治療薬

胃薬のまとめ【PPI・H2ブロッカー・防御因子増強薬】

まなみさんには、プレドニン®︎と一緒にランソプラゾールという胃薬も処方しておきます。

ステロイドを飲んでいるから、胃薬も処方するんですね。
ですが、胃薬って種類が多くて、よくわかりません。。。

胃薬について

胃薬には、主に3種類あります。

それは、

  1. プロトンポンプ阻害薬
  2. ヒスタミンH2 受容体拮抗薬(H2ブロッカー)
  3. 防御因子増強薬

の3つです。

今回は、こちらの3つについて詳しく取り上げて行きたいと思います!

(※ 他にもムスカリン受容体拮抗薬や制酸薬もありますが、今回は割愛いたします。)

胃酸分泌のメカニズム

胃酸は、胃の壁細胞から分泌されているのですが、壁細胞表面には、『 アセチルコリン受容体、H2受容体、ガストリン受容体 』が発現しています。

神経伝達物質であるアセチルコリン、ヒスタミンやガストリンがそれぞれの受容体に結合することで、壁細胞のプロトンポンプを通して胃酸が分泌されます。

https://kusuri-jouhou.com/medi/digestive/rabeprazole.html より引用)

depth photography of blue and white medication pill

PPI:プロトンポンプ阻害薬

胃薬のメインは、なんといっても『 プロトンポンプ阻害薬 』です。

通称、 PPI(ピーピーアイ) 』と言います(Proton Pump Inhibitor)。

PPIは、胃粘膜壁細胞の酵素[H+,K+-ATPase]であるプロトンポンプを阻害し、H2受容体拮抗薬よりも強力に胃酸分泌を抑制する薬剤です。

https://kusuri-jouhou.com/medi/digestive/rabeprazole.html より引用)

プロトンポンプ阻害薬は主に、以下の4種類があります。

〈 主なプロトンポンプ阻害薬 〉

  1. オメプラール®︎ / オメプラゾン®︎(オメプラゾール)
  2. パリエット®︎(ラベプラゾール)
  3. タケプロン®︎(ランソプラゾール)
  4. ネキシウム®︎(エソメプラゾール)

タケキャブ®︎は違うの?

最近は、タケキャブ®︎(ボノプラザン)という胃薬を処方されることも多いです。

タケキャブ®︎は、従来のPPIとは異なる機序でプロトンポンプ[H,K-ATPase]を阻害します。

具体的には

タケキャブ®︎は従来のPPIで必要とした酸による活性化を必要とせず可逆的でカリウムイオンに競合的な様式でプロトンポンプ[H,K-ATPase]を阻害します

また、タケキャブ®︎は塩基性が強く胃壁細胞の酸生成部位に長時間残存して胃酸生成を抑制します

以上をまとめると

〈タケキャブ®︎のメリット〉

  • 酸の影響を受けないため胃酸抑制の効果発現が早く、また作用時間が長い
  • そのため、従来のPPIよりも強力な胃酸抑制効果を示す
  • 胃酸抑制効果の個人差が小さい

〈タケキャブ®︎のデメリット〉

  • 強力な胃酸抑制効果が逆にデメリットになることも

〈慢性的なPPIによる胃酸抑制のリスク〉

タケキャブは、胃の酸性環境下でも安定性が高く、長く止まることができる反面、胃酸抑制効果が高いのですが、この高い胃酸抑制効果が逆に、細菌の除菌などの胃酸による働きにとっては良くないのではという意見もあります。

現に、肺炎については、PPIを飲んでいる人と飲んでいない人で比べると、PPIを長期に飲んでいることで肺炎になるリスクが1.49倍に増えるという報告もあります1)

そのため、タケキャブに限らず慢性的なPPIの内服を避ける先生もいます。




ヒスタミンH2 受容体拮抗薬(H2ブロッカー)

ヒスタミンH2 受容体拮抗薬は、

胃の壁細胞の表面に発現しているH2受容体を阻害することでプロトンポンプ[H,K-ATPase]からの分泌を抑制させます。

ヒスタミンは、壁細胞の胃酸分泌に作用するメインの神経伝達物質なので、高い胃酸分泌抑制効果はあるのですが、

大元のプロトンポンプを阻害する訳ではなく、PPIよりは胃酸分泌抑制効果は劣ります

https://kusuri-jouhou.com/medi/digestive/rabeprazole.html より引用)

H2ブロッカーの特徴

  • 胃酸抑制効果はあるが、PPIよりも効果は劣る。
  • PPIが使用できない時は、次の選択肢に挙がる。
  • 主に腎排泄性であること多く、腎機能に置いて用量調節が必要である。
  • H2ブロッカーの効果持持続時間は、PPIよりも短い。
  • ヒスタミンは主に夜間に酸分泌を刺激しているため、H2ブロッカーは夜間に効きやすい。

〈H2ブロッカーの例〉

  1. ガスター®︎(ファモチジン)
  2. タガメット®︎(シメチジン)
  3. アシノン®︎(ニザチジン)
  4. アルタット®︎(ロキサチジン)など
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防御因子増強薬

