血管炎

ANCA関連血管炎について【AAV:ANCA associated vasculitis】

こんにちは、今回はANCA関連血管炎について取り上げていきたいと思います!

ANCA関連血管炎ってどんな病気?

ANCA関連血管炎は、「小型血管炎」の一つで、血管炎の中では比較的頻度の高い疾患になります。

主に3種類に分けられ、

  1. 顕微鏡的多発血管炎(MPA)
  2. 多発血管炎性肉芽腫症(GPA)
  3. 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)

に分けれらます。

顕微鏡的多発血管炎(MPA)で日本で難病指定されている患者さんの数は「10000人程」、多発血管炎性肉芽腫症では、「3000人弱」、また好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)では「2000程」の患者さんが難病指定に登録されています。(計15000人程)

というかANCAってなに?

そうですよね、「ANCA」って言われて、「フムフムあのANCAのことね」、とはならないですよね。

ANCAとは、『抗好中球細胞質抗体』のことでAanti-neutrophil cytoplasmic antibodyを省略してANCAと呼んでいます。白血球の一つである好中球の細胞質内顆粒(リソソームなど)を対応抗原とする自己抗体の総称のことです。

つまり、ANCAは好中球の細胞質をターゲットとした抗体のこととなります。

ANCA関連血管炎の発症機序についてはまだ不明な部分もありますが、現在までのわかっている部分を簡単にご紹介します。

何らかの感染症などを契機に、ANCAの産生が亢進します。ANCAが好中球(白血球の一つ)に結合することで、好中球が異常に活性化します。

この異常に活性化した好中球は、種々の炎症性サイトカインや「NETs(ネッツ)と呼ばれる好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps)」を産生します。この炎症性サイトカインやNETsは、感染から身を守るための本来の生体防御システムの一つです。そして、このNETsは、好中球が細胞死した後も病原菌に対して殺菌作用を持つことが、殺菌効果を持続させることができます。

NETsはその名の通り、アミ目構造をしていて、ここに病原体が絡み殺菌作用を発揮するイメージです。

アミ目構造がNETs

ただし、NETsがずっと身体の中に残っていると、身体の細胞達にも影響を与えてしまうため、感染が鎮静化した後は、免疫細胞の働きによってANCAの産生低下するため、NETsの形成もなくなります。

しかし、高齢の方になって来ると身体の免疫機能が低下してしまうことで、ANCAの産生が止められず、それによりNETsの形成が止まりません。このNETsによって、血管内皮細胞障害を起こしたり血栓を形成したりして、血管炎を起こすと考えられています。

以上から、ANCA関連血管炎は、感染症などを契機に産生されるANCAが、感染が鎮静化した後も産生が継続することで、主に血管をターゲットにして炎症を起こてしまう病気です。

このことから、ANCA関連血管炎は比較高齢の方で多い疾患になります。

ANCAの種類について

ANCAには、「MPO-ANCA」と「PR3-ANCA」の2種類があります。

一般的には、「MPO-ANCAはMPAやEGPAと関連」し、「PR3-ANCAはGPAと関連」すると言われています。

(ただし、EGPAの発症については、喘息やアレルギー性鼻炎が背景にあることが大前提です。)

しかし、ANCAの種類だけではMPAやGPAを正確には分けられず、PR3-ANCAでもMPAの症状がで出たり、MPO-ANCAでもGPAの症状が出ることもあります。そのため、MPOだろうがPR-3だろうが、MPAやGPAと区別せずに、まとめてANCA関連血管炎と表現することもあります。

(英語の略称が多くて、頭がこんがらがってきましたね ^^; )

今回は、MPAやGPAと分けた方がより具体的にイメージしやすいと思うので、分けて説明していきます。




ANCAの陽性率について

ANCAは、MPA(顕微鏡的多発血管炎)でもGPA(多発血管炎性肉芽腫症)でも100%いずれかのANCAが陽性となるわけではなく、ある一定数はANCA陰性となってしまいます。

ANCA陽性率
MPA(顕微鏡的多発血管炎)70%
GPA(多発血管炎性肉芽腫症)80-90%
EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)30-50%

具体的な陽性率は、上記の表のようになります。その中でも、EGPAの陽性率が一番低く、半分以上はANCA陰性となります。

ANCA陰性の場合はどうやってANCA関連血管炎と診断するのですか?

実臨床では、どうしてもANCAが陰性であるが、その他の感染症や悪性腫瘍などの検査も陰性で、診断が難しいケースが時々あります。

そういった場合は、出現した症状に加え、皮膚の皮疹や腎臓の生検を行い、皮膚なら「血管炎」の所見や、腎臓なら「半月体形成性糸球体腎炎」といったANCA関連血管炎に特徴的な所見を認めることが診断確定の根拠になります。

ANCA関連血管炎の各症状の違い

ANCA関連血管炎のMPA、GPAやEGPAの最大の違いは、出現する症状にあります。

以下のその症状をまとめてみました。

MPAGPAEGPA
まれ眼窩内腫瘤、強膜炎、上強膜炎、ぶどう膜炎まれ
耳鼻咽喉領域まれ鼻中隔穿孔、鞍鼻、難聴、声門下狭窄鼻ポリープ、アレルギー性鼻炎、伝音性難聴
肺胞出血、間質性肺炎節影、浸潤影、空洞性病変、肺胞出血気管支喘息好酸球性肺炎、肺胞出血
心臓まれ弁膜症心不全、心膜炎、不整脈
急性進行性糸球体腎炎急性進行性糸球体腎炎急性進行性糸球体腎炎
末梢神経しびれしびれしびれ
皮膚紫斑など皮下結節、紫斑、潰瘍など皮下結節、紫斑、潰瘍など
消化管虚血性腸炎まれ好酸球性胃腸炎、虚血性腸炎、消化管出血

それぞれに特徴的な症状として、

MPA(顕微鏡的多発血管炎)では、肺の間質性肺炎や時に肺胞出血、腎では急速進行性糸球体腎炎、末梢神経障害のしびれなどが特徴的です。

GPA(多発血管炎性肉芽腫症)では、耳鼻咽喉領域の上気道症状が特徴的で、鼻中隔穿孔、鞍鼻や眼では眼科内腫瘤、強膜炎、肺では結節影や空洞性病変を認めます。

また、EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)では、鼻ポリープ、アレルギー性鼻炎、心臓では心不全、心膜炎、末梢神経障害のしびれ、皮膚では紫斑などが特徴的な症状です。

以上のように、各疾患ごとに特徴的な症状があることご診断のポイントとなります。

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“今回のまとめ”
  • ANCA関連血管炎は、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の3種類に分けられる。
  • ANCAは、比較的高齢の方で多い疾患である。
  • ANCAには、MPO-ANCAとPR3-ANCAがあり、一般的にMPO-ANCAはMPAやEGPAと関連が強く、PR3-ANCAはGPAと関連が強い。(ただし必ずしもそうならない場合もある)

今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。参考になりましたら、高評価、コメントを頂けましたら嬉しいです?またTwitterのフォローもよろしくお願いします?

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