えーと、まなみさんの抗核抗体は160倍で、「Homogenous &Speckled パターン」ですね。
160倍???
Homogenous &Speckledとは何ですか?
全然わかりません。。。
抗核抗体について
抗核抗体は、細胞の核の成分を抗原とする抗体群の総称です。
膠原病の代表的なスクリーニング検査で、特に、『抗核抗体関連膠原病』を知りたいときに有用な検査です。
膠原病には、
- 抗核抗体の陽性率が高い膠原病
- 抗核抗体の陽性率の低い膠原病
があります。
抗核抗体を調べることで、
① 抗核抗体の陽性率が高い膠原病(抗核抗体関連膠原病)を調べることができます。
※ スクリーニング検査とは?
スクリニーングとはふるい分けのことで、
ある疾患を疑った時に、ざっくりその疾患の可能性があるかを調べる、ふるい分けの検査ということです。
抗核抗体関連膠原病
抗核抗体が診断に有用な疾患 | 抗核抗体 陽性率 |
---|---|
混合性結合組織病 | 100 % |
薬剤性ループス | 100 % |
自己免疫性肝炎 | 100 % |
SLE(全身性エリテマトーデス) | 99〜100 % |
全身性強皮症 | 97 % |
多発性筋炎 / 皮膚筋炎 | 40〜80 % |
シェーグレン症候群 | 48〜96 % |
この中でも、MCTD(混合性結合組織病)、SLEや強皮症は抗核抗体の陽性率が極めて高く、抗核抗体が陰性であった場合は、これらの疾患をほぼ除外することができます。
抗核抗体の陽性率が低い疾患
『 抗核抗体が陽性率が低い膠原病 』とは、つまり抗核抗体検査が有用でない疾患です。
抗核抗体が陽性率が低い疾患 | 抗核抗体 陽性率 |
---|---|
関節リウマチ | 30〜50 % |
線維筋痛症 | 14〜25 % |
多発性硬化症 | 25 % |
ITP(特発性血小板減少性紫斑病) | 10〜30 % |
甲状腺疾患 | 30〜50 % |
健常者でも抗核抗体が陽性になる?!
ここで注意が必要なことは、
健常者でも抗核抗体が陽性になる場合があるということです。
健常者の抗核抗体の陽性率はどれくらいなんですか?
健常者の抗核抗体陽性率は、
『 およそ20〜30% 』と言われています。
抗核抗体の力価 | 陽性率 |
---|---|
40倍以上 | 20〜30 % |
80倍以上 | 10〜12 % |
160倍以上 | 5 % |
320倍以上 | 3 % |
健常人における抗核抗体の力価と陽性率1)
80倍までなら、健常者でもしばしば認めます。
抗核抗体のみ陽性で症状が伴わない時は、現状は病的意義はなしとして経過をみます。
他に抗核抗体が陽性となる疾患
また、『 感染症、慢性肝炎や悪性疾患 』でも抗核抗体が陽性となる場合があります。
染色パターンを知れば、自己抗体が予想できる?!
抗核抗体検査によってわかるのは、抗核抗体の陽性率が高い膠原病と、陽性率が低い膠原病の鑑別となるだけではありません。
最大のメリットは
抗核抗体の染色パターンによって、疾患を推定できることです。
抗核抗体をとる意義は、なんといってもこれにつきます。
例えば、下図のように、抗核抗体がHOMO型とSPECKLED型がどちらも160倍と出ています。
この場合は、HOMO型の染色パターンを認める『 抗dsDNA抗体 』と、
SPECKLED型の染色パターンを認める『 抗Sm抗体、抗RNP抗体、抗SS-B抗体、抗Scl-70抗体 』が
次の自己抗体を調べる候補に挙がります。
抗核抗体の染色パターンを知ろう!
