こんにちは、今回は『エンタイビオ®︎(ベドリズマブ)の特徴について』取り上げていきたいと思います!
エンタイビオは、名前が独特ですね!よろしくお願いします!
エンタイビオ®︎(ベドリズマブ)の特徴について
エンタイビオ®︎(ベドリズマブ)は、2018年11月に発売された生物学的製剤です。
エンタイビオ®︎は、『 ヒト化抗ヒトα4β7インテグリン モノクローナル抗体製剤 』で、
リンパ球上のα4β7インテグリンに結合することで、リンパ球(炎症細胞)が大腸粘膜に侵入するのを阻害することで潰瘍性大腸炎やクローン病に対して効果を発揮します。
適応疾患は?
エンタイビオ®︎の適応疾患は、以下のようになります。
- 潰瘍性大腸炎
- クローン病
どんな時に適応となりますか?
潰瘍性大腸炎もクローン病も以下の条件を満たす場合に、良い適応となります。
- 中等症から重症で、既存治療で効果不十分な、潰瘍性大腸炎もしくはクローン病の治療および維持療法
用法は?
エンタイビオ®︎は、1瓶 300 mg の点滴静注用製剤です。
用法用量 | 成人において、1回 300 mgを初回、2週、6週に投与し、以降8週間隔で点滴静注する。 |
薬価は、以下のようになります。
- 1瓶 300 mg 279,573 円。
- 8週間隔で継続すると、1ヶ月あたり 41,900円(3割)、14,000円(1割)です。
1月あたり41,900円は、決して安い金額ではないですね。
副作用は?
0.1 ~ 5%未満 | 頭痛 悪心 口腔咽頭痛、咳嗽 発疹、そう痒症 関節痛、背部痛 発熱、気管支炎、上気道炎、インフルエンザ、副鼻腔炎、疲労 |
0.1 %未満 | 鼻咽頭炎 |
重大な副作用
- Infusion reaction 3.6 %
- 重篤な感染症 1.4 %
- 進行性多巣性白質脳症 頻度不明
エンタイビオ®︎(ベドリズマブ)のエビデンス
潰瘍性大腸炎の有効性
国内第Ⅲ相試験
- 対象
- ステロイド、アザチオプリン(アザニン®︎ / イムラン®︎)、6-メルカトプリン、抗TNF-α阻害薬のうち少なくとも1剤で効果不十分な中等症から重症の潰瘍性大腸炎患者
- デザイン:二重盲検比較試験
〈 導入療法 〉
〈 10週時点 〉 | 改善率 | ||
ベドリズマブ群 | プラセボ群 | ||
全体 | 39.6 %( 65 / 164 ) | 32.9 %( 27 / 82 ) | p = 0.2722 |
TNF-α阻害薬治療歴無し | 53.2 %( 42 / 79 ) | 36.6 %( 15 / 41 ) | |
TNF-α阻害薬治療歴有り | 27.1 %( 23 / 85 ) | 29.3 %( 12 / 41 ) |
改善:以下の条件をともに満たした場合−Mayoスコアがベースラインから3ポイント以上減少かつ30%以上減少−血便サブスコアがベースラインから1ポイント以上減少又は血便サブスコアが1以下
〈 維持療法 〉
〈 60週時点 〉 | 寛解率 | ||
ベドリズマブ群 | プラセボ群 | ||
全体 | 56.1 %( 23 / 41 ) | 31.0 %( 13 / 42 ) | p = 0.021 |
TNF-α阻害薬治療歴無し | 54.2 %( 13 / 24 ) | 35.7 %( 10 / 28 ) | |
TNF-α阻害薬治療歴有り | 58.8 %( 10 / 17 ) | 21.4 %( 3 / 14 ) |
寛解:Mayoスコアが2以下かつ全てのサブスコアが1以下
海外第Ⅲ相試験
- 対象
- ステロイド、アザチオプリン(アザニン®︎ / イムラン®︎)、6-メルカトプリン、抗TNF-α阻害薬のうち少なくとも1剤で効果不十分な中等症から重症の潰瘍性大腸炎患者
- デザイン:二重盲検比較試験
〈 導入療法 〉
〈 6週時点 〉 | 改善率 | ||
ベドリズマブ群 | プラセボ群 | ||
