こんにちは。今回は、ステロイド性骨粗鬆症のビスホスホネート製剤や活性型ビタミンD3製剤以外の治療について取り上げていきたいと思います!
半年に1回でいい「プラリア®︎」という注射製剤もあることを聞いて、気になっていました!
ぜひ、お願いしますっ!
骨粗鬆症薬の種類について
骨粗鬆症薬には、その作用機序の観点から主に、『骨吸収抑制薬、骨形成促進薬、骨吸収と骨形成のバランス調節薬』の3つに分かれます。
さらに、最近発売されたイベニティ®︎は、骨吸収抑制と骨形成の両者の作用を併せ持っています。
- 骨吸収抑制薬
- 骨形成促進薬
- 骨吸収や形成のバランスを整える
- (骨吸収抑制 + 骨形成促進)薬
① 骨吸収抑制薬
骨吸収抑制薬は、破骨細胞(骨を壊す)による骨吸収を阻害します。
- ビスホスホネート製剤 :アレンドロン酸、リセドロン酸、ミノドロン酸など
- 抗RANKL抗体製剤 :プラリア®︎(デノスマブ)
- SERM :エビスタ®︎(ラロキシフェン)、ビビアント®︎(バゼドキシフェン)
② 骨形成促進薬
骨形成促進薬は、骨芽細胞(新しい骨をつくる)の活性化をすることで、骨形成を促します。
- ヒト副甲状腺ホルモン :フォルテオ®︎(遺伝子組換えテリパラチド)、テリボン®︎(テリパラチド酢酸塩)
③ 骨吸収や形成のバランス調節薬
活性型ビタミンD3は、破骨細胞の働きを抑えて骨を壊す作用を抑制し、また、小腸からのカルシウム吸収を促し、骨を作る働きも促進します。
また、ビタミンK2も骨吸収と骨形成のバランスを整える作用があります。
- 活性型ビタミンD3製剤 :ワンアルファ®︎、アルファロール®︎、ロカルトロール®︎、エディロール®︎など)
- ビタミンK2製剤 :グラケー®︎(メナテトレノン)
④ (骨吸収抑制 + 骨形成促進)薬
- 抗スクレロスチン抗体 :イベニティ®︎(ロモソズマブ)
それでは、具体的な薬剤を見ていきましょう!
① 骨吸収抑制薬
抗RNAKL抗体製剤
エビデンス
- 2014年版のガイドラインでは、ステロイド性骨粗鬆症に対する有効性についてのエビデンスが乏しいことから推奨されていません。
- しかし、骨粗鬆症ガイドラインにおける有効性評価ではすべてA評価(骨密度上昇、椎体骨・非椎体骨・大腿骨近位の骨折抑制)であり、有効性についてはアレンドロン酸(ボナロン®︎)と大きな差はないことが予想されます。
- デノスマブ(プラリア®︎)のステロイド性骨粗鬆症の有効性については、2022年1月現在、治験が行われており、結果を待ちたいです。
推奨度C プラリア®︎(デノスマブ)
プラリア®︎は、骨密度を上げる効果は高く、圧迫骨折歴があったり、重度の骨密度低下があったりと比較的重症の方に使われています。
用法
6ヶ月に1回 60 mgを皮下注射する。
注意
プラリア®︎には、『 低Ca(カルシウム)血症 』の副作用があり、デノタスチュアブル®︎というカルシウムとビタミンD製剤の合剤を内服する必要があります。
SERM(サーム)
SERMとは、選択的エストロゲン受容体調整薬(Selective Estrogen Receptor Modulater)のことです。
エビデンス
2014年版のガイドラインでは、ステロイド性骨粗鬆症に対する有効性についてのエビデンスが乏しいことから推奨されていません。
SERMは、閉経後の女性に適応があります。
膠原病科で、処方されることは少ない薬剤かと思います。
推奨度C エビスタ®︎(ラロキシフェン)
用法
1日1回 60mg を経口投与します。
推奨度C ビビアント®︎(バゼドキシフェン)
用法
1日1回 20mg を経口投与します。
② 骨形成促進薬
ヒト副甲状腺ホルモン
副甲状腺は、甲状腺に付属している米粒大の臓器です。
通常、甲状腺周囲に4つの副甲状腺があります。
副甲状腺ホルモンは、断続的に途切れ途切れ投与することで、骨芽細胞(骨を作る)の機能が活性化し骨形成を促進させる作用を持ち、この作用が治療応用されています。
推奨度B フォルテオ®︎(テリパラチド)
(※ 推奨度は、ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン 2014年改訂版を参照)
用法
1日1回 20 μgを皮下注射。投与期間は24ヶ月間まで。
エビデンス
- テリパラチド(遺伝子組換え)は2次予防において、腰椎骨密度、大腿骨骨密度を増加させ、椎体骨折リスクを減少させた。
- その効果はアレンドロン酸より優れていた。
- ですが、一次予防に関する臨床データはなく、また投与期間が2年間に限定されているなどの観点から代替え治療薬として推奨されている。
推奨度C テリボン®︎(テリパラチド酢酸塩)
用法
週1回 56.5μgを皮下注射 投与期間は72週間まで。
エビデンス
テリパラチド酢酸塩に関してはステロイド性骨粗鬆症に関する臨床データがなく、推奨されていません。
なんで、フォルテオ®︎やテリボン®︎の投与期間は24ヶ月なのですか?