抗核抗体は、主に間接蛍光抗体法を原理とした試薬を用いて測定され、下図のように核が蛍光染色で光ります。
その染まり具合によって主に6つのパターンに分けられます。
では、抗核抗体の染色パターンを見ていきましょう。
① Homogenous pattern 均一型
(https://osaka-amt.or.jp/lecture/ana/ishihara.html より引用)
Homogenous pattern(均一型)は、核全体が滑らかに染色されます。
● Homogenous pattern をとる自己抗体
抗dsDNA抗体 | SLE |
② Peripheral pattern 辺縁型
(https://osaka-amt.or.jp/lecture/ana/ishihara.html より引用)
Peripheral pattern(辺縁型)は、核全体が滑らかに染色され、特に核の辺縁部が強く染色されます。
● Peripheral pattern をとる自己抗体
抗dsDNA体 | SLE |
③ Speckled pattern 斑紋型
(https://osaka-amt.or.jp/lecture/ana/ishihara.html より引用)
Speckled pattern(斑紋型)は、核内に粒状の蛍光を認め、ざらついた染色像となります。
● Speckled pattern をとる自己抗体
抗Sm体 | SLE |
抗RNP抗体 | MCTD、SLE |
抗SS-B抗体 | シェーグレン症候群 |
抗Scl-70抗体 | 全身性強皮症 |
④ Discrete speckled pattern 散在斑紋型(または centromere pattern セントロメア型)
(https://osaka-amt.or.jp/lecture/ana/ishihara.html より引用)
Discrete speckled pattern(散在斑紋型)は、核内に均一に散らばった斑点状の蛍光を示します。
● Discrete speckled pattern をとる自己抗体
抗セントロメア抗体 | 全身性強皮症 |
Discrete speckled patternの特徴
Discrete speckled patternを認めたときの特徴として、
抗核抗体をとった時点で、抗セントロメア抗体とほぼ決まります。
なので、抗核抗体を測ったときに、その染色パターンで唯一決まるのが、Discrete speckled patternを認めた時です。
⑤ Nucleolar pattern 核小体型
(https://osaka-amt.or.jp/lecture/ana/ishihara.html より引用)
核内に、数個の大きな点、あるいは顆粒の固まりとして、核小体が染色されます。
● Nucleolar pattern をとる自己抗体
抗RNAポリメラーゼⅢ抗体 | 全身性強皮症 |
⑥ Cytoplasmic pattern 細胞質型
Cytoplasmic pattern(細胞質型)は、核が染めれられる訳ではなく、その周りの細胞質が染色されるパターンです。
● Cytoplasmic pattern をとる自己抗体
抗ミトコンドリア抗体 | 原発性胆汁性肝硬変 |
抗Jo-1抗体 | 多発性筋炎 / 皮膚筋炎 |
抗SS-A抗体 | シェーグレン抗体 |
抗ARS抗体 | 多発性筋炎 / 皮膚筋炎 |
抗平滑筋抗体 | 自己免疫性肝炎 |
染色パターンがわかったら、次にやるべきこと
染色パターンがわかったら、次にやるべきことは、
染色パターンに応じた特異抗体を調べます。
これで、
より効率的に、確実に原因の自己抗体を調べることができます。
私は、Speckled patternが160倍だったので、抗Sm体、抗RNP抗体、抗SS-B抗体、抗Scl-70抗体を次に調べてみる必要があるのですね。
抗核抗体は繰り返し測る必要はあるの?
通常、自己抗体を繰り返し測る理由は、疾患活動性を見るためです。
疾患活動性を表す自己抗体としては、抗dsDNA抗体やANCAなどがあります。
ですが、
抗核抗体においては、疾患活動性を表す根拠は乏しく、繰り返し測る必要性はありません。2)
〈参考〉
- 1) Firestein&Kelley’s Textbook of Rheumatology, 11th edition. 2021
- 2) Agmon-Levin N, et al. Ann Rheum Dis 2014;73:17-23.
- Hospitalist 特集 膠原病 メディカル・サイエンス・インターナショナル
- 抗核抗体は、膠原病のスクリーニングで行われる検査である。
- 抗核抗体検査によって、抗核抗体の陽性率が高い膠原病(抗核抗体関連膠原病)を調べることができる。
- さらに、抗核抗体の染色パターンによって、疾患を推定できる。
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、よろしくお願いします?
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