こんにちは、今回は『 メトジェクト®︎皮下注(メトトレキサート)の特徴 』について取り上げていきたいと思います。
メトトレキサートの皮下注製剤が発売されたと聞き、気になっていました。
経口薬とはどういった違いがあるのでしょうか気になります。
- RA:関節リウマチ
- MTX:メトトレキサート
メトジェクト®︎皮下注(メトトレキサート)の特徴
今回は、2022年11月16日に発売されたばかりのメトジェクト®︎皮下注についてご紹介します(製造販売元:日本メダック、販売元:エーザイ)。
メトジェクト®︎は週に1回の『 皮下注射製剤 』というのが特徴です。
本来なら週に1回の内服で済むメトトレキサートですが、どういった場合にメリットとなるのか詳しく見ていきたいと思います。
適応疾患は?
メトジェクト®︎皮下注(メトトレキサート)の適応疾患は以下のようになります。
- 関節リウマチ
用法用量は?
メトジェクト®︎は、『 皮下注射製剤 』で、以下のように4つの用量があります。
薬価は、以下のようになります。
ジェネリックのある経口薬と比べると、薬価は高くなってしまうのですね。
メトトレキサートの経口薬からメトジェクト®︎に変更する場合は、用量はどうしたらいいですか?
今メトトレキサートを10mg/週に使用しているのですが、メトジェクト®︎に変更した場合は、何mgの皮下注射製剤に変更すればいいのですか?
MTXを経口薬から皮下注製剤に変更した場合は、以下のように用量を選択することが推奨されています。
副作用は?
副作用は、基本的にはメトトレキサートの経口薬と同じですが、メトジェクト®︎の方が頻度が低いと示唆されているものがあります。
それは、
悪心といった消化器症状(腹部不快感、上腹部痛、嘔吐)です。
特に悪心は、
メトジェクト®︎と経口MTXとの国内第Ⅲ相試験(パート1)において、
メトジェクト®︎群とMTX経口群と比較すると、12週時点で、
メトジェクト®︎群は 3.8%(2/52)、MTX経口群は 12%(6/50)と、
メトジェクト®︎群の方が少ない傾向があることが示唆されています。
経口薬で悪心がある人などには、特に使いやすそうですね。
添付文書上の副作用の頻度
〈 添付文書上の副作用の頻度 〉
5%以上
- 白血球減少
- 肝機能障害(ALT、AST、ALPの上昇など)
- 悪心
- 口内炎
0.1 ~ 5%未満
- 好中球減少、貧血
- Cre(クレアチニン)上昇
- 嘔吐、舌炎、腹部不快感、口腔粘膜ビラン、咽頭炎、上咽頭炎、食道カンジダ症、口腔ヘルペス
- 紅斑、注射部位掻痒感、注射部位紅斑
- めまい
- 気管支炎、副鼻腔炎
- 倦怠感、疲労、足部白癬など
重大な副作用
- 骨髄抑制(5%以上)
- 感染症(0.1~5%未満)
- 結核(頻度不明)
- 間質性肺炎(頻度不明)など
メトジェクト®︎皮下注の有効性について
続いて、メトジェクト®︎の有効性のエビデンスについてです。
メトジェクトの有効性を検証するのに、国内第Ⅲ試験が行われました。
これは、被験者をメトジェクト®︎皮下注(+プラセボ経口薬)群とMTX経口(+プラセボ皮下注薬)群の2群に振り分けた二重盲検ランダム化比較試験です(医師も患者もメトジェクトを打っているかどうかわからない)。
国内第Ⅲ相試験は「パート1」と「パート2」に分けられ、
パート1において主に有効性が評価(二重盲検ランダム化比較試験)され、
主要評価項目は『投与12週後のACR 20%改善率』と設定されました。
結果は、
メトジェクト®︎群とMTX経口群の12週時のACR20%改善率、両群間で有意差は認められず(p = 0.53)、メトジェクトの有効性は、MTX経口薬に劣らない結果でした(非劣性)。
また、4週、8週でのACR20%改善率においても、いずれの時点でも両群間で有意差は認めず、メトジェクトの有効性は、MTX経口薬に劣らない結果となっています。
皮下注射でも、経口薬と同じ有効性だったのですね!
メトジェクト®︎(メトトレキサート)の作用機序について
メトトレキサートは『 酵素 dihydrofolate reductase 』の働きを阻害し、チミジル酸合成およびプリン合成系を阻害して抗免疫・抗炎症作用を発揮します。
なぜメトトレキサートは葉酸補充が必要なのですか?
メトトレキサートは葉酸に類似しています。
これによって、メトトレキサートは葉酸拮抗作用をもち、葉酸の働きを阻害します。
- 葉酸はビタミンB群の水溶性ビタミンである。
- ビタミンB12とともに赤血球を作る(『造血のビタミン』とも呼ばれる)
- さらに、DNAやRNAなどの核酸やタンパク質の合成を促進し、細胞の生産や再生を助けています。
こういった葉酸の働きが、メトトレキサートによって阻害されることによって大球性貧血といった副作用を認めます。
これを予防するために、メトトレキサートの経口薬、皮下注製剤のいずれかを使用する場合、葉酸製剤である『 フォリアミン®︎ 』をメトトレキサート内服の翌日〜翌々日に内服することが推奨されています。
まとめ:どういった場合にメトジェクト®︎皮下注は使いやすい?
最後に、まとめとしてどういった患者さんにメトジェクト®︎皮下注が使いやすいのかを考えてみたいと思います。
皮下注射製剤の傾向として、悪心といった消化器症状の発現頻度が低いことが示唆され、
MTX経口薬でどうしても悪心などが辛いとった方には、皮下注射に変更することでメトトレキサートを継続できる可能性があります。
他に、肝障害が経口薬よりも低い可能性があるとも言われており、MTX経口薬で肝障害が強い場合にも選択肢として上がるかもしれません。
ただし、経口薬よりは薬価が高く、週1回の皮下注射が嫌だという方もいらっしゃるため、デメリットもあります。
実臨床では、以上のメリット、デメリットを考慮しながら、患者さんに最適の治療薬を選択することとなるかと思います。
〈 メトジェクト®︎皮下注射を選択しやすい患者さん〉
- MTX経口薬で悪心といった消化器症状が強い場合
- (MTX経口薬で肝障害が強い場合)
〈 デメリット 〉
- MTXと比べて薬価が高い(参考:MTX10mg/週の1月の3割負担 ジェネリック経口薬 ➡︎ 410円/月 メトジェクト®︎ ➡︎ 2640円/月)
- 皮下注射による痛みを伴う
〈参考〉
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、よろしくお願いします?
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