こんにちは、今回は『SLEにおけるステロイド中止後の再燃のリスクファクター』 について取り上げていきたいと思います。
私も主治医に、今後ステロイドを中止できたらしたいと言われていましたが、ステロイドを中止した後どう言った場合に再燃しやすいのか、気になります。
- SLE:全身性エリテマトーデス
SLEにおけるステロイド中止後の再燃のリスクファクターについてのシステマティックレビューとメタアナリシス
2022年1月にLupus Science & Medicineより、『 SLEにおけるステロイド中止後の再燃のリスクファクターについてのシステマティックレビューとメタアナリシス 』が報告されました。
SLEでは、維持療法中のステロイドは、まず最初に中止すべき薬剤として推奨されていますが、一定数再燃を起こしてしまう場合があります。
なので、ステロイド中止後の再燃のリスクファクターを把握することは臨床上重要な手がかりとなります。
今回の報告は、この再燃のリスクファクターをシステマティックレビューとメタアナリシスで解析したもので、患者さんにも臨床する立場としても大変参考となるかと思います。
メタアナリシスとは?
そもそもメタって何ですか?
『 メタ 』って少しイメージしずらいですよね。
メタとは、俯瞰するという意味の言葉です。
なので、メタアナリシス、メタ解析とは、それぞれの研究(ランダム化比較試験など)を一歩引いて俯瞰して総合的に解析した研究ということになります。
● メタアナリシス
メタアナリシスとは、ある程度似ている研究の複数の結果をまとめ、ある要因が特定の疾患や結果と関係するかを解析する統計手法のことで、下のピラミッドにあるようにエビデンスレベルが高い統計解析となります。
(画像引用:https://netdekagaku.com/systematic-review-metaanalysis/)
方法
まずは、方法から見ていきます
- 2021年7月9日までのPubMed、EMBASE、Cochrane Library、Scopusのデータベースから、ステロイド中止後のSLE患者さんの再発の予測因子に関する研究を系統的に検索。
- 3057件の論文と、学術会議の参考文献リストと抄録から9件の追加タイトルから、適格性を評価し、最終的に9件の論文が選ばれた。
9つの研究の特徴
- 9つの研究で、合計635人のSLE患者さんが含まれた。
- 99.5 %(632/635)は、ステロイド中止前に臨床的寛解を達成していた。
- 平均罹患期間:48〜188か月
- ステロイド中止前の平均寛解期間:3か月〜68か月
- ステロイド中止後の再燃した割合は、21.4 %(135/632)でした。
結果
それでは、結果を見ていきます。
ステロイド中止後の再燃リスクが有意に関連があった因子は何ですか?
まずは、有意にステロイド中止後の再燃リスクと関連があった因子についてです。
❶ 血清学的に活動性があるが、臨床的には落ち着いている
今回のメタアナリシスで再燃リスクと有意に関連があったファクターは、
『 血清学的に活動性があるが、臨床的には落ち着いている(SACQ)』でした。
血清学的に活動性があるが、臨床的には落ち着いているとは、
血液検査上は、低補体血症や抗ds-DNA抗体陽性があるが、臨床的寛解を達成しているSLE患者さんのことです。
つまり、見た目は問題ないけど、血液検査上は活動性がある状態になります。
この状態を、『 SACQ(Serologically Active Clinically Quiescent)』と本文と表わされています。
SACQを評価するために、4つの試験で検討し、合計385人のSLE患者さんが対象とされました。
全体では、SACQは、ステロイド中止後の再燃リスクの増加と有意に関連していました。
pooled OR = 1.78、95%CI[1.00 ~ 3.15] |
症状は、落ち着いていても、血液検査で低補体や抗ds-DNA抗体がまだ陽性だと、ステロイド中止後の再燃には気を付ける必要があるのですね。
ステロイド中止後の再燃リスクが低い傾向にあった因子
次に、統計的には有意な関連はなかったけど、再燃リスクが低い傾向にあった因子を紹介します。
