乾癬

乾癬における肥満・糖尿病がもたらす生物学的製剤への影響は?【TNF・IL-17・IL-12/23・IL-23阻害薬】

こんにちは、今回は、乾癬患者さんにおいて、肥満や糖尿病は生物学的製剤の有効性にどの程度影響があるのかについて取り上げていきたいと思います。

肥満は、乾癬に良くない影響を与えると聞いたことはありましたが、具体的にどういった影響があるのか気になります。

乾癬における肥満・糖尿病がもたらす生物学的製剤への影響について

今回、元にした論文は、2021年7月に『 JAAD(Journal of the American Academy of Dermatology:IF 11.53(2021-22))』に掲載された 、Eastern Virginia Medical SchoolのClinton W. Enos氏らによる

『 乾癬患者における肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症がもたらす生物学的製剤への影響について』

の報告です1)

まず、結論から

では、まず結論からお話しします。

『 肥満(BMI≧30) 』は、乾癬患者における生物学的製剤の有効性を、

PASI 75 およびPASI 90 達成率を25〜30%減少させる。

ことなどが示されました。

肥満があることによって、乾癬患者さんの生物学的製剤の有効性が、25~30%も低下する可能性があるのですね。。。

PASIスコアとは?

PASI(パシ)スコアは、

乾癬患者さんの紅斑(こうはん)、浸潤(しんじゅん)、落屑(らくせつ)の程度や症状が出ている範囲を調べて、

乾癬の重症度を点数であらわします

最高得点は72点で、点数が高いほど重症度が高いことを示します。

  1. PASI 75は、PASIスコアが 75 % 改善したことを表します。
  2. PASI 90は、PASIスコアが 90 % 改善したことを表します。

では、具体的に内容を見ていきましょう。

背景 〜乾癬と合併症の関係〜

乾癬については、これまでに肥満、糖尿病、高脂血症などの併存疾患との関係性が多く報告されてきました。

  • 乾癬の肥満、糖尿病、高脂血症などの併存症は、生活の質(QOL:quality of life)の低下、死亡リスクの上昇と関係する2,3)
  • RCTのサブ解析により、TNF阻害薬は、肥満をもつ乾癬患者において有効性が低下する4,5,6,7,8)
  • 一方で、IL-17阻害薬、IL-23阻害薬、IL-12/23阻害薬のRCTでは、体重に関係なく乾癬の治療に同等の効果があった9,10,11,12,13,14)。(RCT:無作為化比較試験)

ですが、肥満以外の代謝性合併症における生物学的製剤への影響については、あまり知られていません

そこで、

本研究は、『 乾癬における代謝性合併症が、生物学的製剤の治療にどういった影響を及ぼすのか 』を検討しています。

方法 Methods

まずは、本研究の方法からみていきます。

  • 対象:米国、カナダで使われるCorEvitas’ Psoriasis Registryに登録されている、乾癬患者 2924人が対象(肥満(BMI≧30)、糖尿病、高血圧、脂質異常症を併発する患者も含まれる)。
  • 6ヶ月時点の生物学的製剤の治療反応との関連性を評価した。

ベースラインの特徴

  • 肥満(BMI≧30):53.5%、高血圧:38.7%、高脂血症:28.5%、糖尿病:17.3%
  • 49.5%は高血圧、高脂血症、糖尿病の既往がなし。
  • 50.5%は1つ以上の代謝性疾患の既往があり、25.8%は2つ以上の既往があった。
  • 乾癬患者さんのベースラインの平均BSA(重症度スコア)は、14.1%で(10%以上が重症)、平均PASIスコアは、8.5点 ( / 計72)であった。
  • ベースラインにおいて、41.8%が乾癬性関節炎を併発。
  • 喫煙歴あり:52%、喫煙歴なし:48%

BSAスコアとは?

BSAスコアとは、

全身の皮膚の面積を100%とし、乾癬の皮疹の面積が全身の何%にあたるかを示します。

だいたい手のひら(指を含む)1枚分が1%になります。

結果 Results

では、気になる結果を見ていきたいと思います。

併存疾患の有無における、PASI 75、PASI 90、BSA(重症度スコア)の達成率の違いは?(全ての生物学的製剤を含む)

肥満

6ヶ月時点で、

肥満のある乾癬患者は、肥満がない乾癬患者と比較して、PASI(54.1% vs 62.6 %)、PASI 90 (37.8 % vs 46.9 %)、BSA ≦1(45.2 % vs 56.5 %)の達成率が低かった。

共変量で調整後、全患者において、

肥満は、PASI75(OR、0.75;95%CI、0.64-0.88)およびPASI90(OR:0.70、95%CI:0.59-0.81)の達成率の25~30%低下と関連していました。

BSA≦1のオッズが35%減少(OR、0.65;95%CI、0.56-0.76)した。

糖尿病

6ヶ月時点で、

糖尿病のある乾癬患者は、糖尿病がない乾癬患者と比較して、PASI(48.7 % vs 59.9 %)、PASI 90 (34.9 % vs 43.4 %)、BSA ≦1(39.2 % vs 52.7 %)の達成率が低かった。

