こんにちは、今回は『 タブネオス®︎(アバコパン)の特徴 』について取り上げていきたいと思います!
タブネオスは、新しいANCA関連血管炎の薬剤ですね!とても気になります!
タブネオス®︎(アバコパン)の特徴について
タブネオス®︎(アバコパン)は、2022年6月7日に発売された、ANCA関連血管炎である、顕微鏡的多発血管炎(MPA)や多発血管炎性肉芽腫症(GPA)に対して使用される新規薬剤です。
タブネオス®︎は、選択的C5a受容体阻害薬という、新しい機序の治療薬です。
今回は、そんなタブネオス®︎の特徴を見ていきたいと思います。
適応疾患は?
タブネオス®︎の適応疾患は、以下のようになります。
- 顕微鏡的多発血管炎(MPA)
- 多発血管炎性肉芽腫症(GPA)
どんな時に適応となりますか?
- ANCA陽性の顕微鏡的多発血管炎や多発血管炎性肉芽腫症に対して行われた研究であるため、基本的にはANCA陽性の方が最も適応になるかと思われます。
- ANCA陰性のMPAやGPAについては、一定の見解は得られていないため、今後の報告やガイドラインを参照する必要があります。
- 高用量ステロイドを使うのが難しい方、例えば高齢者や感染リスクの高い方などには、アバコパン®︎による寛解導入はよい適応となる可能性があります。
用法は?
タブネオス®︎(アバコパン)は、10 ㎎ のカプセル剤です。
用法用量 | 1回 30 mg を1日2回 朝夕食後に経口投与する。 なので、1回 に 3錠 を内服します。 |
薬価は、以下のようになります。
〈 薬価の目安 〉 | 1錠 | 1ヶ月(30日)の目安 |
10 mg | 1404円 | 252,500円(10割) 75,800円(3割) 50,500円(2割) 25,300円(1割) |
MPAやGPAは、申請が許可されれば特定疾患で治療可能ですので、患者さんの薬価の心配は少ないかと思われます。
副作用は?
1%〜10% | 上気道感染、鼻咽頭炎、鼻炎 好中球減少症 悪心、下痢、嘔吐、上腹部痛 頭痛 白血球数減少 |
1 %未満 | 血管浮腫 |
重大な副作用
- 重篤な肝胆道系障害(2.4 %)、重篤な肝機能障害(1.2 %)
- 重篤な感染症
- 肺炎(1.2 %)など
タブネオス®︎(アバコパン)のエビデンス
タブネオス®︎(アバコパン)の有効性はどうでしたか?【ADVOCATE 試験】
タブネオス®︎(アバコパン)の有効性は、『 ADVOCATE試験1) 』にて示されています。
- ADOVOCATE試験の目的:ステロイド漸減レジメンをアバコパンが代替できるかどうかを評価すること
- 対象:PR3-ANCAまたはMPO-ANCA陽性の多発血管炎性肉芽腫症(GPA)または顕微鏡的多発血管炎(MPA)。
- 投与方法:
- アバコパン群: アバコパン(タブネオス®︎) 30 mg 1日2回 + プレドニゾンのプラセボ薬。
- プレドニゾン群: プレドニゾン 1日 60 mg + アバコパンのプラセボ薬。
- プレドニゾンは、漸減スケジュールで20週間投与された(1日60mgを漸減し、21週目までに投与を中止)。
- すべての患者にシクロホスファミド(その後アザチオプリン)またはリツキシマブを投与されました(いずれも開始時に投与され試験開始中も継続された)。
- 主要評価項目(Primary Endpoint)
- 26週時の寛解
- 52週時の寛解
- 副次評価項目(Secondary Endpoint)
- 26週間のグルココルチコイド毒性指数(GTI)によるグルココルチコイドによる毒性作用
- eGFR
- QOL(生活の質:quality of life)
- 尿アルブミン・クレアチニン比
〈 主要評価項目 〉
- 26週時点では、アバコパン(タブネオス®︎)群とプレドニゾン群では、同等の治療効果であり(非劣性)、52週時点では、アバコパン(タブネオス®︎)群はプレドニゾン群よりも、有意差をもって寛解を維持した(優越性を示した)。
〈 副次評価項目 〉
- ステロイドによる毒性作用については、26週目のGTI-CWSの最小二乗平均値は、アバコパン群 39.7、プレドニゾン群 56.6で、アバコパン群の方が低かった。 ➡︎ アバコパンは、ステロイドによる副作用を軽減できました。
- 52週目のeGFRのベースラインからの最小二乗平均変化量は、アバコパン群で 7.3 ml/min/1.73m²、プレドニゾン群で 4.1 ml/min/1.73m²であり、アバコパン群もプレドニゾン群と比べて劣っていなかった。 ➡︎ 腎機能の改善は、アバコパンもステロイドと同等の効果がありました。
再発率はどうでしたか?
