貧血の原因は、鉄欠乏性貧血や溶血性貧血など原因はたくさんありますが、実は、炎症が持続することによっても、貧血の原因となります。
炎症が持続することで、貧血となるのは知りませんでした。詳しく知りたいです!
慢性炎症が続くと貧血になる
貧血の原因の一つとして、
『 慢性炎症による貧血 』があります。
リウマチや潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患や、悪性腫瘍などによる慢性炎症や持続すると、次第に貧血も進行していきます。
今回は、この慢性炎症による貧血について、簡単に解説していきます。
慢性炎症による貧血を起こす疾患
まず、慢性炎症による貧血を起こす疾患には、どういったものがあるのでしょうか。
〈 慢性炎症による貧血を起こす疾患 〉
- 膠原病などの自己免疫疾患
- 関節リウマチ、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、クローン病 etc…
- 感染症
- 悪性疾患
- その他、慢性炎症性疾患
血液検査での慢性炎症による貧血の見方
血液検査では、どのような結果の時に、慢性炎症による貧血となるのですか?
まなみさん、ご質問ありがとうございます。
では、血液検査での慢性炎症の見方についてみていきましょう。
STEP ❶ まずは、貧血があることを確認する
まずは、貧血があることを確認します。
貧血の有無は、『 Hb:ヘモグロビン 』に注目します。
〈 基準値 〉 | Hb (g/dL) |
男性 | 13 ~ 16 (g/dL) |
女性 | 12 ~ 14.5 (g/dL) |
※ 基準値は、施設によって多少異なります。
また、慢性炎症による貧血は、小球性〜正球性貧血を示すので、『 MCV(赤血球の大きさの指標)』にも注目します。
- 小球正貧血: MCV < 80
- 正球性貧血: MCV 81 〜 100
STEP ❷ 次に、貧血が慢性炎症によるものか確認する。
貧血を認めた場合は、次にそれが慢性炎症によるものかを考えます。
慢性炎症による貧血をみるべき項目は、3つです。
- Fe:鉄
- フェリチン:貯蔵鉄の指標
- TIBC:総鉄結合能
そして、この3つの血液検査の項目が、どう変化するかが大切です。
慢性炎症による貧血の場合は、
Fe ⬆︎、フェリチン ⬆︎(~正)、TIBC ⬇︎
のように変化します。
これを、同じ小球性貧血の形をとる、鉄欠乏性貧血と比べて見てみましょう。
〈 慢性炎症による貧血 〉 | 〈 鉄血欠乏性貧血 〉 | |
⬆︎ | Fe | ⬇︎ |
⬆︎(~正) | フェリチン | ⬇︎ |
⬇︎ | TIBC | ⬆︎ |
小球性貧血(~正球性貧血) | 赤血球の大きさ | 小球性貧血 |
※ 鉄欠乏性貧血と合併した場合は、このように上手く鑑別できない場合があります。
慢性炎症による貧血と鉄欠乏性貧血は、基本的に逆の動きをするのがポイントですね!
慢性炎症による貧血の機序について
では、なぜ慢性炎症によって、貧血が起きるのでしょうか。
それには、炎症によって生じる炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1β、IL-6、IFNβなど)と肝臓から産生されるヘプシジンが関係しています。
主に以下の機序によって、貧血をきたします。
身体で炎症が起きる
⬇︎
炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1β、IL-6、IFNβなど)が分泌される
⬇︎
炎症性サイトカインが肝臓に作用し、肝臓でヘプシジンの合成が亢進する
⬇︎
ヘプシジンが、① 鉄の再利用を阻害する、また ② 小腸からの鉄の吸収を阻害する
⬇︎
これにより、鉄の利用障害(Fe ⬆︎、フェリチン ⬆︎)が起き、ヘモグロビンの合成が出来なくなる
⬇︎
ヘモグロビンが低下することで、赤血球が作れなくなる(慢性炎症による貧血が起きる)
また、慢性炎症による炎症性サイトカインの作用によって、エリスロポエチンの産生低下と骨髄の反応性が低下することも、貧血の原因となっています。
慢性炎症による貧血では、Feは足りているが、炎症サイトカインによって鉄の利用障害が起きて、上手く鉄を利用できず、ヘモグロビンを合成することができないため貧血が起きる。
治療は?
慢性炎症による貧血で、大切なことは、
炎症の元となる原疾患の治療を行い、炎症を抑えることです。
炎症を抑えることができれば、炎症性サイトカインの産生が抑えられるため、貧血が改善されます。
また、エリスロポエチン(EPO:主に腎臓で賛成される赤血球産生を促進する造血因子)の低下や、鉄欠乏性貧血の合併があった場合は、EPO製剤や鉄剤を併用します。
- エリスロポエチン(EPO)製剤
- 注射:エスポー®︎、エポジン®︎、ネスプ®︎、ミルセラ®︎
- 鉄剤
- 内服:フェロミア®︎(クエン酸第一鉄)、フェロ・クラデュメット®︎、フェルム®︎、インクレミン®︎
- 注射:フェジン®︎、フェインジェクト®︎
※ エリスロポエチン製剤は、ヘモグロビン(Hb) 12 g/dlを超えると、静脈血栓塞栓症、心筋梗塞などの有害事象を生じる可能性があるため、Hbをしっかりモニタリングします。
私もリウマチの炎症による貧血がありましたが、しっかりとリウマチを治療することが、貧血の改善につながるのですね!
慢性炎症による貧血の例
- 関節リウマチ患者さんで、血液検査で慢性的に CRP 1 ~ 2 が持続し、Hb 10 ~ 12と軽度の貧血を認めている。
- 高安動脈炎と診断された時に、炎症によって Hb 9.5 g/dLと中等度の貧血を認めている。
- 潰瘍性大腸炎の消化管出血(血便)や大腸炎の炎症によって、貧血を認めている。
- 悪性腫瘍により、慢性的にCRP上昇があり、それと共に貧血も認めている。
- 膠原病などの自己免疫疾患、悪性腫瘍、感染症などによる慢性炎症によって、貧血が起きる。
- 慢性炎症による貧血は、炎症性サイトカインによってヘプシジンの産生が亢進し、ヘプシジンによって鉄の利用障害が起こることによる。
- 治療は、原疾患の治療がなによりも大切である。
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、よろしくお願いします?
リンク
※個人個人で症状の違いがあるため、詳細な治療などにつきましては直接医療機関へお問い合わせください。