治療薬

生物学的製剤に対する中和抗体を作らせないようにするためには?【キメラ・ヒト化・完全ヒト型】

こんにちは、今回は「生物学的製剤に対する中和抗体を作らせないようにするためには?」について取り上げていきたいと思います。

生物学的製剤に対する中和抗体ができてしまう可能性があるのは、前回の記事でわかりましたが、どういった生物学的製剤でできやすいのか気になります。

生物学的製剤に対する中和抗体を作らせないようにするために

前回の記事で、生物学製剤は、使用中に特異的な中和抗体ができてしまうことで、薬効が徐々に低下してしまうことがあるとお話ししました。

では、今回は中和抗体が産生されにくい生物学的製剤はあるのかについて、簡単にお話ししていきたいと思います。

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なぜ、中和抗体ができてしまうのか?

多くの生物学的製剤は、モノクローナル抗体という抗体製剤です。

このモノクローナル抗体には、

  1. マウス抗体
  2. キメラ抗体
  3. ヒト化抗体
  4. 完全ヒト化抗体

の4種類があります。

マウス抗体

マウス抗体とは、マウス由来の抗体であるため、ヒトの体内に入ると遺物と認識されてしまいアレルギー反応を起こしたり、マウス抗体に対する中和抗体ができやすく、効果が減弱してしまいます

また、アレルギー反応や中和抗体の出来やすさを『 免疫原性 』といいます。

キメラ抗体

キメラとは?

〈 ドラゴンクエストに出てくるキメラ 〉

( 画像引用:https://co.pinterest.com/pin/519602875736977223/?amp_client_id=CLIENT_ID(_)&mweb_unauth_id={{default.session}}&simplified=true

キメラと言われると、ドラクエに出てくるキメラを想像する方も多いのではないでしょうか。

かくゆう私も、以前はドラクエユーザーであり、キメラと聞くとこのドラクエのキャラを思い出してしまいます。。。

このドラクエのキメラは、ハゲタカとヘビを掛け合わせたようなキャラクターです。

もともと、キメラとは、元々ギリシャ神話に出てくる「キマイラ」に由来しており、キマイラは頭がライオン、胴体が羊、さらに蛇の頭も持っていた架空の怪獣です。

〈 ギリシャ神話のキマイラのイメージ(これはちょっと可愛すぎるか)〉

話が少し脱線してしまいました。。。

キメラとは、生物学では、『 同一個体中に遺伝型の違う組織が互いに接している現象のこと 』をいいます。

つまり、キメラとは、遺伝子中に、頭の部分はライオンの遺伝子、胴体の部分は羊の遺伝子、また蛇の頭の遺伝子も組み込まれていることで、

同一個体中に、異なる遺伝情報をもつ細胞が混じっている状態や、そのような状態の個体のことをいいます。

なので、モノクローナル抗体におけるキメラ抗体とは、マウス抗体とヒト抗体が組み合わさってできている抗体のことをいいます

具体的には、抗体の可変領域の部分がマウス由来となっていて、他の部分はヒト由来になっています。

〈 モノクローナル抗体製剤の進歩1,2)

ヒト化抗体

ヒト化抗体は、キメラ抗体よりもさらにヒト型抗体に近い抗体で、マウス可変領域の一部だけがマウス抗体で残りは完全ヒト型抗体が融合してできています

マウス由来のタンパク質は可変領域の一部に残るだけで、90~95%はヒト由来で、免疫原性はかなり低下しています。

完全ヒト型抗体

完全ヒト型抗体は、その名の通り、100%全てヒト由来の抗体となります。




中和抗体のできやすさ

モノクローナル抗体には、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト型抗体があり、マウス由来の成分が多いと、免疫原性が高く、アレルギー反応や、中和抗体ができやすくなります

なので、中和抗体を作らせない鍵は、

モノクローナル抗体をよりヒト由来にすることです。

つまり、ヒト化抗体、完全ヒト型抗体の方が中和抗体の産生を抑えることができます。

このため、通常、ヒト化抗体や完全ヒト化抗体製剤では、中和抗体の産生抑制効果を得るための、メトトレキサートといった他の免疫抑制薬の併用は必須ではありません

具体的には、例えば関節リウマチにおいて、キメラ抗体であるインフリキシマブ(レミケード®︎)は、メトトレキサートの併用が必須であり、併用することで治療効果が上がることに加え、中和抗体の産生抑制にも寄与しています。

一方で、同じTNF-α阻害薬である、アダリムマブ(ヒュミラ®︎)やゴリムマブ(シンポニー®︎)、セルトリズマブ(シムジア®︎)などは、ヒト化抗体もしくは完全ヒト型抗体であるため、メトトレキサートの併用は推奨されていますが必須ではありません

ヒト成分アレルギー反応や中和抗体のできやすさの目安免疫原性
マウス抗体0 %
キメラ抗体30 %
ヒト化抗体90 ~ 95 %
完全ヒト化抗体100 %

一般名から抗体の予測ができる

実は、一般名からそのモノクローナル抗体が、キメラなのか、ヒト化なのか、完全ヒト型なのかを、『 mabの前につく文字 』で予想することができます。

mab(monoclonal antibody)とは、モノクローナル抗体のことです。

〈 マブ(mab)の前につく文字 〉

  1. mo = マウス抗体
  2. xi = キメラ抗体
  3. zu = ヒト化抗体
  4. u = 完全ヒト型抗体

例えば、レミケード®︎という商品名のインフリキシマブ( Infliximab )は、mabの前に xi があるのでキメラ抗体です。

また、アクテムラ®︎という商品名のトシリズマブ( Tocilizumab )は、zu があるのでヒト化抗体です。

一方、アクテムラ®︎と同じIL-6阻害薬のケブザラ®︎という商品名のサリルマブ( Sarilumab )は、u があるの完全ヒト化抗体です。

mabの前に、注目すれば、キメラ抗体やヒト化抗体かがわかるのは簡単ですね!




