血管炎

血管炎の症状について【Vasculitis】


〜 The Point 〜

  • 大型血管炎は、全身症状とともに上肢症状、下肢症状といった炎症による狭窄、閉塞の症状が特徴的である。
  • 中型血管炎は、全身症状とともに、皮膚の潰瘍や壊死、消化管症状など、小型血管より広い範囲の症状が特徴である。
  • 小型血管炎は、小型血管が集まる肺や腎臓、そして皮膚、末梢神経の症状が特徴である。

今回は、前回の続きということで血管炎の症状について取り上げていきたいと思います!

前回では、血管炎は全身に張り巡らされている動脈に炎症が起きる病気とお伝えしましたが、では、全身の血管炎によってどういった症状が出てくるのか見ていきましょう。

Chapel Hillの血管炎分類

血管炎の症状について

繰り返になりますが、血管は全身に至るところにあるため、全身の血管の炎症による「全身症状」を認めます。

全身症状‥発熱、倦怠感、体重減少、頭痛など

また、血管サイズの違いが症状にも影響してきます。

症状
大型血管炎上肢症状(脈の消失、しびれなど)、頭頸部症状(頭痛、めまい、顎跛行など)、間欠性跛行など
中型血管炎関節痛、皮膚症状(紫斑、潰瘍など)、消化器症状(腹痛、直腸出血など)、肺病変(浸潤影、結節影、空洞影など)など
小型〜中型血管炎間質性肺炎、糸球体腎炎、末梢神経症状(痺れ、筋力低下など)、皮膚症状(紫斑、リベドなど)
小型血管炎間質性肺炎、糸球体腎炎、紫斑など

用語説明

  • 顎跛行‥食べ物を噛んだり、しゃべったり、とにかく顎の筋肉を動かすと痛くなる
  • 間欠性跛行‥一定の距離を歩くと、ふくらはぎなどにうずくような痛みやしびれ・疲労感があって歩行が次第に困難になり、しばらく休息すると治まるものの、また歩き続けると再び痛みだすという症状
  • 紫斑‥主に下肢などに認める、紫紅色、あるいは暗紫褐色の斑のこと。皮膚内の出血(赤血球の漏出)を意味する。
  • リベド‥皮膚末梢循環障害による網目状の潮紅を呈する皮膚症状

リベド(淡くもやもやしている皮疹)




大型血管炎の症状

大型血管炎は、血管の規模が大きい分、全身症状がより強く出ます。具体的には、高熱や全身倦怠感の持続などです。

また、大きな血管の炎症による「血管の閉塞や拡張」に伴う症状も認めます。具体的には、片側上肢の虚血症状(易疲労感、しびれ感、上肢痛み、脈なし、血圧の左右差など)や脳の虚血症状(めまい、失神など)、下肢の虚血症状(間欠性跛行など)です。

(虚血とは、狭窄や閉塞などにより血流が悪い状態をいいます。)

こういった症状は、巨細胞性動脈炎より広範囲に炎症を認める高安動脈炎に多いです。

中型血管炎の症状

結節性多発動脈炎の皮膚潰瘍

結節性多発動脈炎を代表とする中型血管炎は、その他の血管炎と同じく、全身症状(発熱、体重減少など)は80%近く認めると言われています。

中型血管のサイズで特徴的症状としては、「皮膚病変や腸管病変」が多いです。

「皮膚病変」としては、皮膚潰瘍や指趾の壊死などが特徴的です。ワンサイズ小さい小型血管炎レベルだと、紫斑などのより小さい血管の炎症が現れますが、中型血管の炎症はより皮膚病変が大きく、潰瘍や壊死を形成します。

(壊死とは、腐ってしまった状態のことです。)

また、中型血管のサイズでは「腸管病変も特徴的です。悪心、嘔吐、急性腹症まで多彩な症状を認めます。

さらに、腸管膜動脈の閉塞、梗塞や動脈瘤破裂まで来たすことがあります。その場合、腸管穿孔、消化管出血、腹腔内出血を呈し、時にとても重症となってしまう場合もあります。

小型血管炎の症状

紫斑

小型血管炎の症状の特徴としては、やはり肺や腎臓に直接病変を認めることです。確かに、大型血管炎でも中型血管炎でも腎臓に病変も認めますが、それは主に大動脈から腎臓に分岐する腎動脈が狭窄、閉塞するためによる症状で、直接腎臓自体が障害されるているわけではありません。

腎臓や肺の血管は、とても細いのが特徴的で、その理由は、血管をより細くすることで、表面積が増えることで、腎臓では効率的に尿を濾過することができ、また肺ではより効率的に酸素と二酸化炭素の交換を行うことができるからです。

腎臓において尿を濾過するための部分は「糸球体」といいます。

小型血管では糸球体腎炎と言って、この糸球体の細かい血管に炎症が起きます。それにより、尿検査で血尿やタンパク尿を認めます。糸球体腎炎では血尿がより特徴的です。(ここでいう血尿とは、「顕微鏡的血尿」といって肉眼ではわからない血尿になります。)

〈 糸球体の模式図 〉

また、肺の毛細血管に炎症が起きることで、間質性肺炎が起きます。(それとは違って、例えば中型血管炎の結節性動脈炎では、肺の結節影などを認めます)

また、皮膚病変では小型血管炎の場合、紫斑が特徴的です。

紫斑は、皮膚の毛細血管の炎症によって出血がおき、赤血球が血管から漏れ出ることで、皮膚に暗紫褐色の斑を認めます。

皮膚には、小型の血管とともに末梢神経が伴走しているため、末梢神経障害も認めます。

これにより四肢の痺れを認めるのが特徴的です。

いかがだったでしょうか。

以上のように、血管サイズのレベルの炎症を頭に思い浮かべてみると、なぜ小型血管炎(例えばANCA関連血管炎)では、糸球体腎炎や間質性肺炎が起きるのかといったことが、より鮮明にイメージできてくると思います。

長くなりましたが今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。参考になりましたら、高評価、コメントを頂けましたら嬉しいです?またTwitterのフォローもお願いします?