15082
- 3) http://www.ifrec.osaka-u.ac.jp/jpn/research/upload_img/commentary_180626.pdf
- 4) https://www.sanofi-sle.jp/know/disease_about
- 5) https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/02/16/02317/
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、ぜひよろしくお願いします?
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