PPIやHブロッカーのような、胃酸分泌抑制作用はなく、分泌された胃酸に対して防御力を高めるのが『防御因子増強薬』です。

胃酸に対する防御力を高めるのですが、胃潰瘍の予防効果に対しては、PPIやH2ブロッカーには劣ります。

ですが、防御因子増強薬は大きな副作用も少ないのが特徴です。

防御因子増強薬は、主に4種類に分けられます。

  1. プロスタグランジン製剤
  2. 粘液産生・分泌促進薬
  3. 粘膜抵抗強化薬
  4. 胃粘膜微小循環改善薬

プロスタグランジン製剤

  • サイトテック®︎(ミソプロストール)

サイトテック®︎には、防御因子強化作用だけでなく、攻撃因子抑制作用も併せ持っておりNSAIDs潰瘍にも有効性があります。

粘液産生・分泌促進薬

  • レバミピド(ムコスタ®︎)
  • テプレノン(セルベックス®︎)

レバミピド®︎(ムコスタ)は、防御因子増強薬としてよく処方されるものの一つです。

レバミピド®︎だけでもNSAIDs潰瘍の予防効果を認めたとする報告もあり2)、PPIを併用していないからといって、NSAIDs潰瘍の予防効果がないわけではありません。

粘膜抵抗強化薬

  • マーズレン®︎(アズレンスルホン酸・L-グルタミン)
  • アルサルミン®︎(スクラルファート)
  • プロマック®︎(ポラプレジンク)
  • ガストローム®︎(エカベトナトリウム)
  • アズロキサ®︎(エグアレンナトリウム)

胃粘膜微小循環改善薬

  • ガスロンN®︎(イルソグラジンマレイン酸塩)
  • ノイエル®︎(セトラキサート塩酸塩)
  • ウルグート®︎(ベネキサート塩酸塩ベータデクス)

〈防御因子増強薬の特徴〉

  • 消化性潰瘍の予防効果は、PPIやH2ブロッカーよりも劣る。
  • 副作用は、比較的少なく継続しやすい。
  • プロスタグランジン製剤は、NSAIDs潰瘍に有効である。




ステロイド性胃潰瘍について

ステロイドはなぜ胃潰瘍を起こすの?

ステロイドの内服を始めた方は、一緒にPPIなどの胃薬を処方されることが多いかと思います。

これは、ステロイド性胃潰瘍を予防する目的に投与されます。

では、ステロイドでなぜ胃潰瘍を起こすのでしょうか?


それは、ステロイドによって胃粘膜防御作用が減弱するからです。

ステロイド性胃潰瘍の詳しい機序

副腎皮質ステロイドがホスホリパーゼA2の作用を阻害しプロスタグランジンの合成を抑制し、胃粘膜プロスタグランジンや胃粘液分泌が減少します。

その結果、胃粘膜防御作用が減弱します。

ステロイド単剤では、胃潰瘍のリスクは低い?

先ほど、ステロイドは、胃粘膜防御作用を減弱させると書きました。

そうなのです、ステロイド自体が胃酸分泌を直接増加させるわけではありません。

現に、ステロイド単独投与の胃潰瘍発生に関しては否定的な報告が多いです。

では、どういった時にステロイド性胃潰瘍のリスクが増加するのですか?


非ステロイド性抗炎症薬、いわゆるNSAIDsといった鎮痛薬と併用する場合にリスクが増悪するといわれています。

なので、関節痛や腰痛があり、ロキソニン®︎などとステロイド(プレドニン®︎)を併用した場合は、PPIなどの胃酸抑制効果の高い胃薬を併用することをお勧めします。

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まとめ

PPI
(プロトンポンプ阻害薬)
H2ブロッカー防御因子増強薬
攻撃因子抑制
防御因子増強
胃酸抑制効果・タケキャブ®︎ 強力
・従来のPPI
代謝主に肝代謝主に腎代謝
NSAIDs潰瘍の有効性プロスタグランジン製剤において有効性あり
副作用頭痛
めまい
肝障害
発疹など
比較的まれ
血球現象
肝障害
下痢・便秘など
比較的まれ

〈参考〉

  • 1)Risk of Community-Acquired Pneumonia with Outpatient Proton-Pump Inhibitor Therapy: A Systematic Review and Meta-Analysis.Lambert, A  PLoS ONE (2015) 10: e0128004.
  • 2) Park, S. H., et al.J Clin Biochem. Nutr. 2007;40:148-155.
  • 藤村 昭夫 類似薬の使い分け 羊土社
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“今回のまとめ”
  1. 胃薬のメインは、ランソプラゾールといったプロトンポンプ阻害薬(PPI)である。
  2. タケキャブ®︎は、作用発現が早い・効果持続時間が長いといったメリットがあるが、胃酸抑制が強すぎて逆にデメリットとなる場合もある。
  3. ステロイド性胃潰瘍は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を併用する時に、特にリスクが高くなる。

今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、ぜひよろしくお願いします?

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