- アバコパン群 10.1 % (16/158)、プレドニゾン群 21 %(33/157)に再発がみられた。
- しかし、統計的な有意差としては示されませんでした。
安全性
- 重篤な有害事象はアバコパン群で116件、プレドニン群で166件であった。
- 最も多かった重篤な有害事象は、血管炎の悪化(アバコパン群10.2%、プレドニゾン群14.0%)であった。
- 血管炎を除く重篤な有害事象の発生率は、アバコパン群37.3%、プレドニゾン群39.0%であった。
タブネオス®︎(アバコパン)の作用機序について
タブネオス®︎(アバコパン)は、選択的C5a受容体拮抗薬です。
タブネオス®︎の作用機序を考えるにあたって、まずは、ANCA関連血管炎(MPA/GPA)がどうやって病態形成されるかを考えていきます。
ANCA関連血管炎の形成
ANCA関連血管炎は、抗好中球細胞質抗体(ANCA)が好中球に結合すると、好中球が活性化します。
活性化した好中球は、「 アズール顆粒(ミエロペルオキシダーゼやプロテイナーゼ3等)などの脱顆粒 」や「 活性酵素と呼ばれるROS(Reactive Oxygen Species)の放出」によって、血管の内皮細胞を障害したり、NETsの形成を引き起こします。
血管内皮細胞の障害やNETsの形成によって、血管の炎症が起き、さらにこのサイクルが繰り返されることで血管炎を発症します。
NETsって何?
〈 アミ目構造がNETs 〉
NETsとは、正式には好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps)といい、感染から身を守るための本来の生体防御システムの一つです。
具体的には、活性化好中球が役目を終えて死ぬ時に(ネトーシス)、NETsと呼ばれる網(クロマチン網)を残して死にます。
この網が、通常の感染時には、細菌をがっちりとらえて、マクロファージや好中球が貪食しやすいようにしてくれています。
ですが、ANCA関連血管炎の方は、ANCA(抗好中球細胞質抗体)の産生が続いたり、NETsの分解が遅くなることで、さらにANCAの産生が惹起されるという負のスパイラルが形成されてしまいます。
以上が、ANCA関連血管炎で起きてしまう主な原因です。
補体C5aは、好中球をプライミングし、MPOやPR3を分泌させる
補体C5aは、(好中球表面上の)C5a受容体することで好中球をプライミング(免疫系を賦活化させるための予備刺激)する作用があります。
これによって、好中球からMPO(ミエロペルオキシダーゼ)やPR3(プロテイナーゼ3)といったアズール顆粒が分泌されます。
このMPOやPR3が、ANCAと結合することで、MPO-ANCAやPR3-ANCAとなって、さらに好中球が活性化して、ANCA関連血管炎の病態が形成されます。
タブネオス®︎(アバコパン)は、この補体C5a受容体を阻害することで、好中球のプライミングを抑制し、ANCA関連血管炎の増悪を防いでくれるのです。
- タブネオス®︎は補体C5a受容体を阻害することで、好中球のプライミングを抑制し、ANCA関連血管炎を改善させる。
- ADVOCATE試験では、ステロイドと同様の治療効果を示し、さらに52週時ではステロイドよりも有意に寛解率が高かった。
- 高用量ステロイドを併用した通常の寛解導入療法よりも、ステロイドを少なく治療できる可能性があり、高齢者や感染リスクなど、ステロイドを使いづらい方には、良い適応になると考えられる。
〈参考〉
- 1) David R. W. Jayne, et al. N Engl J Med. 2021;387(7):599-609.
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、ぜひよろしくお願いします?
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※個人個人で症状の違いがあるため、詳細な治療などにつきましては直接医療機関へお問い合わせください。