今回は、SLEの症状の一つである、『神経精神ループス』について取り上げていきます!
〜 The Point 〜
- 神経精神ループスは、重症臓器病変である。
- 治療薬には、ステロイドパルス、高用量ステロイド、エンドキサン®︎(シクロフォスファミド)が使われる
- 後遺症を残さないため、神経精神症状を認めた場合は、すぐに医療機関に相談する。
神経精神ループスは、「CNSループス」とか「NPSLE」と呼んだりします。少しややこしいですが、基本的にどれも同じ意味です。
症状はどういったものがありますか?
神経精神ループスは、実に様々な症状を認めます。
中枢神経症状
頭痛、痙攣重積発作、意識消失発作、脳神経障害、脊髄障害、無菌性髄膜炎などを認めます。頻度は、頭痛は50%以上と多いですが、それ以外は、概ね10%前後です。
精神症状
認知機能障害、抑うつ、不安障害、統合失調症様症状(幻覚、妄想など)などを認めます。頻度は35〜60%といわれています。
末梢神経症状
しびれ、感覚障害、自律神経障害などを認めます。頻度は20〜30%程度といわれています。
全身症状
神経精神症状と共に、発熱、倦怠感、体重減少やリンパ節腫脹といった全身症状を認める場合があります。
病態は?
SLEによって、脳内に血管炎が起きたり、神経細胞に対する自己抗体の産生、免疫細胞やサイトカインが直接脳を障害することによって生じます。
抗リン脂質抗体症候群(APS)を合併していた場合、APSによる脳梗塞を認める場合もあります。
APSとは、抗リン脂質抗体により、血栓ができやすくなってしまう病気です。また、SLEに合併しやすい病気でもあります。
検査は何をしますか?
血液検査では、補体(C3,C4,CH50)、抗ds-DNA抗体、抗DNA抗体やCRPなどから、SLEの活動性がないかチェックします。
また、CTやMRIも行います。
神経精神ループスが強く疑われる場合は髄液検査や脳波検査も行います。
髄液検査は、怖いですよね?
大事な検査なので、麻酔をして患者さんにはなるべく痛みが無いように心がけています。
髄液では、細胞数の上昇がないか、特にリンパ球の上昇がないかやIL-6という炎症性サイトカインの上昇がないかチェックします。(リンパ球ではなく、好中球が優位な場合もあります。)
神経精神ループスのMRI画像
治療は?
血液検査、CT、MRI、髄液検査、脳波検査から、神経精神ループスかどうかを総合的に判断します。
他にその他の原因として,感染症による髄膜炎、薬剤性による脳障害などがあります。
神経精神ループスの可能性が高い場合、ステロイドパルスまたは高用量ステロイドを行います。エンドキサン®︎(シクロフォスファミド)の点滴も併用します。
また、症状に合わせて、抗痙攣薬や抗うつ薬も使用する場合があります。
注意点は?
神経精神ループスは、治療が遅れると重篤な後遺症が残る可能性があります。
なので、頭痛、痙攣、意識障害、しびれといった症状を認めた場合は、すぐに病院に相談されることをお勧めします。
〈参考〉
- 金城光代, 本音で語る!リウマチ・膠原病の治療薬の使い方, 洋土社.
- 三森経世, 桑名正隆, 分子標的/Bio時代のリウマチ・膠原病治療ストラテジー, 文光堂.
- 川畑仁人, リウマチ・膠原病治療薬ハンドブック, 文光堂.
- 全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019, 南山堂.
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