ベーチェット病

ベーチェット病ってどんな病気?【Behcet’s disease】

こんにちは、今回は「ベーチェット病」について取り上げていきたいと思います。

それではさっそくやっていきましょう!

ベーチェット病ってどんな病気?

ベーチェット病は、膠原病のうちの「広義の自己炎症性疾患」に分類されます。

自己炎症性疾患は、厳密には家族性地中海熱やクリオピン関連周期熱症候群などの遺伝性周期性発熱などのことを指しますが、ベーチェット病も「広義の自己炎症性疾患」に入ってきます。

自己炎症性疾患は、炎症シグナルや自然免疫系の異常による疾患のことをいいます。ポイントは、自己免疫疾患で認めるような自己抗体は陰性となることです。

ベーチェット病の主役は「好中球」

ベーチェット病は、自然免疫系の代表ともいえる「好中球」異常により発症すると考えられています。

ただし、はっきりとした原因は今の医学でもわかっていません。

この好中球の異常により、口内炎、眼のぶどう膜炎、皮疹、陰部潰瘍といった症状を認める病気です。

疫学について

ベーチェット病の平成26年度の医療受給者証保持者数は、約20000人で、年々増加傾向にあります。

また、患者さんは北海道などの北日本に多く、北高南低の分布をとる傾向にあります。

男女比はほぼ一緒と言われています。

ベーチェットの4大主症状?!

ベーチェット病には、4大主症状があり、以下の4つ全てを満たすものを「完全型」と呼びます。

口内炎

ベーチェット病の代名詞とも言われる、「口内炎」は、ほぼ必発であり、初発の症状としても最も頻度が高いです。

ベーチェット病による口内炎

眼病変

ベーチェット病に特徴的な眼病変は、「ぶどう膜炎と虹彩毛様体炎」です。

虹彩毛様体炎では、眼痛、霧視、羞明、瞳孔不整などを認め、時に前房蓄膿も伴います。

炎症が後眼部にまで及ぶと、ぶどう膜炎になり、視力低下や視野異常を伴います。

ベーチェット病で認める前房蓄膿

皮疹

ベーチェット病に特徴的な皮疹は、「毛嚢炎様皮疹(ざ瘡様)と結節性紅斑様皮疹」です。

また、下肢に血栓性静脈炎を認めることもあります。

毛嚢炎様皮疹
下肢の結節性紅斑

外陰部潰瘍

ベーチェット病では、「外陰部に潰瘍」を認めます。

男性では陰嚢、陰茎、亀頭に、女性では陰唇、膣粘膜に有痛性の潰瘍を認めます。

潰瘍を残すこともあります。

陰部潰瘍

副症状について

主症状ほど頻度は高くないですが、副症状もベーチェット病に特徴的な症状です。

関節症状

膝、手関節、肘など中〜大関節に関節痛、関節炎を認めます。

一般的にリウマチでみられるような、変形や硬直は伴いません。

副睾丸炎

副睾丸炎は精巣上体という部分に炎症が起きていることを指します。通常は、一過性ですが、再発することもあります。

消化管病変

消化管病変を伴う場合は、ベーチェット病の特殊型で『腸管ベーチェット病』と呼びます。

腹痛、下痢や下血といった症状を認め、食道から直腸までの部位に潰瘍を生じます。典型的には、回盲部(小腸の末端)に深い潰瘍を形成します。

血管病変

血管病変を伴う場合は、ベーチェット病の特殊型で『血管ベーチェット病』と呼びます。

動脈系にも生じますが、静脈系が多いです。

静脈系では、深部静脈血栓症、動脈系では、動脈瘤、動脈閉塞、肺塞栓症を認めます。

神経病変

神経病変を伴う場合は、ベーチェット病の特殊型で『神経ベーチェット病』と呼びます。

神経ベーチェット病は、急性型と慢性進行型の2つに分類されます。

急性型は、髄膜炎や脳幹脳炎で発症し、急速に経過します。

慢性進行型は、片麻痺、小脳症状や認知症様の精神神経症状が緩徐に進行します。

通常慢性型の方が、難治性で、人格変化や認知症が酷く、まるで廃人のようになってしまう場合もあり注意が必要です。




症状の頻度の目安

主症状頻度
口内炎98%
眼症状65~70%
皮疹85%
外陰部潰瘍72%
副症状
関節炎50%
副睾丸炎6%
消化器病変10~20%
神経病変12%
血管病変8%

