血管炎

多発血管炎性肉芽腫症の治療について【GPA】


〜 The Point 〜

  • ステロイドにエンドキサン®︎(シクロフォスファミド)を併用することで、治療成績は飛躍的に向上した。
  • リツキサン®︎(リツキシマブ)は、難治・再発例にステロイドと併用する治療が推奨されている。
  • 今後は、ステロイド半量+リツキサン®︎(リツキシマブ)を用いた治療も増えてくると思われる(最重症例は除く)。

こんにちは、今回は多発血管炎性肉芽腫症(GPA)の治療について取り上げていきたいと思います!ではさっそくいきたいと思います!

多発血管炎性肉芽腫症の治療について

多発血管炎性肉芽腫症(GPA)の治療は、ステロイドが基本になりますが、ステロイドのみでは極めて予後不良な疾患でしたが、エンドキサン®︎(シクロフォスファミド)を併用することで治療成績は飛躍的に向上しました。

重症例

プレドニン®︎(プレドニゾロン)の錠剤

GPAの重症例には、肺腎型、全身血管炎型(3臓器以上の障害がある)や急性進行性糸球体腎炎(RPGN)型があります。

これらの重症例に対しては、ステロイドパルスとエンドキサン®︎(シクロフォスファミド)を併用します。

ステロイドパルスとは、通常のステロイドよりも何十倍もの量を3日間点滴する治療のことで、例えるなら重症で燃え盛っている炎症を大量の水で鎮火させる治療法です。具体的には、メチルプレドニゾロン(ソルメドロール®︎)1000 mgを3日間点滴します。

その後は、プレドニン®︎(プレドニゾロン)1 mg/kgの量でステロイド後療法を行っていきます。60 kgの場合は、プレドニン®︎ 60 mg/日となります。

プレドニン®︎(プレドニゾロン)は、初期量を4 週間程度継続し、その後漸減していきます。経過によっては、初期量の期間は短くなる場合もあります。

エンドキサン®︎(シクロフォスファミド)

エンドキサン®︎は、副作用の観点から内服薬ではなく、点滴で使用されることが多いです。

用法は、通常2〜4週毎に1回 500 〜 750 mgの量を計3 ~ 6回行います。

副作用が強く出た場合は、途中で中止する場合もあります。

エンドキサン®︎(シクロフォスファミド)の点滴

軽症例

腎臓限局型や肺限局型、軽症全身型などの場合は、中等量ステロイド(プレドニン®︎ 0.3 ~ 0.6 mg/kg)程度で開始されます。エンドキサン®︎(シクロフォスファミド)は適宜併用されます。

難治・再発の場合はどういった治療がありますか?

リツキサン®︎(リツキシマブ)の点滴

多発血管炎性肉芽腫症(GPA)の難治・再発の場合の治療法については、2014年から「リツキサン®︎(リツキシマブ)」の併用療法が可能となりました。

リツキサン®︎(リツキシマブ)は、RITUXIVAS試験RAVE試験によってその有効性が報告されました。これにより、リツキサン®︎は、既存のステロイドとエンドキサン®︎の併用による寛解導入と同等の効果を認め、また再燃した場合についてもリツキサン®︎は有効であったことが報告されました。

リツキサン®︎(リツキシマブ)の用法は、週1回毎に計4回投与し、4週間で1クールとなります。1回の投与量は 375 mg/m2として計算します。その後は、半年毎に1回維持量としてリツキサン®︎(リツキシマブ)を投与します。

リツキサン®︎は、白血球のうちリンパ球のB細胞を抑える免疫抑制薬です。B細胞は抗体産生に関与するリンパ球であり、抗好中球細胞質抗体であるANCAの産生を、リツキサン®︎によって直接強力にかつ効率的に抑制することができます。

血漿交換について

2020年にNEJMにて掲載されたPEXIVAS試験では、血漿交換療法によって、重度のANCA関連血管炎における死亡率や末期腎不全を改善させなかったと報告されました。

このため今後血漿交換療法は、とても高額な治療であるため、施行される機会はかなり限られてくると思われます。

参考) Michael, et al.N Engl J Med. 2020 13;382(7):622-631.

維持療法について

ステロイドを出来るだけ早く減量し、かつ再燃を回避するために多発血管炎性肉芽腫症の維持療法には、イムラン®︎ / アザニン®︎(アザチオプリン)やメトトレキサートが併用されます。

ただし、メトトレキサートは間質性肺炎や肺病変がある場合は原則使用は控えます。また、メトトレキサートは国内では保険適応になっていないことも注意が必要です。




ステロイド半量 + リツキサン®︎(リツキシマブ)でも効果あり?

2021年6月にJAMAに掲載されたLoVAS試験という日本からの報告では、リツキサン®︎(リツキシマブ)に従来の高用量ステロイドとその半量のステロイドを併用した場合において、半量のステロイドでも治療有効性は変わらないという結果が報告されました。(ただし、肺胞出血や重症糸球体腎炎の最重症例は除きます)

これにより、従来なら60 kgの方だと、プレドニン®︎(プレドニゾロン)60 mg/日で治療開始していたものが、その半量の30 mg/日でも効果は変わらず、さらにステロイドの早期減量が可能となり、ステロイドの副作用も軽減することができました。

今後、ステロイドの副作用を減らすことができるということは、患者さんにとってとても大きなメリットとなると思われます。

参考) Shunsuke Furuta, et al. JAMA 2021;325(21):2178-2187.

疾患活動性はどこを見ればいいですか?

ANCA陽性のANCA関連血管炎では、多発血管炎性肉芽腫症も含めて、PR3-ANCAやMPO-ANCAの値が活動性を反映しているため、疾患活動性マーカーとして有用です。

また、CRPやESR 1hr(赤沈1時間値)といった炎症反応も、疾患活動性の参考とします。

ただし、治療強化については、ANCAが上がり始めているからといって免疫抑制薬を増量するきっかけになるわけではなく、その他の肺や腎臓などの症状を見ながら、総合的に判断されます。

今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。参考になりましたら、高評価、コメントを頂けましたら嬉しいです?またTwitterのフォローもお願いします?

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