〜 The Point 〜
- IgA血管炎は小型血管炎の一つです。
- 症状は触知できる紫斑(palpable purpura)、腹痛、関節痛が特徴的である。
- 診断には生検が大切で、特に皮膚生検は可能な限り行われる。
こんにちは、今回はIgA血管炎について取り上げていきたいと思います!
以前は、「Henoch-Schonlein(ヘノッホ-シェーンライン)紫斑病」と言われていましたが、現在は「IgA血管炎」と呼ばれています。
IgA血管炎ってどんな病気?
血管炎でさえよくイメージできないのに、しかもIgAって何ってなりますよね?大丈夫です、イメージしやすいように丁寧に解説していきたいと思います。
IgA血管炎は「小型血管炎」の一つで、動脈でも小型の動脈に炎症が起きる病気です。
IgA血管炎の好発年齢は、3〜10歳の特に男児に多いといわれていますが、成人の方も発症します。小児の場合は、小児科が担当する場合が多いですが、成人の場合は、膠原病科や皮膚科といった免疫を担当する科が担当することが多いです。
また、発症前に感冒などの上気道の先行感染があると言われており、頻度は60%程度で認めると言われております。
症状は何がありますか?
症状は小型血管の炎症に伴う症状を認め、主に皮膚、腹部、関節、腎臓に症状を認めます。
- 皮膚‥触知できる紫斑(palpable purpura)
- 腹部‥腹痛、悪心、血便、下痢など
- 関節‥膝・足首などの大関節痛
- 腎‥血尿、タンパク尿
皮膚症状
皮膚症状はヘノッホ-シェーンライン紫斑病と言われていたように、「皮膚の紫斑」が特徴的です。
また、IgA血管炎の紫斑は、『触知できる』のが特徴で、触知できる紫斑のことを「palpable purpura(パルパブル プルプーラ)」と医学的に言ったりもします。
触知できる紫斑は、下肢を中心に認め、症状が強いと上肢、腹部や背部などにも認めることがあります。
治療をしても、すぐにスッキリすることは少なく、半年〜1年くらいかけてゆっくりと消退していきます。
赤いもこっと盛り上がったのが、触知できる紫斑である
腹部症状
腹部症状もIgA血管炎には特徴的な症状の一つで、腹痛は60%程度の方で認めます。その他、悪心、血便、下痢などの症状を認めすが、重症となることもあり、「急性腹症、イレウス(腸重積)や消化管穿孔」を認める場合もあるので注意が必要です。
関節症状
IgA血管炎は、関節症状も特徴的で、およそ80%の方が関節症状を認めると言われております。好発部位は、膝・足関節などの大関節に多いです。
通常は、治療により徐々に改善することが多く、関節リウマチのように骨関節びらんを伴うことはありません。
腎症状
腎臓には、小型血管や毛細血管が張り巡らされているため、これによって血管の表面積が大きくなり、効率よく血液から尿を作ることができます。
IgA血管炎では、腎臓の小型血管や毛細血管に炎症が起き、「糸球体腎炎」を起こします。
糸球体とは、腎臓の尿を作る最小単位で、一つ一つの糸球体で血液が濾過され尿が作られています。
糸球体腎炎が起きると、顕微鏡的血尿やタンパク尿を認めます。
IgA血管炎の糸球体腎炎は、約50%程度で認めると言われております。血尿やタンパク尿を認めますが、多くは無症状で、全身倦怠感や微熱などの症状を伴うこともあります。
高度のタンパク尿呈したネフローゼ症候群や急速に腎炎が悪化する急速腎炎症候群の頻度は少ないです。
また、IgA腎症という疾患概念があります。両者は、厳密には別の病気とされておりますが、その違いについてはまだわかっていない点も多いです。腎臓以外にも病変がある場合、IgA血管炎となります。(また、IgA腎症は、国の指定難病に登録されていますが、IgA血管炎は登録されていませんので、ご注意ください。)
検査は何をしますか?
IgA血管炎の検査のポイントは、『血液検査、尿検査、画像検査、生検』が大切です。その中でも生検はIgA血管炎のために最も重要な検査となります。
血液検査はどこに注目しますか?