検査について

ベーチェット病の検査は、血液検査、画像検査が重要です。

血液検査

血液検査は、主に「炎症反応」があるかを確認します。

炎症反応は、白血球(WBC)、CRP、ESR 1hr(赤沈1時間値)を確認します。

「HLA-B51やHLA-A26」の陽性頻度が高く、診断の参考となります。

また、ベーチェット病は、先ほども申し上げた通り、抗核抗体などの自己抗体は陰性となります。

※ HLA(Human Leukocyte Antigen)とは ヒト白血球抗原のことで、赤血球を除く、ほぼ体内のすべての細胞の表面に存在する特殊なタンパク質のグループです。人それぞれに構造の微妙な違いがあり、免疫システムが「自己」と「非自己」を区別するための目印として働いています。

画像検査

画像検査は、主に神経ベーチェット病を検査するときに行い、MRIを撮像します。

MRIでは、T2強調画像やFLAIR画像に注目します。

急性型の場合は、病変部があると病変部位が高信号になります。

慢性進行型の場合は、MRIにて脳幹と小脳を中心とした萎縮を認めます。

その他、神経ベーチェットを疑う場合は髄液検査も行います。

診断について

ベーチェット病の診断は、厚生労働省の診断基準(2010年小改定)を参考にします。

1.主要項目
(1)主症状

①口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍
②皮膚症状 : (a)結節性紅斑様皮疹、(b)皮下の血栓性静脈炎、(c)毛嚢炎様皮疹、痤瘡様皮疹、参考所見:皮膚の被刺激性亢進(針反応)
③眼症状 : (a)虹彩毛様体炎、(b)網膜ぶどう膜炎(網脈絡膜炎)、(c) (a)または (b) を経過したと思われる虹彩後癒着、水晶体上色素沈着、網脈絡膜萎縮、視神経萎縮、併発白内障、続発緑内障、眼球癆
④外陰部潰瘍
(2)副症状
①変形や硬直を伴わない関節炎
②副睾丸炎
③回盲部潰瘍で代表される消化器病変
④血管病変
⑤中等度以上の中枢神経病変
[判定]
①完全型 : 経過中に(1)主症状のうち4項目が出現したもの
②不全型 : (a) 経過中に(1)主症状のうち3項目、あるいは(1)主症状のうち2項目と(2)副症状のうち2項目が出現したもの
(b) 経過中に定型的眼症状とその他の(1)主症状のうち1項目、あるいは(2)副症状のうち2項目が出現したもの
③疑い : 主症状の一部が出現するが、不全型の条件を満たさないもの、及び定型的な副症状が反復あるいは増悪するもの
④特殊型 : 完全型又は不全型の基準を満たし、下のいずれかの病変を伴う場合を特殊型と定義し、以下のように分類する。
(a)腸管型ベーチェット病―内視鏡で病変部位を確認する。
(b)血管型ベーチェット病―動脈瘤、動脈閉塞、深部静脈血栓症、肺塞栓のいずれかを確認する。
(c)神経型ベーチェット病―髄膜炎、脳幹脳炎など急激な炎症性病態を呈する急性型と体幹失調、精神症状が緩徐に進行する慢性進行型のいずれかを確認する。
厚生労働省診断基準(2010小改定)
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“今回のまとめ”
  1. 膠原病のうち広義の自己炎症性疾患に分類される。
  2. 4大症状として、口内炎、眼症状、皮疹、陰部潰瘍がある。
  3. 腸管、血管、神経病変を認めると特殊型に分類される。

今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。参考になりましたら、高評価、コメントを頂けましたら嬉しいです?またTwitterのフォローもお願いします?

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