血管炎

顕微鏡的多発血管炎ってどんな病気?【MPA】


〜 The Point 〜

  1. MPAは小型血管炎に該当し、ANCA関連血管炎の一つで、その中でも最も頻度の高い血管炎である。
  2. MPAに特徴的な症状は、肺、腎、末梢神経症状、皮疹が特徴的である。
  3. MPAはMPO-ANCAが上昇するのが一般的である。(PR3-ANCAが上昇する場合もある)

こんにちは、今回は顕微鏡的多発血管炎について取り上げていきます。顕微鏡的多発血管炎は、英語ではMicroscopic Polyangiitisと表記され、MPAと略称することが多いので、今回も所々MPAと表記しています。

MPAってどんな病気?

顕微鏡的多発血管炎(MPA)は、血管サイズでは小型血管炎に該当し、ANCA関連血管炎の一つです。頻度としては、ANCA関連血管炎の中で最も多く、国内では10000人程度と言われています。

また、ANCA関連血管炎は比較的高齢の方に多い疾患であり、高齢化に伴い増え続けている疾患です。

ANCA関連血管炎は、ANCAと呼ばれる「抗好中球細胞質抗体」が血管炎の原因となりますが、ANCAの中でも特に『MPO-ANCA』が上昇するのが特徴です。(ただし、一部にMPO-ANCA陰性でPR3-ANCA陽性のMPAの方もいます)

どんな症状がありますか?

MPAの症状は、発熱、体重減少、全身倦怠感といった「全身症状」のほかに、肺、腎、末梢神経症状、皮疹を認めるのが特徴です。

以下に、MPAで特徴的な症状の一覧をまとめました。

症状頻度
全身症状発熱、体重減少、全身倦怠感80%
間質性肺炎、肺胞出血70%
急速進行性糸球体腎炎80-90%
末梢神経症状しびれ、筋力低下50%
皮疹紫斑、皮膚潰瘍、網状皮斑(リベド)、皮下結節60%
その他関節痛、筋痛50%

肺症状について

肺では、間質性肺炎や肺胞出血が特徴的です。

間質性肺炎では息切れが出ますが、肺胞出血を起こすと血痰、呼吸困難となり重篤な状態になります。

肺胞出血を認める疾患において、ANCA関連血管炎は代表的疾患であり、ある日突然喀血をして発症する場合もあります。肺全体に出血が起こり急激に呼吸状態が悪くなる場合や、肺での出血が気管支につまり窒息することで呼吸状態が悪くなる場合があり、症状の中でもとても重篤になります。

CTでの間質性肺炎像

腎症状について

腎臓では、急速進行性糸球体腎炎(RPGN)を認めます。急速進行性糸球体腎炎とは、ちょっと聞き慣れない言葉かもしれないですが、数日〜数週間の単位で腎障害が急激に進行し治療が間に合わないと「腎不全」にまで至ってしまう恐ろしい症状です。

症状としては下肢の浮腫が出現します。

では、糸球体腎炎とはなんでしょうか?

糸球体とは、腎臓にある血液から尿を濾過するための最小の器官のことです。糸球体は、表面積を大きくするために、毛細血管レベルの血管が張り巡らされています。MPAではこれらの血管に炎症が起きることで、糸球体腎炎が起きます。

つまり、腎臓の最小単位の糸球体において炎症が起きているのが糸球体腎炎です。糸球体は、血液から身体の不純物を排出するための重要な器官ですから、ここに炎症が起きることで、タンパク尿や血尿が起きてきます。

糸球体の模式図

末梢神経障害について

末梢神経障害では、特に下肢,足先のしびれや動かしにくい,力が入りにくい(筋力低下)といった症状を認めます。




検査について

顕微鏡的多発血管炎(MPA)で大切な検査は、「血液検査、尿検査、胸部レントゲン、CT検査、生検」になります。

血液検査のポイント

血液検査でチェックするものは、炎症、貧血、腎機能、ANCAを見ます。

炎症は、「CRP、ESR 1hr(赤沈1時間値)、WBC」に注目します。血管炎の存在は、採血で炎症があることがとても重要なので、基本的に治療開始前のCRP 1 以下のANCA関連血管炎はないと思って大丈夫です。

