こんにちは。今回は、乾癬の特徴について取り上げていきたいと思います。
よろしくお願いしますっ!
乾癬について
乾癬は、厚い銀白色の鱗屑を伴った皮疹を特徴とする皮膚の自己免疫疾患の一つです。
日本の乾癬の患者さんの数は、『40〜50万人』1)2)と言われ、自己免疫疾患の中でも患者さんの数も多い疾患です。
好発年齢は青年〜中年で、幅広く好発します。
乾癬には以下のように4つの型があります3)。
- 尋常性乾癬 90 %
- 滴状乾癬 約 4%
- 膿疱性乾癬 非常にまれ
- 乾癬性紅皮症 約 1%
(https://www.dermatol.or.jp/qa/qa14/q01.html より引用)
症状について
厚い銀白色の鱗屑を伴った紅斑
(https://medicalnote.jp/diseases/%E4%B9%BE%E7%99%AC より引用)
乾癬は、上図のように、銀白色に光った鱗屑を伴った紅斑を認めるのが特徴です。
強い掻痒感を認めることもあります。
鱗屑 (りんせつ)とは?: 鱗屑とは、角質が著しく厚くなり、多数の角質細胞が一塊となって鱗状の白色片を形成したものです。
関節炎 / 関節痛
乾癬では、約15%の方で関節炎/関節痛を認めます。
関節痛の特徴については、下の項目で詳しくご紹介します。
検査のポイント
生検
正常皮膚の構造4)
乾癬は、皮疹の目視にて診断される場合もありますが、中には目視だけでは診断が難しい場合もあります。
そのためには、皮膚生検を行い、実際に皮膚組織を顕微鏡で観察します。
乾癬の皮膚病理は、角層〜表皮に注目します。
角層:『不全角化』と『過角化』
角層では、『不全角化』と『過角化』を認めます。
通常、角層の角化細胞は、脱核化といって核を伴っていません。
しかし、乾癬の角化細胞は、脱核化せず核を持っています。これを『不全角化』といいます。
また、角層も非常に厚くなっており、これを『過角化』といいます。
角層の不全角化や過角化5)
表皮:『表皮の肥厚』と『棍棒状延長』
乾癬の表皮は、肥厚し、また棍棒状に延長しているのが特徴です。
表皮の肥厚と棍棒状延長5)
膿疱性乾癬の特徴
角層直下に『無菌性膿疱』と『コゴイ海綿状膿疱』を認める
膿疱性乾癬の特徴として、角層直下に『無菌性膿疱』や『コゴイ海綿状膿疱』を認めます。
無菌性膿疱はマンロー微小膿瘍とも呼ばれます。
また、表皮の有棘層という部分には、好中球浸潤による海綿状膿疱を認めます。
海綿状とは、スポンジ状ということです。「膿疱」は好中球が浸潤していることを指します。
角層直下の無菌性膿疱(マンロー微小膿瘍)5)
コゴイ海綿状膿疱の病理画像6)
血液検査
一般的に、乾癬で特徴的な血液検査の所見はありません。
ただし、『膿疱性乾癬』や『乾癬性紅皮症』では、血液検査に特徴的な所見を認めることがあります。
それは、『WBC上昇(白血球)、赤沈亢進、低カルシウム血症、低蛋白血症』をきたすことがあることです。
また、乾癬性関節炎ではリウマトイド因子(RF)は通常陰性です。
WBC上昇(白血球)、赤沈亢進
WBCや赤沈は、炎症の度合いを表しています。
赤沈(血沈)は、『赤沈(血沈)1時間値』に注目します。正常値は、「 2〜15 mm/h 」です。
低蛋白血症
血液中のタンパクは、『 TP、Alb 』に注目します。
TPは、総蛋白質(total protein)のことで、正常値は「 6.5〜8 g/dl 」です。
Albは、アルブミンのことで、正常値は「 3.8〜5.3 g/dl 」です。
いずれの値も、炎症状態が続くと産生が低下するため、低蛋白血症を認めます。
皮膚検査
Auspitz現象(アウスピッツ現象)
Auspitz現象とは、乾癬の鱗屑を無理にめくると点状の出血が見られる、乾癬に特徴的な現象のことをいいます。
Kobner現象(ケブネル現象)
Kobner現象とは、健常皮膚部に摩擦,感染,紫外線などの刺激が加わった後、刺激部位に一致して原疾患と同じ皮疹が生じる現象のことをいいます。
この現象は、乾癬以外でも認めるため、特異性が高い現象ではありません。
- 乾癬
- 扁平苔癬
- サルコイドーシス
- 扁平疣贅など
診断について
乾癬の診断は、特徴的な臨床症状があれば診断は可能です。
ですが、乾癬の確定診断や鑑別診断のためには、皮膚生検による病理診断が行われます。
ここで、角層の不全角化や過角化、表皮の棍棒状延長を認めれば乾癬に矛盾しない皮膚診断となります。
膠原病科からみた乾癬は?
膠原病科は、乾癬の皮疹を直接診ることは少ないですが、関節症性乾癬を診ることが多いです。
乾癬の皮疹は落ち着いているけど、関節痛が継続していたり、また逆も然りで、関節痛はないけど皮疹が継続している患者さんもいます。
乾癬による関節炎の特徴
乾癬による関節炎の特徴として、
- 関節の炎症だけでなく、腱の付着部にも炎症を認めます。
- 手指の第一関節に関節痛を認めるのが関節症性乾癬の特徴です。
① 付着部炎を認める
乾癬による関節炎の特徴として、関節内の炎症だけでなく、腱の付着部の炎症(通称:付着部炎)を認めることも特徴の一つです。
関節エコーでみた、腱付着部炎7)
エコー画像を見ると、腱付着部に炎症を起こしているのがわかります。付着部というのは、腱と骨がくっついている部分です。
手指の第一関節に関節痛を認める。
関節症性乾癬の特徴として、手指の第一関節(通称:DIP)に関節痛や関節炎を認めるのが特徴です。
これは、一般的に関節リウマチには認めない所見です。
手指の第一関節(DIP)に関節痛を認める、その他の原因として『手指変形性関節症』があります。
第一関節の手指変形関節症は『へバーデン結節』とも呼ばれます。
第一関節に関節痛を認めた場合は、主に関節症性乾癬か手指変形性関節症を疑います。
乾癬による手指の第一関節の炎8)
写真からは、手指の第一関節が赤く腫れていることがわかります。
参考
1)Kubota K, et al.:BMJ Open. 2015;5(1):e006450.
2)照井正ほか:臨床医薬. 2014;30(3):279-285.
3)Takahashi H, et al: J Dermatol, 38:1125, 2011
5)https://shimizuderm.com/textbook03/pdf/15-20.pdf
6)https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/upload_files/hanpatu3.pdf
7)https://www.med.jrc.or.jp/hospital/clinic/tabid/125/Default.aspx
8)https://www.ashitano-kansen.jp/about-psoriasis/type.html
9)清水 宏 新しい皮膚科学 第3版 中山書店
- 乾癬は、国内に『40〜50万人』の患者さんがいる、メジャーな自己免疫疾患である。
- 乾癬は、角層や表皮が肥厚した疾患である。
- 関節症性乾癬は、付着部炎や手指の第一関節に関節痛を認めるのが特徴である。
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、よろしくお願いします?
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