SLE

SLEの新薬「サフネロー®︎(アニフロルマブ)」について【Ⅰ型IFN受容体抗体製剤】

今回は、2021年11月25日に発売された、全身性エリテマトーデス(SLE)の新薬「サフネロー(アニフロルマブ)」について取り上げていきたいと思います。

最近新しくでたサフネロー®︎すごい気になってました!
よろしくお願いします!

サフネロー®︎(アニフロルマブ)について

サフネロー®︎(アニフロルマブ)は、『抗Ⅰ型IFN受容体1モノクローナル抗体製剤』です。

SLEでは、ベンリスタ®︎につぐ2剤目の生物学的製剤となります。

Ⅰ型IFN(いちがたインターフェロン)は、SLEの病態形成に深く関わっており、SLEではⅠ型IFNが過剰産生されています。

このⅠ型IFNによって、自己抗体の産生が促されています。

IFNとは

IFN(インターフェロン)は、主にウイルス感染時に活躍するサイトカインです。
IFNは、ウイルス増殖の抑制及び細胞性免疫応答の賦活化によって、ウイルス感染細胞の障害を促進します。

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適応疾患は?

サフネロー®︎は、以下の疾患に適応があります。

  • 既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデス

使用に際しての注意

  • 抗核抗体、抗ds-DNA抗体等の自己抗体が陽性であるSLE患者さんに対して使用します。
  • 活動性かつ重症のループス腎炎やNPSLE(中枢神経ループス)に対する有効性や安全性は検討されていません。

具体的にどんな時に投与しますか?

  • 創薬の根拠となったTULIP-2試験の対象者は、『標準治療を受けている中等症〜重症のSLE患者さん』であり、実臨床でもこういった患者さんに必要性を検討し、投与します。
  • 活動性の重症ループス腎炎や精神神経症状SLEの患者さんは除外されているため、この2症状があるSLE患者さんには推奨されません。

用法は?

サフネロー®︎(アニフロルマブ) 300 mgを4週間ごとに 30分以上かけて点滴静注します。

薬価について

薬価は、以下のようになります。

バイアル 300 mg 96,068円

SLEは、特定疾患を申請していると思うので、個人負担は大きな問題にならなそうですね。

副作用は?

10%以上上気道感染類(上気道感染、上咽頭炎、咽頭炎)、注入に伴う反応
1〜10%未満気管支炎類(気管支炎、ウイルス性気管支炎)、帯状疱疹、過敏症
1%未満気道感染類(ウイルス性気道感染、細菌性気道感染)

注意すべき副作用は?

サフネロー®︎で、注意すべき副作用は、やはり『ウイルス感染症』です。

先ほど、インターフェロンはウイルス感染時に主に働くサイトカインとお話しましたが、サフネロー®︎はそのIFNを阻害するため、ウイルス感染のリスクが高くなってしまいます。

〈頻度の多かったウイルス感染〉

  • 上気道感染 5.8%
  • 帯状疱疹 5.6%
  • 上咽頭炎 4.7%
  • 気管支炎 2.5%

もちろん、こういった副作用のリスクはありますが、サフネロー®︎は治療が必要なSLEの方に投与されるので、こういったウイルス感染のリスクに注意しながら生活していくことが大切です。

重大な副作用

  • アナフィラキシー 頻度不明
  • 重篤な感染症 1.7%




サフネロー®︎(アニフロルマブ)のエビデンスは?

アニフロルマブ(サフネロー®︎)は、優れた疾患活動性の低下効果を示した。

TULIP-2試験

  • TULIP-2試験において、投与52週時にBICLA達成率(SLEの低疾患活動性を表す指標)が、プラセボ(+標準治療)群と比較して、アニフロルマブ(+標準治療)群では有意に増加していた。
  • プレドニゾロン(プレドニン®︎)10 mg/日以上の患者において、7.5 mg / 日以下に減量した患者割合が有意に増加した。

※ BICLA達成率とは、SLEの低疾患活動性を達成した割合です。具体的には、①BILAG-2004、②SLEDAI-2K、③PGAのそれぞれにおける低疾患活動性の基準を満たし、かつ④治療薬を中止していない、⑤制限されている薬剤を超えて使用していないことの5つの基準を全て満たす患者さんの割合です。

アニフロルマブ群プラセボ群におけるBICLA達成率の推移

SLE再燃率はどうですか?

  • 年率換算した再燃率(フレア)は、アニフロルマブ(+標準治療)群の方が、プラセボ(+標準治療)群と比べて低い傾向にはあったが、有意差は認めなかった。

TURIP-2試験では、全ての評価項目においてアニフロルマブの有意性が認められた訳ではないことには注意してなければいけません。

アニフロルマブ群プラセボ群における再燃率

参考) Morand EF, et al. N Engl J Med. 2020;382(3):211-221.

作用機序について

SLEの病態生理には、『Ⅰ型IFN』が中心的な役割を担っており、このⅠ型IFNが過剰に産生されています

SLEは、別名「IFN(インターフェロン)病」ともいわれます。

この過剰なⅠ型IFNが、自己抗体産生に寄与しています。

サフネロー®︎(アニフロルマブ)は、免疫細胞の表面上にあるⅠ型IFN受容体をターゲットとした、モノクローナル抗体です。

アニフロルマブによって、Ⅰ型IFN受容体をブロックすることで、Ⅰ型IFNの働きを抑えます。

これによって、自己抗体の産生を抑制することができます。

サフネロー®︎(アニフロルマブ)の作用機序の模式図

(新薬情報オンライン : https://passmed.co.jp/di/archives/16292 より引用)

参考)

1) Ronnblom L, et al. Lipus Sci Med. 2019;6(1):e000270.

2) Menon M, et al. Immunity. 2016;44(3):683-697.

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参考)

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“今回のまとめ”
  • サフネロー®︎(アニフロルマブ)は、抗Ⅰ型IFN受容体1抗体である。
  • サフネロー投与時は、ウイルス感染には注意する。
  • 既存の治療で効果不十分なSLEにおいて、サフネローは、低疾患活動性の有意な低下効果およびステロイドの減量効果を期待できる。
  • 使用経験が乏しいため、今後の実臨床でのデータが必要である。

今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、よろしくお願いします?

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