こんにちは、今回は『 ステロイドの副作用の出現時期 』について取り上げていきたいと思います。
ステロイドは、多くの生理・薬理作用を持ち、リウマチ・膠原病疾患には、強力な抗炎症作用および免疫抑制作用を期待して使用されます。
しかし、その強力な薬理作用とともに、多彩な副作用の出現を認めます。
いつ頃にどういった副作用を認めるかは、ある程度予測できることなので、今回は副作用の出現時期についてご紹介していきたいと思います。
ステロイドの副作用の出現時期は?
開始当日から | 不眠、うつ、精神高揚、食欲亢進 |
数日後から | 血圧上昇(10 mg以上) 浮腫、電解質異常 |
2〜3週間後から | 副腎抑制、 血圧上昇 |
1ヶ月後から | 易感染性(10 mg以上で用量が多くなるほどリスク上昇) 中心性肥満・ムーンフェイス、多毛、ざ瘡(ニキビ) 無月経 |
1ヶ月以上後から | 紫斑、皮膚線条、皮膚萎縮 ステロイドミオパチー(10 mg以上) |
長期的に | 骨壊死(20 mg以上 x 1ヶ月以上) 骨粗鬆症(5 mg以上 x 3ヶ月以上) 白内障(長期使用で 5 mgでもリスクあり) 緑内障(10 mg以上) |
〈 ステロイドの副作用の出現時期の目安1) 〉
ステロイドによる免疫機能低下による易感染性は、開始後1ヶ月ほど経過してからリスクが上昇してきます。
特に、日和見感染症は重要で、ニューモシスチス肺炎、サイトメガロウイルス、結核、その他真菌感染症の発症がないか注意していきます。
中心性肥満やムーンフェイスは、開始後1ヶ月ほどして認めてきます。
中心性肥満とは、コルチゾール(ステロイド)の影響により体幹に過剰な脂肪がつき、肥満傾向となる状態です。用量が多いほど、症状も出現しやすく、減量に伴い徐々に改善を認めます。
また、ステロイドによる食欲亢進のため、中心性肥満などはさらに悪化しやすくなるので、食べ過ぎにはくれぐれも気をつけましょう。
ステロイドの副作用の頻度が多いものは何ですか?
頻度が高い | 糖尿病、脂質代謝異常、高血圧 消化性潰瘍(胃潰瘍など) 骨粗鬆症 易感染性 中心性肥満・ムーンフェイス |
比較的低頻度 | 大腿骨頭壊死、白内障、緑内障、皮膚萎縮、ざ瘡(ニキビ)、多毛、不眠、ステロイドミオパチー、精神症状、多血症、無月経、性欲低下、頭髪脱毛など |
〈 ステロイドの副作用の頻度 〉
以上は、ステロイドによる副作用の頻度を表した表ですが、出現については個人差も大きいため、目安として考えてください。
ステロイドの副作用の予防について
ある程度予防可能 | 骨粗鬆症、ある種の感染症(ニューモシスチス肺炎、結核など) |
高リスクな方で早期発見・治療が必要 | 耐糖能異常、眼合併症、消化性潰瘍(胃潰瘍など) |
減量によって改善を期待できるもの | 浮腫、精神症状、中心性肥満・ムーンフェイス 糖尿病、脂質異常症、高血圧 |
〈 ステロイドの副作用の予防について 〉
ステロイドの副作用については、予防可能なものについては積極的に予防していきます。
通常、胃薬(プロトンポンプ阻害薬、H2受容体拮抗薬)、ニューモシスチス肺炎予防の抗菌薬(ST合剤など)、骨粗鬆症予防薬(ビスフォスフォネート製剤、活性型ビタミンD3薬など)は、治療開始後に順次併用することが多いです。(ステロイドの量によっても多少異なります)
また、ステロイド糖尿病、高血圧、高脂血症などを認めた場合は、それぞれ個別に治療薬などで対応します。ステロイドの減量に従い、症状も徐々に改善してきます。
易感染性について
ステロイドの易感染性については、通常の細菌性肺炎などに対する予防の抗菌薬投与は行いませんが、ニューモシスチス肺炎については、ST合剤(ダイフェン®︎、バクタ®︎)にて予防抗菌薬投与を行います。
これは、何故かというと、ニューモシスチス肺炎は急激に症状が悪化し、致死的となる可能性がある重症肺炎であるため、しっかり予防することが重要となるからです。
しかし、ST合剤を予防内服にて、ほぼその発症を防ぐことができるため、予防効果は非常に高いです。
ST合剤の用法は、施設間によって多少違いがありますが、「 1〜0.5 錠を毎日内服 」、「 週2回 1回1錠 朝夕で内服 」といった形で使用します。
ただしST合剤は、皮疹や腎機能低下、肝障害など副作用も多く、内服が困難な場合は、サムチレール®︎(アトバコン)、ペナンバックス®︎(ペンタミジン)の吸入が検討されます。
少し専門的になりますが、ステロイドのプレドニン®︎(プレドニゾロン) 15 mg を2週間以上 内服により細胞性免疫が低下すると言われており、このタイミング位からニューモシスチス肺炎などの日和見感染症のリスクが増加してきます。
なので、ST合剤予防の開始タイミングは、ステロイド開始後2週間程経過してからまたはそれ以内に予防開始します。
感染症の予防のためには、こまめな手洗いうがいと、TPOに応じてマスクの着用を行うことです。
そして、体調が十分でない時は、無理な外出は避けて十分に休養を取ることも大切です。
ステロイドの治療効果を受けながら、多くの副作用を適切に予防していくことが大切です。
〈参考〉
- 1) West SG:Glucocorticoids-Systemic and Injectable, Rheumatology Secrets 3 ed, ELSEVIER, 2014.
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。参考になりましたら、高評価、コメントを頂けましたら嬉しいです?またTwitterのフォローもよろしくお願いします?
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