治療薬

気をつけた方がよい併用薬【薬の飲み合わせ】

こんにちは、今回は「気をつけた方がよい併用薬」について取り上げていきたいと思います。

私も、結構たくさんの薬を飲んでいたので、薬の飲み合わせについてはいつも、かなり気になってはいました。
ぜひ、お願いしますっ!

併用薬について

お薬は、本当にたくさんの種類があり、一つ一つの併用薬を覚えるのは結構大変です。

今回は、臨床でよく使用されて、また併用される頻度も高い薬剤に絞って、大切なポイントをご紹介していきたいと思います。

それでは、早速やっていきましょう。

カロナール®︎(アセトアミノフェン)

カロナール®︎(アセトアミノフェン)は、最もよく使われる解熱鎮痛薬の一つですね。

カロナール®︎には、腎障害の副作用が出ないため、ロキソニン®︎といったNSAIDsを使用しづらい方には、とても使いやすい解熱鎮痛薬です。

ただし、鎮痛作用に用量が少ないと効果が十分発揮できないことがよくあるので、そこは注意が必要です。

そんなカロナール®︎(アセトアミノフェン)ですが、1点見落としがちな併用薬の注意点があります。

カロナール®︎の併用注意薬

カロナールによって作用が増強する可能性あり

  1. ワーファリン®︎(ワルファリン)

カロナールによって作用が低下する可能性あり

  1. サイアザイド系利尿薬
    • フルイトラン®︎(トリクロルメチアジド)など

肝障害を生じやすくなるとの報告あり

  1. 抗てんかん薬
    • テグレトール®︎(カルバマゼピン)
    • フェノバール®︎(フェノバルビタール)
    • アレビアチン®︎(フェニトイン)
  2. 抗結核薬
    • リファジン®︎(リファンピシン)
    • イスコチン®︎(イソニアジド)
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アゾール系抗真菌薬

抗真菌薬の中でも、アゾール系抗真菌薬は、使用頻度は高いのですが、薬の相互作用が多いのが特徴です。

アゾール系抗真菌薬は、『相互作用の嵐』と言われたりもします。

〈 アゾール系抗真菌薬の例 〉

  1. イトリゾール®︎(イトラコナゾール)
  2. ジフルカン®︎(フルコナゾール)
  3. プロジフ®︎(ホスフルコナゾール)
  4. ブイフェンド®︎(ボリコナゾール)

なぜ、アゾール系抗真菌薬は、相互作用が多いのですか?

よい質問ですね。

それは、アゾール系抗真菌薬の代謝に関与する『 CYP(シトクロムP450) 』という薬物代謝酵素が関係しています。

CYPには、主に以下のものがあります。

  • CYP1A2
  • CYP2C9
  • CYP2C19
  • CYP2D6
  • CYP3A4

この中でも、『CYP3A4』は、薬物代謝の50%以上に関与しているといわれ、とても重要な薬物代謝酵素です。

今回は、CYP3A4を例にして、薬物相互作用について考えてみます。

● 併用薬の作用が増強するパターン

ある薬剤がCYP3A4の阻害作用を持つ場合、CYP3A4によって代謝される併用薬の薬物代謝が阻害されます

すると、併用薬の薬物血中濃度が上昇し、併用薬の作用が強く現れる可能性があります

● 併用薬の作用が低下するパターン

ある薬剤がCYP3A4の代謝誘導作用を持つ場合は、CYP3A4によって代謝される併用薬の薬物代謝が促進されます。

すると、併用薬の薬物の血中濃度が低下し、併用薬の作用が低下する可能性があります

※ ただし、逆に、ある薬剤自体の作用が増強したり、低下する場合もありますので、詳しくはそれぞれの添付文書をご参考ください。

少し頭がごっちゃになりますね?

