〜 The Point 〜
- EGPAは、小型血管炎に分類され、さらにANCA関連血管炎の一つである。
- EGPAを発症する人は、喘息やアレルギー性鼻炎などアレルギー疾患を持つ人に発症する。
- 特徴的な症状は、下肢のしびれや紫斑がある。
- 血液中で好酸球の著明な上昇を認める。
こんにちは、今回は好酸球性多発血管炎性肉芽腫症について取り上げていきたいと思います!好酸球性多発血管炎性肉芽腫症は、通常「EGPA」と略して呼ばれることが多いです。今回も、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症と言っていると口が回らなくなってしまうので、EGPAと表記していきたいと思います。
では、早速初めていきましょう!
EGPA:Eosinophilic Granulomatosis with Polyangiitis
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症ってどんな病気?
もしEGPAの方で主治医から「好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の可能性があります」と言わたら、「へっ、何その病気?」ってなりますよね。そもそも長さからして、病名長さランキングで上位に入りそうな位長くてしつこいですよね。
ですが、この病名にEGPAがどんな病気かということのヒントがあります。
つまり、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症とは、
- 好酸球性 → 好酸球が原因で
- 多発血管炎性 → 身体中に多発の血管炎が起きて
- 肉芽腫 → 肉芽腫を形成する病気
という意味になります。なんとなくイメージできてきたでしょうか?
うーん、やっぱり少し難しいですよね。もう少し、説明していきましょう。
EGPAは、血管炎であり、その中でも『ANCA関連血管炎』の一つになります。
また、ANCA関連血管炎は、血管炎のサイズでいうと、「小型血管炎」に分類されます。
ANCA関連血管炎は、他に多発血管炎性肉芽腫症(GPA)と顕微鏡的多発血管炎(MPA)があり、3種類の小型血管炎があります。
ただし、ANCA関連血管炎といっても、血液検査での『ANCA』の陽性率は、30〜50%と言われており、ANCA関連血管炎の中でも、少し特殊で、ANCA陰性でもEGPAと診断されます。
(つまり、ANCA陰性でもANCA関連血管炎ではないとは言えません。ややこしいですね。)
とても重要なこと
EGPAで、とてもとても重要なことに、
『EGPAを発症する人は、喘息やアレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患を持っている』
ということがあります。
また、気管支喘息は成人で発症する方が多いとも言われています。そして、その後、数年してEGPAを発症すると言われます。
また、逆に喘息などのアレルギー疾患がない方は、通常発症しない病気となります。
好酸球が血管炎を起こす
喘息などのアレルギー疾患は、気道粘膜に好酸球性の炎症が起きることで症状が起きます。
この好酸球が血液中に異常に増えることで、全身に好酸球性の血管炎を起こすことが、EGPAの本体です。
以上を、まとめると、
EGPA:好酸球性多発血管炎性肉芽腫症は、小型血管炎に分類され、ANCA関連血管の一つで、喘息などのアレルギー疾患を持つ人が、好酸球性の血管炎を全身に認める病気ということになります。
これで、なんとなく理解できてきたでしょうか。。。
EGPAの症状は?
EGPAの症状は、小型血管炎の症状がメインとなります。
症状を下の表にまとめました。
末梢神経障害 | しびれ |
皮膚症状 | 紫斑、紅斑、潰瘍、結節性病変など |
呼吸器症状 | 好酸球性肺炎、肺胞出血、間質性肺炎 |
腎症状 | 急速進行性糸球体腎炎 |
消化器症状 | 消化管潰瘍、消化管出血、腹膜炎、穿孔など |
心血管症状 | 心不全、心膜炎、心筋炎など |
中枢神経症状 | 脳出血、脳梗塞 |
末梢神経障害
特に多い症状が末梢神経障害による『しびれ』の症状です。
始めは下肢から始まり、その後上肢にも広がるといった形で認めます。
末梢神経障害は、EGPAの90%以上で認めると言われ、ほぼ必発の症状です。
皮膚症状
他に特徴的な症状に、皮膚の『紫斑』があります。特に、下肢に認めることが多く、この紫斑から発症することも多いです。
呼吸器、腎症状
また、肺や腎臓には小型血管〜毛細血管が豊富であり、ここに血管炎が生じることで、肺や腎臓の症状を認めることも重要です。
肺では、好酸球性肺炎、間質性肺炎を認め、まれに肺胞出血と呼ばれる重症の肺病病変も認めることがあります。
その他の症状
