こんにちは、今回は「SLEにおけるPSLの休薬の影響」について取り上げていきたいと思います。
私はSLEで、ずっと長くプレドニン®︎(プレドニゾロン)を使っていましたが、休薬による再燃の影響がどうなのかはずっと気になっていました。
- SLE:全身性エリテマトーデス
- PSL:プレドニゾロン(ステロイド)
SLEにおけるプレドニゾロン 5 mgの休薬での再燃のリスク
SLEの方で、長くプレドニン®︎を内服している方もたくさんいらっしゃるかと思います。
しかし、これまで寛解を達成したSLE患者さんで、ステロイドを休薬したデータは多くはありませんでした2-5)。
今回、2020年にAnn Rheum Dis誌より、『 臨床的に1年以上静止しているSLE患者における低用量プレドニゾンの休薬の影響 』を検討した非盲検無作為化比較試験の結果が報告されました1)。
結論は?
先に結論からお話ししますが、
本研究では、寛解期にあるSLE患者さんの再燃を防ぐためには、プレドニゾロン5mgの維持投与が休薬よりも優れているという結果が示されました。
今回の試験結果は、プレドニン 5mgの継続がSLEの再燃予防に役立っているという結果だったのですね。
それでは、具体的な内容を見ていきましょう。
方法
- デザイン:非盲検無作為化比較試験
- 施設:フランスのピティエ・サルペトリエール病院での単施設
- 対象患者:1997年ACR改訂分類基準(アメリカリウマチ学会)を満たす18歳以上のSLE患者
- 組み入れ基準
- SELENA-SLEDAIスコア:4以下(SLEの疾患活動性スコア)
- BILAG-2004 スコア(SLEの活動性スコア)で血液系を除くすべての臓器系でDまたはE(白血球減少、リンパ球減少、クームス試験単独陽性によるCスコアは容認)
- PGA= 0(医師による総合評価)およびプレドニン5mg/日などの治療レジメンを有する
- プレドニゾロン、プラケニル®︎(ヒドロキシクロロキン)、and/or 免疫抑制療法は、組み入れ前に少なくとも1年間安定している必要があった。
- 除外基準
- 妊娠している患者
- 妊娠を計画している患者
- インフォームドコンセントに署名できない患者
- 長期臨床的静穏期SLE
- 白血球減少、SLE治療、血清学的活性(抗dsDNA抗体、低補体の存在)に関係なく、疾患活動の臨床徴候がない連続5年の期間と定義された
- 割り付け(参加者124人):❶ 5mg/日プレドニゾロンを継続する群(61人)と❷ 中止する群(63人)に割り付けられた
- 中止群は、副腎不全を防ぐため、1ヶ月間 ヒドロコルチゾン 20 mg/日を投与された。
- 観察期間:12ヶ月間
- ベースライン、3、6、9、12カ月目に評価された
- 主要評価項目:『 52週目にSELENA-SLEDAI flare index(SFI)で定義される再燃を認めた患者の割合 』
- 副次評価項目:
- 再燃(フレア)までの時間
- 52週目にSFI(SLEの再燃指数)を用いて重症フレアまたは軽度・中等度フレアを経験した患者の割合
- 52週目にBILAG指標を用いてフレアを経験した患者の割合
- 52 週間の血清学的活性(抗dsDNA 抗体および C3 値)の変化の割合
- 52 週間の間にSDI(SLEのダメージ指数)の上昇を経験した患者の割合。
ベースラインの特徴
- プレケニル®︎(ヒドロキシクロロキン)の使用率は、維持群 93%で中止群 89 %と両郡とも高い割合でした。
- プレドニゾロン中止群ではミコフェノール酸モフェチル投与中(p=0.038)の患者数が有意に多かった以外は、いずれのベースライン時の臨床特性に関しても2群間に有意差はありませんでした。
- 維持療法群 24例(39%)、休薬群 32例(51%)は、臨床的静穏状態が長く続くSLE患者でした。
結果
それでは、結果を見ていきましょう。
主要評価項目:Primary End Point
ステロイド維持群と休薬群での再燃率はどうでしたか?
SFI(SLEの再燃指数)を用いた52週時点での再燃率は、プレドニゾロン維持群の方が、休薬群よりも、有意に高かった。
〈 52週時 〉 | 維持群 | 中止群 |
SFIを用いた再燃率 | 7%( 4/61 ) | 27%( 17/63 ) |
RR 0.2(95%CI:0.1〜0.7) | p = 0.003 |
副次評価項目:Secondary End Point
再燃(フレア)までの時間は?
〈 52週中のフレア発生の累積確率を示すKaplan-Meier曲線1) 〉
フレア発生の推定ハザード比(維持群/中止群)は、0.2(95%CI、0.1〜0.6、p=0.002)であった。
BILAG指数での再燃率は?
BILAG指数(SLEの活動性スコア)を用いたフレア(再燃)の重症度解析では、維持群では休薬群と比較して中等症/重症フレアの割合が有意に低かった(1名 vs 8名、RR 0.1(95% CI:0.1~0.9)、p=0.013 )。
SDI(SLEのダメージ指数)は?
中止群の合計3人の患者で、52週間の間にSDIの4項目が記録された。内訳は、骨粗鬆症関連骨折が2件、ヒドロキシクロロキンによる網膜毒性が1件、白内障が1件であった。
維持群では、SDIの記録はなかった。
SDIの上昇した患者の割合は、2群間で差はなかった。
免疫学的パラメーターの変化は?
- 血液学的活動性の指標である、抗dsDNA抗体およびC3の変化は、両群とも52週間の間に有意な変化は認められなかった。
有害事象は?
- 52週間の試験期間中、有害事象は両群ともまれであった。
- 死亡、血管血栓症、悪性新生物はなく、プレドニゾンの中止や入院を必要とする有害事象はありませんでした。
まとめ
- 今回の前向き研究において、少なくとも1年間は静止状態で治療が安定しているSLE患者において、プレドニゾロン(5mg)の休薬は 再燃のリスクを4倍高める可能性が示唆されました。
- 再発を防ぐために低用量のプレドニンを長期的に継続が有用であること示唆されました。
- 本研究では、両群ともおよそ90%の方がプラケニル®︎(ヒドロキシクロロキン)を使用しており、休止群のおよそ70%のSLE患者は、52週時点で休薬後も再燃を認めなかった。
- リミテーション(limitation)は、❶ プラセボ群のない非盲検試験であったこと、❷ プレドニゾロンの休薬は、比較的急激であり、プレドニゾロンをゆっくり漸減すれば、休薬によるフレイルが少なくなった可能性があったこと等がありました。
〈参考〉
- 1) Alexis Mathian, et al. Ann Rheum Dis 2020;79:339-346.
- 2) van Vollenhoven RF, et al. Ann Rheum Dis 2014;73:958-67.
- 3) Fanouriakis A, et al. Ann Rheum Dis 2019;78:736-45.
- 4) Bertsias GK, et al. Ann Rheum Dis 2010;69:2074-82.
- 5) Bertsias GK, et al. Ann Rheum Dis 2012;71:1771-82.
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、ぜひよろしくお願いします?
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