全体 | 47.1 %( 106 / 225 ) | 25.5 %( 38 / 149 ) | p < 0.0001 |
TNF-α阻害薬治療歴無し | 53.1 %( 69 / 130 ) | 26.3 %( 20 / 76 ) | |
TNF-α阻害薬治療歴有り | 38.9 %( 37 / 95 ) | 24.7 %( 18 / 73 ) |
改善:以下の条件をともに満たした場合−Mayoスコアがベースラインから3ポイント以上減少かつ30%以上減少−血便サブスコアがベースラインから1ポイント以上減少又は血便サブスコアが1以下
〈 維持療法 〉
〈 52週時点 〉 | 寛解率 | ||
ベドリズマブ群 | プラセボ群 | ||
全体 | 41.8 %( 51 / 122 ) | 15.9 %( 20 / 126 ) | p < 0.0001 |
TNF-α阻害薬治療歴無し | 45.8 %( 33 / 72 ) | 19.0 %( 15 / 79 ) | |
TNF-α阻害薬治療歴有り | 36.0 %( 18 / 50 ) | 10.6 %( 5 / 47 ) |
寛解:Mayoスコアが2以下かつ全てのサブスコアが1以下
- 国内第Ⅲ相試験の導入療法の改善率では、有意差が付かなかった。
- しかし、国内第Ⅲ相試験の維持療法の寛解率、海外第Ⅲ相試験の導入療法の改善率と維持療法の寛解率においては、有意差が付いた結果であった。
● Mayoスコアとは?
Mayoスコアとは、潰瘍性大腸炎で一般的に使用される疾患活動性の指標です。
Mayoスコア | 活動性 | |
0 ~ 2 | 寛解 | なし |
3 ~ 5 | 軽症 (Mild) |
あり |
6 ~ 10 | 中等症 (Moderate) |
あり |
11 ~ 12 | 重症 (Severe) |
あり |
クローン病の有効性
国内第Ⅲ相試験
- 対象
- ステロイド、アザチオプリン(アザニン®︎ / イムラン®︎)、6-メルカトプリン、メトトレキサート、抗TNF-α阻害薬のうち少なくとも1剤で効果不十分な中等症から重症のクローン病患者
- デザイン:二重盲検比較試験
〈 導入療法 〉
〈 10週時点 〉 | 改善率 | ||
ベドリズマブ群 | プラセボ群 | ||
全体 | 26.6 %( 21 / 79 ) | 16.7 %( 13 / 78 ) | p = 0.1448 |
TNF-α阻害薬治療歴無し | 50.0 %( 9 / 18 ) | 25.0 %( 4 / 16 ) | |
TNF-α阻害薬治療歴有り | 19.7 %( 12 / 61 ) | 14.5 %( 9 / 62 ) |
改善:CDAIスコアがベースラインから100ポイント以上減少
〈 維持療法 〉
〈 60週時点 〉 | 寛解率 | |
ベドリズマブ群 | プラセボ群 | |
全体 | 41.7 %( 5 / 12 ) | 16.7 %( 2 / 12 ) |
TNF-α阻害薬治療歴無し | 50 %( 2 / 4 ) | 40 %( 2 / 5 ) |
TNF-α阻害薬治療歴有り | 37.5 %( 3 / 8 ) | 0 %( 0 / 7 ) |
寛解:CDAIスコアが150以下
海外第Ⅲ相試験
- 対象
- ステロイド、アザチオプリン(アザニン®︎ / イムラン®︎)、6-メルカトプリン、メトトレキサート、抗TNF-α阻害薬のうち少なくとも1剤で効果不十分な中等症から重症のクローン病患者
- デザイン:二重盲検比較試験
〈 導入療法 〉
〈 6週時点 〉 | 寛解率 | ||
ベドリズマブ群 | プラセボ群 | ||
全体 | 14.5 %( 32 / 220 ) | 6.8 %( 10 / 148 ) | p = 0.0206 |
TNF-α阻害薬治療歴無し | 17.4 %( 19 / 109 ) | 9.2 %( 7 / 76 ) | |