良い質問ですね。
投与上限が24ヶ月週間の主な理由は、『 骨腫瘍が発生する可能性が否定できないため 』といわれています。
また、フォルテオ®︎を24ヶ月投与した後は、生涯にわたり再投与しないこととなっています。
③ 骨吸収や形成のバランス調節薬
ビタミンK2製剤
ビタミンK2は、推奨するには十分なデータがないため、推奨度はCとなっています。
推奨度C グラケー®︎(メナテトレノン)
用法
1日3回 1回15mgを経口投与します。
注意
ワーファリン®︎(ワルファリン)を内服している方は、投与できません。
④ (骨吸収抑制 + 骨形成促進)薬
抗スクレロスチン抗体製剤
抗スクレロチン抗体製剤であるイベニティ®︎は、2019年3月に発売された、骨粗鬆症の治療薬の中では現時点で最も新しい治療薬です。
メリット
イベニティ®︎(ロモソズマブ)の特徴として、『 骨吸収抑制効果と骨形成促進効果の両者を併せ持つ 』ということです。
推奨度なし イベニティ®︎(ロモソズマブ)
(※ 2014年版のステロイド性骨粗鬆症ガイドラインでは、イベニティ®︎は発売されていなかったため、推奨度は設定されていません。)
用法
210mgを1ヵ月に1回 皮下注射する。投与期間は12ヵ月間。
イベニティ®︎(ロモソズマブ)のエビデンス
●FRAME試験(国際多施設共同第Ⅲ相臨床試験)4)
- 主要評価項目である『 12ヶ月時点での新規椎体骨折発生率 』では、イベニティ群はプラセボ(薬効なし)群と比較し、相対リスクが 73 %低下し、有意な差があるとされました。(p<0.001)
- イベニティ群では、骨形成マーカー(P1NP)は上昇するとともに骨吸収マーカー(sCTX)は低下しました。
- 『 ベースラインからの腰椎骨密度増加率 』は、投与後6ヶ月ではイベニティ群では9.7%、プラセボ群では0.4%、投与後12ヶ月ではイベニティ群では13.3%、プラセボ群では0%と、有意に増加しました。(p<0.001)
➡︎ イベニティ®︎(ロモソズマブ)は、新規椎体骨折発生率を低下させ、腰椎骨密度を有意に増加させる効果を持つ。
なんで、イベニティ®︎の投与期間は12ヶ月なのですか?
➡︎ イベニティによる骨密度の増加作用、骨折予防効果は、1年間の臨床試験成績で報告されているからです。
1年間の投与を終えた後は、別の骨粗鬆症薬に変更して、治療を継続していきます。
〈参考〉
- ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン 2014年改訂版 大阪大学出版会
- プラリア®︎(デノスマブ) 添付文書
- イベニティ®︎(ロモソズマブ) 添付文書
- Cosman,F.et al., N.Engl.J.Med., 375 (16), 1532-1543, (2016).
- 骨粗鬆症薬は、その作用機序から、主に『骨吸収抑制薬、骨形成促進薬、骨吸収と骨形成のバランス調節薬』の3種類に分けられる。
- プラリア®︎(デノスマブ)やイベニティ®︎(ロモソズマブ)は、ステロイド性骨粗鬆症に対しては推奨度こそ低いが、骨粗鬆症に対しては高い有効性が示されており、使用頻度は増えてきている。
- 現時点では、ビスホスホネート製剤や活性型ビタミンD3製剤の推奨度が高い。
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、ぜひよろしくお願いします?
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