解釈が難しい場合は、あまり気にしないで、それぞれの薬剤で、どの併用薬に注意しなければいけないかを知ることが、まずは大切です。

イトリゾール®︎(イトラコナゾール)の併用注意薬

今回は、全部紹介すると大変なので、使用頻度の高いイトリゾール®︎について紹介していきます。

イトラコナゾールは、CYP3A4によって代謝され、またCYP3A4に対して阻害作用を持ちます。

〈 併用禁忌 〉

ハルシオン®︎(トリアゾラム)、リポバス®︎(シンバスタチン)、カルブロック®︎(アゼルニジピン)、クリアミン®︎(エルゴタミン)、セララ®︎(エプレレノン)、レバチオ®︎(シルデナフィル)、ベルソムラ(スボレキサント)、プラザキサ®︎(ダビガトラン)、イグザレルト®︎(リバーロキサバン)など

イトリゾール®︎の併用注意薬

イトリゾール®︎によって、併用薬の作用が増強する可能性あり

  1. リピトール®︎(アトルバスタチン)
  2. メドロール®︎(メチルプレドニゾロン)
  3. デキサメタゾン
  4. コルヒチン
  5. リスモダン®︎(ジソピラミド)
  6. ベンゾジアゼピン系薬剤
    • ドルミカム®︎(ミダゾラム)
    • レンドルミン®︎(ブロチゾラム)
  7. 免疫抑制剤
    • ネオーラル®︎(シクロスポリン)
    • プログラフ®︎(タクロリムス)
  8. 抗悪性腫瘍薬
    • ドセタキセルなど
  9. オピオイド系鎮痛薬
    • フェンタニル
    • オキシコドン
  10. ワーファリン®︎(ワルファリン)など他多数

イトリゾール®︎によって、併用薬の作用が低下する可能性あり

  1. 抗てんかん薬
    • フェノバール®︎(フェノバルビタール)
    • アレビアチン®︎(フェニトイン)
  2. 抗結核薬
    • リファジン®︎(リファンピシン)
    • イスコチン®︎(イソニアジド)
  3. H2ブロッカー系の胃薬
    • ガスター®︎(ファモチジン)など
  4. プロトンポンプ阻害薬系の胃薬
    • タケプロン®︎(ランソプラゾール)など

※ 重要

プロトンポンプ阻害薬(PPI)、抗悪性腫瘍薬、H2ブロッカーなどについては、その種類の薬剤全てが当てはまるわけではありません。

もちろん、記載した薬剤については、薬剤相互作用はありますが、同じ種類のものでも、相互作用が言われていないものもあります。

詳しくは、それぞれの薬剤の添付文書をご確認ください。

ネオーラル®︎ / サンディミン®︎(シクロスポリン)、プログラフ®︎(タクロリムス)

免疫抑制薬の中でも、ネオーラル®︎(シクロスポリン)やプログラフ®︎(タクロリムス)は、薬物相互作用の多いのが特徴です。

なので、これらを内服されている方は、他の内服薬をしっかりチェックすることが大切です。

ネオーラル®︎ / サンディミン®︎(シクロスポリン)とプログラフ®︎(タクロリムス)は、

CYP3A4によって代謝され、またCYP3A4の阻害作用も有します

今回は、プログラフ®︎(タクロリムス)の併用注意薬をご紹介します、

プログラフ®︎(タクロリムス)の併用注意薬

〈 併用禁忌 〉

  • 生ワクチン(麻疹ワクチン、風疹ワクチン、生ポリオワクチなど)
  • トラクリア®︎(ボセンタン)
  • スピロノラクトン®︎(アルダクトンA)、カンレノ酸カリウム®︎(ソルダクトン)

また、作用が同じため、ネオーラル®︎ / サンディミン®︎とプログラフ®︎同士を併用することも禁忌です。

タクロリムスの併用注意薬

プログラフ®︎(タクロリムス)の血中濃度が上昇し、腎障害等の副作用が出る可能性あり

  1. 抗生物質
    • エリスロマイシン
    • クラリスロマイシン
  2. アゾール系抗真菌薬
    • イトリゾール®︎(イトラコナゾール)
    • ジフルカン®︎(フルコナゾール)
    • ブイフェンド®︎(ボリコナゾール)
  3. カルシウム拮抗薬(降圧薬)
    • アダラート®︎(ニフェジピン)
    • ペルジピン®︎(ニカルジピン)
    • ヘルベッサー®︎(ジルチアゼム)など
  4. プロトンポンプ阻害薬(胃薬)
    • オメプラール®︎(オメプラゾール)
    • タケプロン®︎(ランソプラゾール)
  5. その他の薬剤
    • パーロデル®︎(ブリモクリプチン)
    • ボンゾール®︎(ダナゾール)
    • アンカロン®︎(アミオダロン)
  6. グレープフルーツジュース

プログラフ®︎(タクロリムス)の血中濃度が低下し、作用が低下する可能性あり

  1. 抗てんかん薬
    • フェノバール®︎(フェノバルビタール)
    • アレビアチン®︎(フェニトイン)
  2. 抗酸菌治療薬
    • リファジン®︎(リファンピシン)
    • ミコブティン®︎(リファブチン)

グレープフルーツはなぜ併用してはいけないの?