肥満をコントロールした調整後では、糖尿病は、

  1. PASI 75のオッズを31 %(OR、0.69;95%CI、0.56-0. 85)、
  2. PASI 90のオッズを21 %(OR、0.79;95%CI、0.63-0.98)、
  3. BSA ≦1(OR 0.66;95% CI、0.53-0.81)のオッズを34 %減少させました。

高血圧

6ヶ月時点で、

高血圧のある乾癬患者は、高血圧がない乾癬患者と比較して、PASI(53.2 % vs 60.9 %)、PASI 90 (37.5 % vs 44.7 %)、BSA ≦1(46.0 % vs 53.1 %)の達成率が低かった。

高血圧は、

  1. PASI75達成のオッズを19%(OR、0.81;95%CI、0.68-0.97)減少させましたが、
  2. PASI90、BSA≦1では、有意な減少はみられませんでした。

高脂血症

6ヶ月時点で、

高脂血症のある乾癬患者は、高脂血症がない乾癬患者と比較して、PASI(56.5 % vs 58.5 %)、PASI 90 (39.4 % vs 42.9 %)、BSA ≦1(50.0 % vs 50.5 %)の達成率が低い傾向があったが、有意差は認めなかった

生物学的製剤の種類ごとのPASI 75、PASI 90、BSA(重症度スコア)の達成率の違いは?

TNF阻害薬(レミケード®︎(インフリキシマブ)、ヒュミラ®︎(アダリムマブ)、シムジア(セルトリズマブ®︎))

  1. 肥満
    • PASI 75のオッズは33%(OR, 0.67; 95% CI, 0.46-0.97)低下した。
    • PASI 90のオッズは43%(OR, 0.57; 95% CI, 0.39-0.84)低下した。
    • BSA ≦1%のオッズは52% (OR, 0.48; 95% CI, 0.33-0.71)低下した。
  2. 糖尿病
    • PASI 75、PASI 90の低下とは、相関がなかった。
  3. 高血圧
    • PASI 75のオッズは、39%(OR、0.61;95%CI、0.40-0.95)低下した。
    • PASI 90、BSA ≦1%とは相関がなかった。
  4. 高脂血症
    • PASI 75、PASI 90、BSA ≦1%いずれも、相関がなかった。

IL-17阻害薬(コセンティクス®︎、トルツ®︎、ルミセフ®︎、ビンゼレックス®︎)

  1. 肥満
    • PASI75は34%(OR、0.66;95%CI、0.52-0.84)
    • PASI90は37%(OR、0.63;95%CI、0.50-0.81)
  2. 糖尿病
    • PASI75は39%(OR、0.61;95%CI、0.45-0.85)
    • PASI90は31%(OR、0.69;95%CI、0.49-0.96)
  3. 高血圧
    • PASI 75、PASI 90、BSA ≦1%いずれも、相関がなかった。
  4. 高脂血症
    • PASI 75、PASI 90、BSA ≦1%いずれも、相関がなかった。

IL-23阻害薬(トレムフィア®︎、スキリージ®︎、イルミア®︎) または IL-12/23阻害薬(ステラーラ®︎)

IL-23阻害薬、IL-12/23阻害薬は、肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症は明かな相関は認めませんでした。

まとめ

今回の報告のまとめです。

“まとめ”
  1. 今回の研究において、肥満や糖尿病の合併が、生物学的製剤の治療効果の達成率低下と関連していました。
  2. 高血圧の有無は、有意差は認めたものの、肥満や糖尿病ほどは達成率を低下させませんでした。
  3. 高脂血症の有無は、治療反応性とは有意な相関を認めませんでした。

この結果から、

TNF阻害薬やIL-17阻害薬を投与する乾癬患者さんにおいて、肥満、糖尿病などの併存疾患を考慮して、投与を検討することが大切かと思われます。

生物学的製剤の有効性を、高めるためには、『 肥満や糖尿病はできるだけ改善させること 』が大切ということですね。

痩せることは、治療反応性を高めてくれるのですね!




〈参考〉

  • 1) Clinton W Enos, et al. J Am Acad Dermatol 2022;86:68-76.
  • 2) J Dermatol. 2014; 41: 673-678.
  • 3) J Am Acad Dermatol. 2019; 80: 1332-1343.
  • 4) J Am Acad Dermatol. 2008; 58: 443-446.
  • 5) J Am Acad Dermatol. 2006; 54: S101-S111.
  • 6) J Drugs Dermatol. 2015; 14: 864-868.
  • 7) J Eur Acad Dermatol Venereol. 2011; 25: 1007-1011.
  • 8) InPsoriasis Forum. 2007; 13: 21-27.
  • 9) J Clin Med. 2020; 9: 2170.
  • 10) Br J Dermatol. 2018; 178: 132-139.
  • 11) Br J Dermatol. 2020; 182: 880-88812).
  • 12) J Am Acad Dermatol. 2010; 63: 571-579.
  • 13) J Am Acad Dermatol. 2021; 84: 398-407.
  • 14) Case Rep Dermatol. 2019; 11: 29-36.
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今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです🥝 Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、ぜひよろしくお願いします🕊

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