貧血は、「Hb(ヘモグロビン)」に注目します。MPAによる貧血の原因は、一般的な鉄欠乏性貧血などの可能性が除外されたら、「慢性炎性による貧血」もしくは「消化管出血による貧血」の可能性があります。消化管病変がなければ、通常は慢性炎症による貧血になります。

腎機能は、「Cre(クレアチニン)」に注目します。MPAで腎機能が悪化する原因は、急速に腎障害を認める急速進行性糸球体腎炎という病態なので、普段の腎機能(健康診断などで取られたもの等)よりも急激に悪化しているかどうかをチェックします。

また、eGFRでも腎機能はわかりますが、少し専門的なので、腎機能はCreを把握すれば十分かと思います。

ANCAは、上述の通り、MPAの場合はMPO-ANCAが上昇しますが、PR3-ANCAが上昇することもあるため、上昇した方をチェックします。

尿検査のポイント

MPAで起きる急速進行性糸球体腎炎の評価のために、尿検査はとても大切で、主に血尿(潜血)、タンパク尿を確認します。

急速進行性糸球体腎炎は、血尿が強いのが特徴で、タンパク尿より血尿が派手に出ているなという形で評価をします。

画像検査のポイント

まず、胸部レントゲンでは間質性肺炎がないかをチェックします。間質性肺炎はレントゲンでは、「すりガラス影」と呼ばれており、すりガラスのように「薄く白い影」で映ります。

また、CT検査ではより間質性肺炎や肺胞出血の所見がはっきりと知ることができます。間質性肺炎はCT検査でも、すりガラス影で映ります。

生検のポイント

MPAでの生検は、腎生検や皮膚生検を行います。

急速進行性糸球体腎炎や尿検査で血尿やタンパク尿といった糸球体腎炎の所見が疑われる場合は、可能なかぎり腎生検を行います。ただし、腎生検は生検の中でもリスクが大きい検査であり、また腎臓内科がないなど全ての施設で実施可能なわけではないため、腎生検を行わずに治療を先行する場合もあります。

腎病理検査では、ANCA関連血管炎で特徴的な「半月体形成性糸球体腎炎」の所見を確認します。

皮膚生検では、紫斑などを認めた箇所を生検します。病理検査によって、血管炎の所見があるかどうかを確認します。

顕微鏡的多発血管炎を診断する

診断自体は医師が判断しますが、どういった診断基準でMPAが診断されるのかを知っておくことは大切かと思いますので、1998年厚労省の診断基準を載せました。

主要症候
1. 急速進行性糸球体腎炎
2. 肺胞出血もしくは間質性肺炎
3. 腎・肺以外の臓器症状:紫斑、皮下出血、消化管出血、多発性単神経炎など
主要組織所見
細動脈・毛細血管・後毛細血管細静脈の壊死、血管周囲の炎症性細胞浸潤
主要検査所見
1. MPO-ANCA
2. CRP
3. 蛋白尿・血尿、血清BUN、Crの上昇
4. 胸部レントゲンにて肺胞出血を疑う浸潤影や間質性肺炎像
厚生労働省の顕微鏡的多発血管炎の診断基準(1998年)
  • 確実(definite):主要症候の2項目+主要組織所見、主要症候の1.および2.+MPO-ANCA陽性
  • 疑い(possible):主要症候の3項目、主要症候の1項目+MPO-ANCA陽性
  • 鑑別疾患:抗GBM抗体関連血管炎、IgA血管炎(旧名Henoch-Schonlein紫斑病)、クリオグロブリン血管炎)、白血球破砕性血管炎、ベーチェット病、SLE、悪性関節リウマチ、皮膚筋炎、強皮症、Sjogren症候群、MCTDなど

今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。参考になりましたら、高評価、コメントを頂けましたら嬉しいです?またTwitterのフォローもお願いします?

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