実は、グレープフルーツにも、CYP3A4阻害作用があります

また、CYP3A4は小腸にも存在し、CYP3A4によって代謝される薬剤は、

グレープフルーツを食べることによって、血中濃度が上昇し、薬剤効果が上昇したり、副作用も現れやすくなってしまう可能性があるのです。

以上が、CYP3A4で代謝される薬剤と、グレープフルーツを併用してはいけない理由です。

まとめ

グレープフルーツは、小腸のCYP3A4を阻害することで、CYP3A4によって代謝される薬剤に影響を与えるため、そういった薬剤を服用中の方は、食べるのを控える。

※ 重要

プロトンポンプ阻害薬(PPI)、抗てんかん薬などについては、その種類の薬剤全てが当てはまるわけではありません。

もちろん、記載した薬剤については、薬剤相互作用はありますが、同じ種類のものでも、相互作用が言われていないものもあります。

詳しくは、それぞれの薬剤の添付文書をご確認ください。

併用注意薬を使用している時の対策は何かありますか?

タクロリムス(プログラフ®︎)は、薬物代謝酵素のCYP3A4によって代謝され、さらにCYP3A4に対する阻害作用も有し、薬物相互作用の多い薬剤です。

ですが、治療をする上で、併用注意薬を使わなければいけない場面は多く存在します。

そういった場合は、

シクロスポリンのトラフ血中濃度を至適範囲内である『 5 〜 10 ng/ml 』にコントロールすることが大切です。

この至適範囲内とは、副作用を生じさせないための血中濃度です。

また、トラフ血中濃度とは、薬の定常状態における最低値の血中濃度のことです。

なので、通常は、薬を内服する直前に測定します。

外来の日に、「タクロリムスは内服しないで来てください」と言われるのは、トラフ血中濃度(最低値)を計測するためです。

プログラフ®︎の副作用をコントールするためには、トラフ値をしっかりコントロールすることが重要なのですね!

カルシウム拮抗薬

カルシウム拮抗薬は、日常診療で非常によく使われている「降圧薬」です。

カルシウム拮抗薬もまた、薬物代謝酵素である『CYP3A4』により代謝されます。

なので、CYP3A4に関与する薬剤の相互作用を注意する必要があります。

今回は、その中でも、アダラート®︎(ニフェジピン)の併用注意薬を紹介していきます。

アダラート®︎(ニフェジピン)

ニフェジピンの併用注意薬

アダラート®︎(ニフェジピン)の血中濃度が上昇し、アダラートの作用が増強される可能性あり

  1. アゾール系抗真菌薬
    • イトリゾール®︎(イトラコナゾール)
    • ジフルカン®︎(フルコナゾール)など
  2. カルシウム拮抗薬(降圧薬)
    • ヘルベッサー®︎(ジルチアゼム)
  3. タガメット®︎(シメチジン)
  4. グレープフルーツジュース

アダラート®︎(ニフェジピン)の血中濃度が低下し、アダラートの作用が低下する可能性あり

  1. 抗てんかん薬
    • アレビアチン®︎(フェニトイン)
    • テグレトール(カルバマゼピン)
  2. 抗酸菌治療薬
    • リファジン®︎(リファンピシン)

その他

影響
免疫抑制薬
ネオーラル®︎ / サンディミン®︎(シクロスポリン) 歯肉肥厚が現れやすいとの報告がある。
プログラフ®︎(タクロリムス) タクロリムスの血中濃度のが上昇することがある。
他の降圧剤
アルドメット®︎(メチルドパ)
ミニプレス®︎(プラゾシン)
相互に血圧低下作用が増強することがある。
ジゴシン®︎(ジゴキシン) ジゴキシンの血中濃度が上昇することがある。




抗てんかん薬

抗てんかん薬は、神経内科や脳外科などでよく処方される薬です。

抗てんかん薬も薬物代謝酵素の『CYP(シトクロムP450)』で代謝されます。

抗てんかん薬もたくさんありますので、今回は、抗てんかん薬のフェニトイン(アレビアチン®︎ / ヒダントール®︎)を紹介していきます。

アレビアチン®︎ / ヒダントール®︎(フェニトイン)

アレビアチン®︎ / ヒダントール®︎(フェニトイン)は、全般発作でも部分発作でも様々なタイプのてんかん発作に使用されています。

アレビアチン®︎ / ヒダントール®︎(フェニトイン)は、

CYP2C9と一部CYP2C19で代謝され、またCYP3A、CYP2B6の誘導作用を有します。

CYP3A4は、今までよく出てきましたが、CYP2C9とかCYP2C19とか色々出てくると訳分からなくなります?