疾患別 モノクローナル抗体の分類

では、生物学的製剤でキメラ抗体やヒト化抗体にはどういったものがあるのですか?

では、最後にそれぞれの疾患で使われる生物学的製剤が、何型抗体であるかを見ていきたいと思います。

関節リウマチ

〈 TNF-α阻害薬 〉
インフリキシマブ
(レミケード®︎)
キメラ抗体
アダリムマブ
(ヒュミラ®︎)
完全ヒト型抗体
ゴリムマブ
(シンポニー®︎)
完全ヒト型抗体
セルトリズマブ
(シムジア®︎)
ヒト化抗体
エタネルセプト
(エンブレル®︎)
完全ヒト型受容体製剤
〈 IL-6阻害薬 〉
トシリズマブ
(アクテムラ®︎)
ヒト化抗体
サリルマブ
(ケブザラ)
完全ヒト型抗体
〈 T細胞選択的共刺激調節薬 〉
アバタセプト
(オレンシア®︎)
完全ヒト型受容体製剤

ポイント

  • シンポニー®︎(ゴリムマブ)は、完全ヒト型モノクローナル抗体であるため、二次無効(主に中和抗体の産生による)が少なく、薬剤継続率が高い3)
  • シムジア®︎(セルトリズマブ)は、ヒト化モノクローナル抗体であり、中和抗体が産生されにくく二次無効が少ない。
  • 関節リウマチに使われるTNF-α阻害薬は、キメラ抗体であるレミケード®︎(インフリキシマブ)以外は、ヒト化抗体もしくは完全ヒト型抗体であるため、メトトレキサートの併用は必須ではありません。ただし、メトトレキサートを併用できる場合は、併用が推奨されています。

語尾が『 セプト 』

「 セプト 」とは、受容体製剤のことで、リガンドの受容体にヒトIgGのFc部分を結合したものです。

TNF-α阻害薬であるエタネルセプト(エンブレル®︎)もT細胞選択的共刺激調節薬であるアバタセプト(オレンシア®︎)もヒト型で免疫原性が低く、中和抗体が産生されにくく二次無効が少ないのが特徴です。

全身性エリテマトーデス

ベリムマブ
(ベンリスタ®︎)
完全ヒト型抗体
アニフロルマブ
(サフネロー®︎)
完全ヒト型抗体
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乾癬

〈 TNF-α阻害薬 〉
インフリキシマブ
(レミケード®︎)
キメラ抗体
アダリムマブ
(ヒュミラ®︎)
完全ヒト型抗体
セルトリズマブ
(シムジア®︎)
ヒト化抗体
〈 IL-17阻害薬 〉
イキセキズマブ
(トルツ®︎)
ヒト化抗体
セクキヌマブ
(コセンティクス®︎)
完全ヒト型抗体
ブロダルマブ
(ルミセフ®︎)
完全ヒト型抗体
ビメキズマブ
(ビンゼレックス®︎)
ヒト化抗体
〈 IL-23阻害薬 〉
グセルクマブ
(トレムフィア®︎)
完全ヒト型抗体
リサンキズマブ
(スキリージ®︎)
ヒト化抗体
チルドラキズマブ
(イルミア®︎)
ヒト化抗体
〈 IL-12/23阻害薬 〉
ウステキヌマブ
(ステラーラ®︎)
完全ヒト型抗体

潰瘍性大腸炎・クローン病

〈 TNF-α阻害薬 〉
インフリキシマブ
(レミケード®︎)
キメラ抗体
アダリムマブ
(ヒュミラ®︎)
完全ヒト型抗体
〈 IL-12/23阻害薬 〉
ウステキヌマブ
(ステラーラ®︎)
完全ヒト型抗体
〈 α4β7インテグリン抗体 〉
ベドリズマブ
(エンタイビオ®︎)
ヒト化抗体

脊椎関節炎

〈 TNF-α阻害薬 〉
インフリキシマブ
(レミケード®︎)
キメラ抗体
アダリムマブ
(ヒュミラ®︎)
完全ヒト型抗体
〈 IL-17阻害薬 〉
イキセキズマブ
(トルツ®︎)
ヒト化抗体
セクキヌマブ
(コセンティクス®︎)
完全ヒト型抗体
ブロダルマブ
(ルミセフ®︎)
完全ヒト型抗体
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メポリズマブ
(ヌーカラ®︎)
ヒト化抗体
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まとめ

“今回のまとめ”
  1. 理論的に、ヒト由来以外のマウス抗体やキメラ抗体の場合、免疫原性が高く中和抗体が産生されやすい。
  2. キメラ抗体製剤である、TNF-α阻害薬のレミケード®︎(インフリキシマブ)は中和抗体が産生されやすいため、メトトレキサートを併用することが必須である。
  3. 一方で、ヒト化抗体や完全ヒト型抗体製剤の場合は、他の免疫抑制薬を併用することは必須ではない(ただし、中和抗体が産生される可能性は0ではない)。

〈参考〉

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