こんにちは、今回は「 SLE(全身性エリテマトーデス)に対するアニフロルマブ(サフネロー®︎)の臨床試験であるTULIP-2試験 」について取り上げていきたいと思います。
サフネロー®︎は、SLEの私も担当の先生から、使うかどうか紹介されました。なんで先生は使うのを検討したのか知りたいです。
全身性エリテマトーデス(SLE)に対するアニフロルマブ(サフネロー®︎)の臨床試験
アニフロルマブは、2021年11月に『 サフネロー®︎ 』という名前で、SLEの新しい治療薬として発売されました。
アニフロルマブは、1型IFN(インターフェロン)α受容体のサブユニット1(IFNAR1)に対するモノクローナル抗体製剤です。
今回、サフネロー®︎の開発の根拠となった、『 TULIP-2試験1) 』を見ていきたいと思います。
実は、TULIP-2試験の前に、TULIP-1試験が行われましたが、主要評価項目(SRI4:SLE レスポンダーインデックス4)に対して有意な効果を示しませんでした。
そこで、TULIP−2試験では、TULIP-1の副次評価項目を主要評価項目に変更して、再度試験をやり直しています( SRI4 ➡︎ BICLAに変更 )。
では、早速内容をみてみましょう。
方法
〈 試験の概要 〉
- 試験デザイン:第Ⅲ相二重盲検ランダム化比較試験
- 対象:中等症〜重症のSLE(全身性エリテマトーデス)患者(18歳〜70歳)が対象
- 中等症〜重症の基準は以下の3項目を満たす。
- SLEの疾患活動性評価するSLEDAI-2Kが6点以上(発熱、ループス関連頭痛、脳の有機症候群による点を除く)、かつ、臨床SLEDAI-2K(検査結果なしのスコア)が4点以上
- 1つ以上の臓器で重度の疾患活動性を有する、もしくは、2つ以上の臓器で中等度の疾患活動性を有する(BILAG2004指数により、それぞれA項目以上またはB項目以上の臓器領域スコアを示す)
- PGA(医師による疾患活動性の評価)が1点以上
- 割り付け(365人):アニフロルマブ(サフネロー®︎) 300mg/4w 群 (181人)とプラセボ群(184人)に1:1に割り付けられた。
- 最終的に、アニフロルマブ群 180人、プラセボ群 182人が mITT解析された。
- 除外患者:活動性の重症ループス腎炎または神経精神ループス患者
- 主要評価項目
- 52週目のBICLA(SLEの活動性指数)の奏功
- 副次評価項目
- ベースラインでインターフェロン遺伝子シグネチャーが高い患者における BICLAの奏功
- グルココルチコイド(ステロイド)投与量の減少
- 皮膚粘膜症状の50%以上の改善
- 腫脹および圧痛関節痛の50%以上の改善
- 再燃率(フレア)
BICLA(SLEの活動性指数)の奏功はどう定義した?
BICLAの奏功は、以下の ❶ 〜 ❸ を満たすことと定義されました。
- 疾患活動性の低下
- ベースラインで BILAG Aの場合 ➡︎ BILAG B もしくは C へ改善
- ベースラインで BILAG Bの場合 ➡︎ BILAG C もしくは D へ改善
- (BILAG … イギリスで提唱された活動性評価項目)
- 臓器障害の悪化がない
- 新規の1つ以上のBILAG A がない、もしくは 新規の2つ以上のBILAG B がない
- 疾患活動性の悪化がない
- SLEDAI-2Kの悪化がない、もしくは PGA 0.3点以上の悪化がない
- (SLEDAI-2K … SLEの疾患活動性の指標、 PGA … 医師による疾患活動性の評価)
- スクリーニング時に、抗核抗体 80 倍以上 or 抗ds-DNA抗体 or 抗Sm抗体が陽性。
- 治療
- ベースライン時に 80.7 %がステロイド(プレドニゾロン等)を使用しており、47 %がプレドニゾロン 10 mg/日以上を服用していた。
- 48.1%が免疫抑制薬を服用していた。
- 症状の特徴:皮膚粘膜症状、筋骨格症状、免疫異常が多かった。
結果
それでは、結果はどうだったのでしょうか。
主要評価項目:Primary End Point
❶ アニフロルマブ(サフネロー®︎)は、SLEの疾患活動性の低下効果を示した
アニフロルマブ(サフネロー®︎)は、SLEの疾患活動性を低下効果を示しました。
具体的には、
52週目のBICLAの奏功は、プラセボ群 31.5 %(57/182)に比べて、アニフロルマブ群 47.8%(86/180)で、有意に高かった。
(調整リスク差:16.3%、95%CI:6.3~26.3、p = 0.001)
〈52週目〉 | アニフロルマブ群 | プラセボ群 |
BICLAの奏功 | 47.8%(86/180) | 31.5 %(57/182) |
調整リスク差:16.3%(95%CI:6.3~26.3) | p = 0.001 |
副次評価項目:Secondary End Point