低い傾向にあったとは、統計的にもう少しで有意になったということです。
❷ 年齢
年齢とステロイド中止後の再燃リスクとの関連は、5つの論文で評価され、371人のSLE患者さんが含まれました。
371人のうち、85人(22.9 %)が再燃し、平均年齢は、29〜39歳でした。
年齢はステロイド中止後の再燃リスクと有意に関連しませんでしたが、高齢は再燃リスクを減少させる傾向がありました。
pooled WMD(加重平均差) -2.04歳(95%CI[-4.15 ~ 0.06]) |
❸ ヒドロキシクロロキン(プラケニル®️)
また、SLEで使用されるヒドロキシクロロキン(プラケニル®︎)についても、統計的には有意には至りませんでしたが、再燃リスクを減少させる傾向が見られました。
pooled OR 0.5、 95%CI[0.23 ~ 1.07] |
オッズ比 0.5なので、プラケニル®︎使用によって再燃リスクは、有意ではないですがおよそ半分(0.5倍)になる傾向はありました。
有意差はなかった因子
最後に、統計的に有意差がなかった因子について見ていきたいと思います。
❹ 性別
性別とステロイド中止後の再燃リスクについての関連については、4つの研究が含まれ、367人のSLE患者さんが含まれ、94%(345/367)が女性でした。
しかし、性別については、ステロイド中止後の再燃リスクについては有意な関連を認めませんでした。
pooled OR 1.75、 95%CI[0.59 ~ 5.2] |
❺ 免疫抑制薬
先ほどあったように、プラケニル®︎(ヒドロキシクロロキン)については、再燃リスクを減少させる傾向にはあったものの、
免疫抑制薬については、ステロイド中止後の再燃リスクについて有意な関連は示されませんでした。
pooled OR 0.86、 95%CI[0.48 ~ 1.53] |
❻ 主要な臓器病変
● ループス腎炎
ループス腎炎(を併発するSLE)については、3件の研究で合計309人のSLE患者さんで評価されました。
しかし、ループス腎炎についてはステロイド中止後の再燃リスクとは有意な関連はありませんでした。
pooled OR 1.2、 95%CI[0.55 ~ 2.64] |
● NPSLE(神経精神ループス)
NPSLE(神経精神ループス)については、2件の研究で合計252人のSLE患者さんで評価されました。
しかし、ループス腎炎同様、NPSLEについてもステロイド中止後の再燃リスクとは有意な関連はありませんでした。
pooled OR 0.95、 95%CI[0.50 ~ 1.83] |
ループス腎炎やNPSLEのあるSLE患者さんで、ステロイド中止後に再燃リスクが上がるということではなかったのですね。
まとめ
〈 ステロイド中止後の再燃リスク有意に関連あり 〉
- SACQ:血清学的に活動性があるが、臨床的には落ち着いている
〈 有意差はないが、再燃リスクを減少させる傾向あり 〉
- 高齢
- ヒドロキシクロロキン(プラケニル®︎)
〈 ステロイド中止後の再燃と関連はなかった 〉
- 性別
- 免疫抑制薬
- 主要臓器病変
- ループス腎炎
- NPSLE(神経精神ループス)
本研究の限界(limitation)
- 第一に、現在利用可能なデータベースを検索したものの、どれくらいの用量でステロイドを減量して行ったかや漸減速度など、再燃の他の危険因子に関するデータが不十分であった。
- 第二に、いくつかのバイアスが存在する可能性がある。RCTとコホート研究の両方が解析に含まれた。
- 第三に、すべての研究が潜在的な交絡因子に対して十分な調整を行っているわけではなかった。また、交絡因子についても完全に統一することはできなかった。
〈参考〉
- 1) Lanlan Ji, et al. Lupus Sci Med 2022;9:e000603.
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、よろしくお願いします?
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