腎臓では、数週間から数ヶ月のペースで、急速に腎障害が起きる『急速進行性糸球体腎炎(RPGN)』を認めます。急速進行性糸球体腎炎は、著明な血尿が特徴的です。また血尿ほどではないですが、タンパク尿も認めます。
また、消化管に胃潰瘍や十二指腸潰瘍を認めたり、心臓に好酸球性の心筋炎を認めたり、血管炎により脳梗塞を認めることもあります。
検査について
EGPAで大切な検査は、血液検査、尿検査、画像検査、皮膚生検になります。
血液検査
血液検査で見るべきポイントは、「好酸球、炎症、貧血、腎機能、ANCA」になります。
好酸球
好酸球は、WBC(白血球)の白血球分画というところをみて、『Eosino』に注目します。Eosinoは好酸球のことで、WBCのうち好酸球はどれくらいの割合(%)でいるのかを表しています。
EGPAでは、この好酸球の割合が増加するのが特徴です。例えば、Eos 40と記載されていたら、WBCのうち好酸球が40%もいるということになります。Eosinoの正常範囲は、0~5%です。なので、40%となるとかなり上昇しています。
炎症
炎症は、WBC(白血球)上昇、CRP上昇、ESR(赤沈)上昇でみます。ESRはESR 1hr(1時間値)に注目し、通常 15 mm以上で上昇していると判断します。
貧血
貧血は、Hb(ヘモグロビン)で確認します。EGPAの貧血の原因は、主に血管炎による慢性炎症の影響と消化管出血があった場合の影響のいずれかを反映します。
消化管出血を認めず、その他の貧血の影響(鉄欠乏性貧血)がなければ、血管炎の炎症自体の貧血がこれくらいあるのだなと判断できます。
腎機能
腎機能は、Cre(クレアチニン)に注目します。以前と比べて、Creが上昇していたら、急速に腎障害が出ているな、つまり急速進行性糸球体腎炎の可能性があるなと推測します。
ANCA
ANCAは、「抗好中球細胞質抗体」の略称で、MPO-ANCA、PR3-ANCAがあります。EGPAでは、主にMPO-ANCAが上昇することが多いです。ただし、半分程度はANCA陰性となるので注意が必要です。
尿検査
EGPAで起きる急速進行性糸球体腎炎の評価のために、尿検査は大切で、主に血尿(潜血)、タンパク尿を確認します。急速進行性糸球体腎炎は、血尿が強いのが特徴で、タンパク尿より血尿が派手に出ているなという形で評価をします。
画像検査
画像検査は、胸部レントゲンや全身CTを行います。
画像検査によって、肺に好酸球性肺炎や間質性肺炎などがあるかを確認します。
皮膚生検
生検では、皮膚生検が特に重要で、紫斑を認めた箇所を皮膚生検します。
病理検査によって、血管炎の所見があるかを確認します。
また、紫斑がない場合は腎生検を行う時もあります。
EGPAの診断について
EGPAの診断は、厚生労働省の診断基準を参考にしていきたいと思います。
まず、主要臨床所見に注目し、①〜③を認めるかを確認します。
次に、臨床経過の特徴を参考にし①、②が③の血管炎症状に先行しているかを確認します。
①、②、③を全て満たし、臨床経過の特徴を満たした場合は、EGPAと診断します。
また、①、②、③のそれぞれ1つ以上を満たし、生検の組織所見にて1項目以上認めた場合もEGPAと診断されます。
[主要項目] |
主要臨床所見 |
①気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎 |
②好酸球増加 |
③血管炎による症状;発熱(38℃以上、2週間以上)、体重減少(6カ月以内に6kg以上)、多発性単神経炎、消化管出血、紫斑、多関節痛(炎)、筋肉痛(筋力低下) |
臨床経過の特徴 |
主要所見①、②が先行し、③が発症する。 |
主要組織所見 |
(1)周囲組織に著明な好酸球浸潤を伴う細小血管の肉芽腫性またはフィブリノイド壊死性血管炎の存在 |
(2)血管外肉芽腫の存在 |
[判定] |
①確実 |
(a)1.の主要臨床所見のうち、気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎、好酸球増加および血管炎による症状のそれぞれ1つ以上を示し、3.の主要組織所見の1項目を満たす場合 |
(b)1.の主要臨床項目3項目を満たし、2.の臨床経過の特徴を示した場合 |
②疑い |
(a)1.の主要臨床所見1項目および3.の主要組織所見の1項目を満たす場合 |
(b)1.の主要臨床所見を3項目満たすが、2.の臨床経過の特徴を示さない場合 |
厚生労働省の診断基準(1998年)
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。参考になりましたら、高評価、コメントを頂けましたら嬉しいです?またTwitterのフォローもお願いします?
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