❷ アニフロルマブ(サフネロー®︎)は、1型IFN(インターフェロン)遺伝子シグネチャーが高い患者においても有効性を示した
1型IFN(インターフェロン)遺伝子シグネチャーが高いサブ集団(362人中301人、全体の83.1%)において、52週目にBICLAの奏功が得られた患者の割合は、プラセボ群 30.7%(46/151)と比べて、アニフロルマブ群 48.0%(72/150)の方が有意に高かった。
〈52週目〉 | アニフロルマブ群 | プラセボ群 |
高1型IFN遺伝子シグネチャーのサブ集団におけるBICLAの奏功 | 48.0 %(72/150) | 30.7 %(46/151) |
調整リスク差:17.3(95%CI:6.5~28.2) | p = 0.002 |
❸ ステロイド減量効果:プレドニゾロン 10 mg/日以上の患者集団において、ステロイドの減量効果を示した
ベースライン時に、プレドニゾロン(ステロイド) 10 mg/日以上の投与を受けていた患者において、7.5 mg/日以下へ減量した患者の割合は、プラセボ群 30.2%(25/83)とに比べて、アニフロルマブ群 51.5%(45/87)の方が、有意に高かった。
調整リスク差:21.2%、95%CI:6.8~35.7、P=0.01
[ベースラインで、PSL 10 mg以上使用していたSLE患者は、全体の47 %(170/362)]
〈52週目〉 | アニフロルマブ群 | プラセボ群 |
PSL ≧10mg ➡︎ ≦7.5mg以下に減量できた患者の割合 | 51.5 %(45/87) | 30.2 %(25/83) |
調整リスク差:21.2(95%CI:6.8~35.7) | p = 0.01 |
❹ 皮膚症状にも有効性を示した
中等度以上の皮膚症状(CLASI≧10)を有するSLE患者において、12週目のCLASIスコアが 50 %以上改善した患者の割合は、プラセボ群 25.0%(10/40)と比べて、アニフロルマブ群 49.0%(24/49)の方が有意に高かった。
調整リスク差:24.0 %、95%CI:4.3~43.6、P=0.04
CLASIスコア :SLEの皮膚粘膜症状の活動性スコア。急性期スコアと慢性期スコアを分けて評価できるのが特徴。
〈12週目〉 | アニフロルマブ群 | プラセボ群 |
CLASIが50%以上減少した患者の割合 | 49 %(24/49) | 25 %(10/40) |
調整リスク差:24 %(95%CI:4.3~43.6) | p = 0.04 |
有効性が示せなかった項目
- 関節症状:圧痛腫脹関節の50%以上の改善
- アニフロルマブ群 42.2 %(30/71) vs プラセボ群 37.5%(34/90)
- 調整リスク差:4.7%、95%CI:-10.6~20.0、P=0.55
- 再燃率(フレア)
- アニフロルマブ群 0.43 vs プラセボ群 0.64
- 率比 0.67、95%CI:0.48~0.94、p =0.08
➡︎ 再燃率は、有意差はついていませんが、アニフロルマブ群で低い傾向がありました。
その他
抗薬物抗体について
ベースライン後のいずれかの時点で抗薬物抗体が陽性であった患者は、170例中1例(0.6%)でした。
有害事象について
アニフロルマブ群 (n=180) | プラセボ群 (n=182) | |
有害事象の総数 | 159(88.3 %) | 153(84.1 %) |
➡︎ 総数は、アニフロルマブ群とプラセボ群で、大きな変わりなし。 | ||
重症な有害事象 | 15(8.3 %) | 31(17 %) |
➡︎ アニフロルマブ群で、重症な有害事象の増加はなかった | ||
帯状疱疹 | 7.2 % | 1.1 % |
非日和見感染 | 2.8 % | 5.5 % |
上気道感染 | 21.7 % | 9.9 % |
気管支炎 | 12.2 % | 3.8 % |
➡︎ アニフロルマブは、特に帯状疱疹、上気道感染、気管支炎の頻度がプラセボと比べて高かった。
まとめ
- アニフロルマブは、プラセボと比較して、SLEの疾患活動性(BICLAの奏功)を有意に改善させた。
- 高1型IFN(インターフェロン)遺伝子シグネチャーのSLE患者において、特に有効である可能性がある。
- プレドニゾロン(ステロイド) 10 mg以上の患者において、7.5 mg 以下へのステロイド減量効果を示した。
- 中等度〜重度の皮膚症状にも有効性を示した。
- 関節症状や再燃率には有効性を示さなかった。(ただし、再燃率はアニフロルマブの方が、低い傾向にあった)
- 帯状疱疹や上気道感染といった、ウイルス感染に注意が必要である。
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、ぜひよろしくお願いします?
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