血液検査で見るべきポイントは、『炎症反応の上昇、貧血、IgA、消化管病変がある場合は凝固因子の第ⅩⅢ因子』を確認します。
炎症反応は、主にWBC(白血球)、CRP、ESR 1hr(赤沈 1時間値)の上昇で評価します。
貧血は、Hb(ヘモグロビン)で確認しますHb < 10となると、中等度以上の貧血となります。IgA血管炎の場合は、血管炎自体の影響か、血便による影響かに大きく分かれます。
血液中のIgAは、IgA血管炎の半数程度で上昇すると言われていますが、上昇しない場合もままあります。
消化管病変がある場合は、凝固因子である『第ⅩⅢ因子』が病勢を反映していると言われています。活動性が強いと、第ⅩⅢ因子は低下します。
尿検査はどこに注目しますか?
尿検査で見るべきポイントは、『顕微鏡的血尿、タンパク尿』です(顕微鏡的血尿とは、尿検査でわかるレベルの血尿のことです。見た瞬間赤い尿は肉眼的血尿と言います。)
IgA血管炎は、糸球体腎炎を認めるため、顕微鏡的血尿やタンパク尿を認めた場合は糸球体腎炎の可能性が疑われます。
画検査は何を見ますか?
画像検査は基本的にCTや胸部レントゲンをチェックします。関節痛があれば、関節レントゲンも撮る場合もあります。
CTでは、特に必要がない限り単純CTで済むことも多いです。肺や腎臓などの臓器をチェックして器質的な臓器病変がないかをチェックします。IgA血管炎では、肺病変を認めることは基本ありませんが、ごく稀に肺胞出血などの重症肺病変を認める場合もあります。
生検は何を見ますか?
生検は、IgA血管炎を診断するために最も重要な検査で『皮膚生検と腎生検』が主に行われます。
皮膚生検では「血管炎の所見と血管壁にIgAの沈着があるか」を確認します。
また、血尿やタンパク尿を認めた場合は、IgA腎症の合併を疑い、腎生検を行うこともあります。ただし、腎生検は皮膚生検よりもリスクが高く、皮膚生検で診断がついている場合は、無理にやらないこともあります。腎生検は、IgA腎症でも認めるような、メサンギウム器質の増加や、IgAやC3のメサンギウム領域への沈着の有無を見ます(少し専門的な話なので飛ばしても全然構いません)。
IgA血管炎を診断する
IgA血管炎の診断は、主にEULAR/PRINTO/PRESの分類基準や米国リウマチ学会の分類基準が用いられます。今回は、EULAR/PRINTO/PRESの分類基準を参考にします。
1. | (血小板減少性紫斑病によらない)下肢優位の触知可能な紫斑もしくは点状出血 |
2. | 以下のいずれかひとつ以上を満たす |
腹痛:急性に発症する腹部全体の疝痛(腸重積・消化管出血があっても良い) | |
病理所見:病理生検にてIgA沈着を伴う白血球破砕性血管炎もしくは増殖性糸球体腎炎 | |
関節炎/関節痛:急性に発症し関節可動域に制限をきたす関節腫脹もしくは関節痛を伴う関節炎、または急性に発症し関節腫脹や関節可動域の制限を伴わない関節痛 | |
腎障害:朝の随時尿で0.3g/日以上もしくは尿中アルブミン/クレアチニン比で30mmol/mg以上の蛋白尿、または赤血球5個/HPF以上の血尿・尿沈渣で赤血球円柱もしくは試験紙法で2+以上の血尿 | |
診断 | 上記のうち、2項目を認めればIgA血管炎と診断(分類)できます。 |
分類基準をみると、必ずしも生検をしないでも診断可能ですが、可能な限り生検をして、血管炎の所見を確認することが望ましいです。
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。参考になりましたら、高評価、コメントを頂けましたら嬉しいです?またTwitterのフォローもお願いします?
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※個人個人で症状の違いがあるため、詳細な治療などにつきましては直接医療機関へお問い合わせください。