ベーチェット病

ベーチェット病の治療について(特殊型も含む)【BD】

こんにちは、今回は「ベーチェット病の治療」について取り上げていきたいと思います。

それではさっそくやっていきましょう!

ベーチェット病の治療について

ベーチェット病の治療は、基本的に症状別に行っていきます。

皮膚病変に対しては、皮膚病変に有効な治療を、眼病変に対しては眼病変に有効な治療を。こういった感じです。

なんといっても「コルヒチン」

ベーチェット病のキードラックとなるのはなんといっても、『コルヒチン』です。

コルヒチンの作用機序は、「好中球の遊走を阻害すること」です。

つまり炎症の病態形成に主に好中球が関わるベーチェット病では、好中球をターゲットしたコルヒチンは、理にかなった治療法となります。

コルヒチンの特徴としては、コルヒチン自体は免疫抑制薬ではないため、免疫抑制作用による感染症のリスク上昇といったデメリットはありません。

コルヒチンの注意すべき副作用は、「下痢」があります。下痢を予防するために、最初は少量の0.5 mgから開始したり、下痢症状が出てしまった場合は、止痢剤を併用したり、減量したりして対応します。

その他の薬剤

また、ベーチェット病で使われるその他の治療薬は、ステロイドやレミケード®︎(インフリキシマブ)やヒュミラ®︎(アダリムマブ)といったTNF阻害薬、シクロスポリン(ネオーラル®︎)、メトトレキサート、エンドキサン®︎(シクロフォスファミド)が症状に合わせて使われます。

では、具体的それぞれの病変についての治療法を見ていきましょう!

皮膚粘膜症状の治療

口内炎、陰部潰瘍

口内炎や陰部潰瘍には、局所療法として「ステロイド軟膏」、疼痛対策としてリドカインゲルを使用します。

アフタゾロン®︎(デキサメタゾン)

毛嚢炎様皮疹

毛嚢炎様皮疹は通常のニキビ(ざ瘡)の治療に準じた治療が行われます。

コルヒチンはどんな時使う?

コルヒチンは、「結節性紅斑」「女性の陰部潰瘍」に有効と言われています。

エビデンスは乏しいですが、口内炎にも使用されます。




眼症状の治療

眼発作抑制に対してコルヒチンが第一選択です。

用法 : コルヒチン 1日 0.5 ~ 1.5 mg


コルヒチンで効果乏しかった場合は、TNF阻害薬であるレミケード®︎︎︎︎(インフリキシマブ)の導入が推奨されています。

用法:レミケード®︎ 1回 5 mg/kg を初回、2週後、6週後に投与し、以後8週毎に投与


また、最近では、同じTNF阻害薬であるヒュミラ®︎(アダリムマブ)も保険適応となり使用可能となりました。(後部または汎ぶどう膜炎に対して)

他の免疫抑制薬として、ネオーラル®︎(シクロスポリン)やアザニン®︎/ イムラン®︎(アザチオプリン)が使用する場合もあります。しかし。ネオーラル®︎(シクロスポリン)は、眼症発作の抑制効果がそこまで高くない、そして神経ベーチェットを誘発する可能性があることから、以前程は使用されなくなっています。

虹彩毛様体炎などの前眼部病変に対してはステロイド点眼や、虹彩癒着防止のための散瞳薬が使われます。後眼部病変の発作にはステロイド局注も行うことがあります。

腸管ベーチェット病の治療

腸管病変は本邦に多く、クローン病などの炎症性腸疾患の治療に準じた治療が行われます。

具体的には、ステロイド、サラゾスルファピリジン、メサラジン、アザチオプリン、レミケード®︎(インフリキシマブ)、ヒュミラ®︎(アダリムマブ)が使用されます。

用法例

プレドニゾロン(ステロイド) 0.5 ~ 1 mg / kg / 日 程度

サラゾスルファピリジン 1500 ~ 2000 mg / 日

メサラジン 1500 ~ 2500 mg / 日

時に、消化管出血や消化管穿孔など緊急手術を要することもあります。お通じが赤くなったなどの鮮血便や急な腹痛を認めた際は、可能性を否定できないため注意が必要です。

MDSとの合併

特殊な場合として、腸管ベーチェット病は、血液疾患である骨髄異形成症候群(MDS)を合併する場合があります。

MDSは、血液悪性疾患(癌)の前癌病態の様な状況で、血液内科とともに注意深くフォローしていく必要があります。

3血球(白血球、赤血球、血小板)のうち2血球以上の低下を認めた場合は、特にMDSの合併を疑います。

神経ベーチェット病の治療

急性型の脳幹脳炎、髄膜炎にはステロイドパルス療法を含め、高用量ステロイドが使用され、その後減量していきます。

その他の免疫抑制薬は、メトトレキサート、イムラン®︎ / アザニン®︎(アザチオプリン)、エンドキサン®︎(シクロフォスファミド)、レミケード®︎(インフリキシマブ)が使用されます。

用法例

イムラン®︎ / アザニン®︎(アザチオプリン) 50 ~ 100 mg / 日

メトトレキサート 10 ~ 15 mg / 週

※ シクロスポリン(ネオーラル®︎)は、約 1/4に神経症状を誘発する可能性があり、神経ベーチェット病には禁忌となります。

血管ベーチェット病の治療

血管ベーチェット病の治療に関して確立したエビデンスのあるものはありませんが、

EULAR(欧州リウマチ学会)や厚労省のガイドラインにおいて、

動脈病変および肺動脈瘤にはステロイド、エンドキサン®︎(シクロフォスファミド)が、

静脈血栓症にはイムラン®︎ / アザニン®︎(アザチオプリン)、エンドキサン®︎などの免疫抑制療法が推奨されています。

抗凝固薬や抗血小板薬といった、いわゆる「サラサラ系の薬」は、EULAR(欧州リウマチ学会)では推奨されておらず、使用の是非のエビデンスについては確立していません。

まとめ

欧州リウマチ学会(EULAR)で推奨されているベーチェット病の治療薬を以下の表にまとめました。

COLCSAZACYP
皮膚粘膜症状
(局所)
眼病変
治療抵抗性
眼病変
関節炎
腸管病変
神経病変
血管病変
MTXCsAIFXSSZ
皮膚粘膜症状
眼病変
治療抵抗性
眼病変
関節炎
腸管病変×
神経病変
血管病変

略称 COL : コルヒチン、CS : ステロイド、AZA : アザチオプリン(アザニン®︎ / イムラン®︎)、CYP : シクロフォスファミド®︎(エンドキサン)、MTX : メトトレキサート、CsA : シクロスポリン(ネオーラル®︎)、IFX : インフリキシマブ(レミケード®︎)SSZ : サラゾスルファピリジン

“今回のまとめ”
  • コルヒチンは、ベーチェット病治療におけるキードラックである。
  • TNF阻害薬であるレミケード®︎(インフリキシマブ)やヒュミラ®︎(アダリムマブ)は、幅広い症状に対して使用され、有効性も高い。
  • シクロスポリン(ネオーラル®︎)は、約 1/4に神経症状を誘発する可能性があり、神経ベーチェット病には禁忌となる。

今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。参考になりましたら、高評価、コメントを頂けましたら嬉しいです?またTwitterのフォローもお願いします?

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※個人個人で症状の違いがあるため、詳細な治療などにつきましては直接医療機関へお問い合わせください。