こんにちは、今回は「リウマチで使用されるJAK阻害薬の一つであるジセレカ®︎(フィルゴチニブ)の有効性」について取り上げていきたいと思います。
私も、メトトレキサートでは十分に炎症が治らず、JAK阻害薬のことも詳しく知りたいと思っていました。
〈 用語説明 〉
- RA:関節リウマチ
- MTX:メトトレキサート
- JAK阻害薬:抗リウマチ薬の中でも最も新しく、生物学的製剤と同等かそれ以上の効果がある薬剤
RAにおけるジセレカ®︎(フィルゴチニブ)の有効性について
今回は、ジセレカ®︎(フィルゴチニブ)の有効性を示した
- FINCH1試験1)
- FINCH2試験2)
についてご紹介します。
それぞれの試験は、目的は以下の様になります。
- FINCH1試験 ➡️ メトトレキサートで効果不十分なRAにおけるジセレカ®︎の有効性を検証
- FINCH2試験 ➡️ 生物学的製剤で効果不十分または不耐容なRAにおけるジセレカ®︎の有効性を検証
今回、FINCH2試験では、生物学的製剤で効果不十分または不耐容なリウマチにおいてジセレカ®︎の効果を検証している試験であり、
生物学的製剤でも、十分に炎症が取れていないリウマチ患者さんで、JAK阻害薬に変更した場合でも有効性があるのかどうかを推測するのに、とても役に立つ結果になるかと思われます。
それでは、それぞれの試験について見ていきましょう。
FINCH1試験(第Ⅲ相)1)
FINCH1試験1)は、メトトレキサートで効果不十分な関節リウマチ患者さんにおける国際共同第Ⅲ相試験です。
- 対象:メトトレキサートで効果不十分な中等度から重度の関節リウマチ患者 1755例(日本人は147例)
- 主な選択基準:
- ACR/EULARの2010年RA分類基準でRAと診断
- 腫脹関節数(66関節:SJC66)が6以上 + 疼痛関節痛(68関節:TJC68)が6以上
- 主な除外基準:生物学製剤で効果不十分なRA患者
- 方法:1755例をフィルゴチニブ(ジセレカ®︎)200 mg(+MTX) 群、100mg(+MTX) 群、アダリムマブ(ヒュミラ®︎)(+MTX) 群、プラセボ(+MTX) 群を3:3:2:3の比率で無作為に割り付け、52週間投与した。
- 主要評価項目:
- 投与12週時のACR 20 改善率
- 投与24週時のmTSSのベースラインからの変化量
主要評価項目にあるACR 20 改善率とは?
ACR 20 改善率は、関節リウマチの臨床試験で最もよく用いられる有効性基準です。
腫脹・圧痛関節数が20%以上改善し、さらに複数の項目で20%以上の改善を満たす場合に判定されます。
ACR 50 改善率、ACR 70 改善率も同様で、腫脹・圧痛関節数などがそれぞれ50%、70%以上改善したということになります。
有効性はどうでしたか?
それでは、ジセレカ®︎の有効性について見ていきましょう。
主要評価項目:ACR20改善率
ジセレカ®︎(フィルゴチニブ)は、主要評価項目である12週時のACR 20 改善を達成した患者割合は、ジセレカ®︎ 200mg群 76.6%(p<0.001)、ジセレカ®︎ 100 mg群 69.8%(p<0.001)であり、プラセボ群 49.9%に比べて統計的に有意に高いことが示されました。
副次評価項目:ACR 50 / 70 改善率
次に、
副次評価項目である、投与1日目から52週目までのACR 50、ACR 70改善率の推移は以下の通りでした。
ACR 50 改善率、ACR 70 改善率いずれも、ジセレカ®︎(フィルゴチニブ)200 mg群では、早い段階から効果を示しており、効果発現が早い薬剤であることがわかります。
また、長期的(52週)にみて、ヒュミラ®️(アダリムマブ)と比べても、ジセレカ®︎(フィルゴチニブ)200mg / 100mgの有効性は劣らないことがわかります。
ACR 70 改善率(腫脹・圧痛関節数などが70%以上改善した場合)が、40%を超えているのはすごいですね!
骨びらんに対する効果はありますか?