仰る通りですね。

今回は、CYP3A4が、薬物代謝酵素の大部分を占めており、これだけ覚えていただければよいです。

その他は、「CYP3A4とは違うんだな」と思ってもらうくらいで大丈夫です。

〈 併用禁忌 〉

  • アドシルカ®︎(タダラフィル)
  • オプスミット®︎(マシテンタン)
  • リアメット配合錠(アルテルメル・ルメファントリン)など
フェニトインの併用注意薬

アレビアチン®︎ / ヒダントール®︎(フェニトイン)の血中濃度が上昇し、フェニトインの作用が増強する可能性あり

  1. エクセグラン®︎(ゾニサミド)
  2. プログラフ®︎(タクロリムス)
  3. アンカロン®︎(アミオダロン)
  4. アロプリノール(尿酸治療薬)
  5. アゾール系抗真菌薬
    • ジフルカン®︎(フルコナゾール)
    • ブイフェンド®︎(ボリコナゾール)など
  6. ヘルベッサー®︎(ジルチアゼム)(カルシウム拮抗薬:降圧薬)
  7. タガメット®︎(シメチジン)(H2ブロッカー系胃薬)
  8. オメプラール®︎(オメプラゾール)(プロトンポンプ阻害薬:胃薬)
  9. 三環系抗うつ薬
    • トフラニール®︎(イミプラン)など
  10. 四環系抗うつ薬
    • ルジオミール®︎(マブロチリン)など

アレビアチン®︎ / ヒダントール®︎(フェニトイン)の血中濃度が低下し、フェニトインの作用が低下する可能性あり

  1. 抗酸菌治療薬
    • リファジン®︎(リファンピシン)
  2. シスプラチン
  3. オンコビン®︎(ビンクリスチン)
  4. シプロキサン®︎(シプロフロキサシン)(抗菌薬)

その他

その他も、アレビアチンと相互作用を来たす薬剤は多く、詳しくは添付文書をご参照ください。

アレビアチン®︎ / ヒダントール®︎(フェニトイン)の添付文書へのリンク

禁忌薬は併用注意薬があったら対応はどうすればよいですか?

実際に、相互作用ある薬を内服している場合、その対応をどうしたらよいかはとても気になるところですよね。

併用禁忌薬について

併用禁忌の場合は、問答無用に、その併用薬を内服してはいけません。

また、服用する薬剤は、2つの薬のどちらが重要である薬剤かによって、使用する薬剤を決めます。

例えば、

イトリゾール®︎(イトラコナゾール)を飲んでいる方で、リポバス(シンバスタチン)を飲みたいなと思った場合は、2つの薬剤は併用禁忌であるため、

患者さんが真菌感染症の治療をしっかり行いたい場合は、イトリゾール®︎を選択して使用します。

併用注意薬について

併用注意の場合は、禁忌というわけではないので、臨床上、必要性を考慮し、患者さんにもしっかり説明した上で、併用することは十分考えられます。

その場合は、

  • 相互作用のある併用薬の使用については、主治医としっかり相談し納得した上で使用すること。
  • また、併用中は、症状や血液検査などから、有害事象が出ていないか定期的にチェックします。
  • 併用することで、薬剤の血中濃度に影響が出るため、用量については十分検討する。

以上のことを守りながら、薬の相互作用によるデメリットを回避しながら、治療をしていくことが大切です。

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“今回のまとめ”
  1. 薬物相互作用には、主にCYP(シトクロムP450)に関与する薬剤が関係している。
  2. その中でも、CYP3A4は最も多く薬物代謝に関与し、まずはこの酵素に関与する薬剤を覚える。
  3. それぞれの薬剤が、微妙に関係が異なることもあり、添付文書をしっかり確認する。

今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、ぜひよろしくお願いします?

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