TNF-α阻害薬治療歴有り | 11.7 %( 13 / 111 ) | 4.2 %( 3 / 72 ) |
寛解:CDAIスコアが150以下
改善率 | |||
ベドリズマブ群 | プラセボ群 | ||
全体 | 31.4 %( 69 / 220 ) | 25.7 %( 38 / 148 ) | p = 0.2322 |
TNF-α阻害薬治療歴無し | 42.2 %( 46 / 109 ) | 30.3 %( 23 / 76 ) | |
TNF-α阻害薬治療歴有り | 20.7 %( 23 / 111 ) | 20.8 %( 15 / 72 ) |
改善:CDAIスコアがベースラインから100ポイント以上減少
〈 維持療法 〉
〈 52週時点 〉 | 寛解率 | ||
ベドリズマブ群 | プラセボ群 | ||
全体 | 39.0 %( 60 / 154 ) | 21.6 %( 33 / 153 ) | p = 0.0007 |
TNF-α阻害薬治療歴無し | 51.5 %( 34 / 66 ) | 26.8 %( 19 / 71 ) | |
TNF-α阻害薬治療歴有り | 29.5 %( 26 / 88 ) | 17.1 %( 14 / 82 ) |
寛解:CDAIスコアが150以下
● CDAIとは?
CDAIとは、Crohn’s disease activity indexの頭文字をとったもので、クローン病で一般的に使用される疾患活動性の指標です。
CDAI | 活動性 | |
0 ~ 150 | 寛解 | なし |
151 ~ 220 | 軽症 (Mild) |
あり |
221 ~ 450 | 中等症 (Moderate) |
あり |
451 ~ 600 | 重症 (Severe) |
あり |
- 国内第Ⅲ相試験の導入療法、維持療法では有意差は付かなかった。
- しかし、海外第Ⅲ相試験試験の導入療法の寛解率と維持療法の寛解率において有意差が付いた。
ベドリズマブ(エンタイビオ)の作用機序について
ベドリズマブ(エンタイビオ)は、T細胞(リンパ球)のホーミングを阻害する
ホーミングとは、 特定の免疫担当細胞が特定の部位に遊走していき定着することをいいます。
空調や回腸にある免疫器官であるパイエル板や腸管膜リンパ節、腸粘膜固有層細静脈内皮細胞内皮などの消化管組織に限局して発現している『 MAdCAM-11) 』は、T細胞(リンパ球)に発現しているα4β7インテグリンに対して特異的に結合します。
ホーミングには、この消化管組織に限局して発現するMAdCAM-1と、リンパ球に発現するα4β7インテグリンが深く関与しています2)。
ベドリズマブは、リンパ球のα4β7インテグリンに特異的に結合することで、ホーミングを阻害します。
これによって、炎症細胞であるT細胞(リンパ球)が、腸管組織に侵入するのを防ぎ、潰瘍性大腸炎やクローン病による炎症を抑えることができます。
〈 ベドリズマブ(エンタイビオ®︎)の作用機序の模式図3) 〉
〈参考〉
- 1) Briskin MJ, et al. Nature 1993;363:461-464.
- 2) Picarella D, et al. J Immunol 1997;158:2099-2106.
- 3) Markus F. Neurath, et al. Nature reviews gastroenterology & hepatology 2017;14:269-278.
- 久冨木原 健二, et al. 血栓止血誌 2019;30:603-609.
- エンタイビオ®︎(ベドリズマブ)の添付文書
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、ぜひよろしくお願いします?
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