mTSS(modified Total Sharp Score)
mTSSは、RAのX線画像スコアリング法で、下に出てくるErosionスコアとJSNスコアにより算出されます。
つまり、X線での骨びらんと関節裂隙を総合的に評価した指標です。
主要評価目的の一つである24週時のmTSSのベースラインからの変化量は、プラセボと比較してジセレカ®︎ 200 mg群(p<0.01)、100 mg群(p<0.05)は有意に低いことが示されました。
Erosion(びらん)スコア、JSN(関節裂隙)スコア
今度は、個々の骨びらんのスコアであるErosionスコアと関節裂隙のスコアであるJSNスコア(Joint Space Narrowing)のベースラインからの変化量を見てみます。
関節裂隙(JSNスコア)は、プラセボと比較して有意差は認めませんでしたが、
骨びらん(Erosionスコア)については、ジセレカ®︎(フィルゴチニブ)は、200mg / 100 mgいずれも、プラセボ群と比べて有意に骨びらんの変化を抑制しています。
骨びらんとは、リウマチで炎症により腫れあがった滑膜組織が、やがて軟骨部分や靱帯を破壊し、進行すれば軟骨以外の骨まで破壊してしまった状態のことです。
生物学的製剤が効果不十分だった場合にも有効ですか?【FINCH2試験2)】
今度は、FINCH2試験2)についてご紹介します。
FINCH2試験は、
生物学的製剤が効果不十分または不耐容であったRA患者さんを対象として、フィルゴチニブ(ジセレカ®️)の有効性を評価した試験です。
- 対象:生物学的製剤で効果不十分または不耐容な関節リウマチ患者 448例
- 主な選択基準:
- ACR/EULARの2010年RA分類基準で診断された18歳以上のRA患者
- 腫脹関節数(66関節:SJC66)が6以上 + 疼痛関節痛(68関節:TJC68)が6以上
- 1つ以上の生物学的製剤にも拘らず効果不十分もしくは不耐容な活動性のRA患者
- 主な除外基準:JAK阻害薬の治療歴がある
- 方法:448例をフィルゴチニブ(ジセレカ®︎)200 mg(+csDMARD) 群、100mg(+csDMARD) 群、プラセボ(+csDMARD) 群を1:1:1の比率で無作為に割り付け、24週間投与した。
- 主要評価項目:
- 投与12週時のACR 20 改善率
生物学的製剤が有効でなかった場合も有効ですか?
主要評価項目:ACR 20 改善率
ジセレカ®︎(フィルゴチニブ)は、主要評価項目である12週時のACR 20 改善を達成した患者割合は、ジセレカ®︎ 200mg群 66.0%(p<0.001)、ジセレカ®︎ 100 mg群 57.5%(p<0.001)であり、プラセボ群 31.1%に比べて統計的に有意に高いことが示されました。
ACR 50 / 70 改善率
副次評価項目である、投与1日目から52週目までのACR50、ACR70改善率の推移は以下の通りでした。
ACR 50 改善率は、ジセレカ®︎(フィルゴチニブ)200 mg群では、24週時では、およそ50%のRA患者さんが達成しています。
ACR 70 改善率は、ジセレカ®︎(フィルゴチニブ)200 mg群では、24週時では、40%弱のRA患者さんが達成しています。
➡︎ ジセレカ®︎は、生物学的製剤で効果不十分または不耐容な場合でも、十分に有効な可能性がある薬剤である。
生物学的製剤の使用数によって、有効性は変わりますか?
最後に、サブグループ解析として、ジセレカ®︎使用前に生物学的製剤を何種類使ったかによって有効性は変わるかを検証しています。
結果は、前治療の薬剤数が1剤、2剤、3剤以上でもジセレカ®︎(フィルゴチニブ)の有効性は同程度で、
前治療の薬剤数には、依存しないことが示唆されました。
安全性について
ジセレカ®︎の有効性については、よくわかりました。
安全性についてはどうだったのでしょうか。
では、それぞれの試験別に見てみましょう。
FINCH 1 試験
( ※ フィルゴチニニブ:ジセレカ®︎、アダリムマブ:ヒュミラ®︎ )
有害事象および血液検査値異常は、積極的治療群間(フィルゴチニブとアダリムマブ)で同等でした。
また、JAK阻害薬で懸念される帯状疱疹のリスクも、プラセボと比べて同等でした。
FINCH 2 試験
FINCH2試験では、0-24週間の投与期間中で、フィルゴチニブ 200mg群で、鼻咽頭炎がやや多く、フィルゴチニブ 200mg群 100mg群とも頭痛がやや多い結果でした。
また、帯状疱疹はプラセボと比べてごく軽度上昇する程度でした。
➡︎ いずれの試験とも、0-24週間の有害事象は各群間とも大きな差はないという結果でした。
また、JAK阻害薬で懸念される帯状疱疹の発現率は、ジセレカ®︎では上昇していませんでした。
しかし、長期の安全性のデータはまだないため、今後長期安全性の評価が望まれます。
参考:JAK阻害薬による帯状疱疹発現率
JAK阻害薬 | 帯状疱疹の頻度 |
---|---|
ゼルヤンツ®︎ (トファシチニブ) | 3.6% |
オルミエント®︎ (バリシチニブ) | 3.2% |
スマイラフ®︎ (ペフィシチニブ) | 12.9% |
リンヴォック®︎ (ウパダシチニブ) | 4.1% |
ジセレカ®︎ (フィルゴチニブ) | 0.2% |
ジセレカ®︎の有効性 まとめ
- JAK阻害薬であるジセレカ®︎は、関節リウマチにおいてプラセボと比べてACR 20 改善率が有意に高く、またACR 50 / 70 改善率においても同様であった。
- 薬剤の効果発現は比較的早く、生物学的製剤であるヒュミラ®︎(アダリムマブ:TNF阻害薬)と比べても有効性は劣らない。
- 骨びらん抑制効果もある。
- 生物学的製剤に効果不十分または不耐容の場合でも、変更により有効性が期待できる。
- さらにそれは、今までの生物学的製剤使用数が多くても、同等の有効性を期待できる。
- 帯状疱疹の発現率は、JAK阻害薬の中でも低い。
- 短期的な安全性は、プラセボと比べて大きな差はなかったが、今後長期的評価が必要である。
〈参考〉
- 1) Bernard Combe, et al. Ann Rheum Dis 2021;80:848-58.
- 2) Mark C Genovese, et al. JAMA;322:315-25.
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、ぜひよろしくお願いします?
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