こんにちは、今回は「トラムセット®︎(トアラセット)とロキソニン®︎の違い」について取り上げていきたいと思います。
トラムセット®︎は、医療用の麻薬の成分もあると聞いていましたが、ロキソニン®︎などとどう違うのかとても気になっていました。
トラムセット®︎(トアラセット)とロキソニン®︎の違い
トラムセット®︎もロキソニン®︎もどちらも、一般的な疼痛に対して、よく処方される鎮痛剤です。
トアラセットは、名前は似ていますが、トラムセット®︎のジェネリックになります。
最近は、トアラセットとして処方されることが多いですね。
ロキソニン®︎(ロキソプロフェン)とは(NSAIDs)?
ロキソニン®︎は、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬:non-steroidal anti-inflammatory drugs)と呼ばれる鎮痛薬の仲間になります。
NSADIsは、アラキドン酸カスケードのシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することで、プロスタグランジン類の合成を抑制し、それによって抗炎症効果を得る、非ステロイド性の解熱鎮痛薬です。
上の説明ではよく分かりにくいと思うので、NSAIDsの特徴を下にまとめました。
- COX非選択的阻害薬{ロキソニン®︎(ロキソプロフェン)、ナイキサン®︎(ナプロキセン)、ボルタレン®︎(ジクロフェナク)など}とCOX-2選択的阻害薬{セレコックス®︎(セレコキシブ)、ハイペン®︎(エトドラク)}に分かれる。
- 鎮痛効果:中
- 鎮痛効果は、比較的期待できるも、胃潰瘍などの消化性潰瘍や腎障害のリスクがあり注意が必要。
- セレコックス®︎などのCOX-2選択的阻害薬は、消化性潰瘍や易出血性のリスクを軽減できる。
さらに詳しくはこちらをご参照ください ⬇︎
トラムセット®︎(トアラセット)とは?
トラムセット®︎は、オピオイド鎮痛薬であるが、医療用麻薬には該当しない。
トラムセット®︎は、『 オピオイド鎮痛薬 』と呼ばれます。
トラムセット®︎は、オピオイド鎮痛薬の中でも、『 弱オピオイド 』になります。
オピオイド鎮痛薬は、医療用麻薬とも呼ばれ、医療用麻薬とは、法律で医療用に許可されている麻薬のことです。
ただし、トラムセットに含まれるトラマドールは、弱オピオイドで依存性が少ないことから、医療用麻薬には該当しません。
麻薬と聞くと、「ビクッ!」としますが、正しい使用法であれば、中毒になったり依存症になることはありません。
なるほど、トラムセット®︎は、オピオイド鎮痛薬の一つではあるけど、弱オピオイドで依存性が少ないから、医療用麻薬には該当しないのですね!
オピオイド鎮痛薬について
オピオイド鎮痛薬は、鎮痛作用が強く、一般的に、「 がん性疼痛 」に対して使用される鎮痛薬です。
痛みには、脳・脊髄の中枢神経や末梢神経に存在する『オピオイド受容体』が関係していて、特に、『 μオピオイド受容体 』が関係しています。
オピイド鎮痛薬は、中枢神経や末梢神経に存在するμオピオイド受容体に作用して、下行性疼痛抑制系の賦活化などを介して鎮痛作用を得ることができます。
オピオイド鎮痛薬の種類について
種類 | 鎮痛効果の目安 | |
弱オピオイド | ・コデイン ・トラマドール(トラムセットに含まれている) | 軽 〜 中 |
強オピオイド | ・モルヒネ ・オキシコドン ・フェンタニル ・メサドン | 中 〜 高 |
弱オピオイドは、「 軽度から中等度の痛み 」に用いられ、強オピオイドは、「 中等度から高度の痛み 」に用いられます。
徐痛ラダー
(画像引用:https://gan-mag.com/qol/2408.html)
↑こちらは、WHO(世界保健機構)が推奨する、『 がん疼痛 』における3段階徐痛ラダーという鎮痛薬の使用法の推奨があります。
ラダーとは、「 梯子(はしご)」のことで、梯子(階段)状に鎮痛薬を上乗せをしていくという考え方です。
この表でいくと、まず痛みに対しては、非オピオイド鎮痛薬や鎮痛補助薬から開始します。
その次に、弱オピオイドや強オピオイドを追加していきます。
ただし、痛みが強い場合は、弱オピオイドや強オピオイドから開始しても構いません。
WHOの徐痛ラダーはがん疼痛に関した指標ですが、これは非がん性疼痛についても応用することができます。
トラムセット®︎は、トラマドール(トラマール®︎、ワントラム®︎)とアセトアミノフェン(カロナール®︎)の合剤である
トラムセット®︎(トアラセット)は、弱オピオイドであるトラマドール(トラマール®︎、ワントラム®︎)とアセトアミノフェン(カロナール®︎)の合剤です。
なので、弱オピオイドの他に、アセトアミノフェン(カロナール®︎)の成分も含んでいます。
トラムセット®︎ 1錠中 = トラマドール 37.5 mg + アセトアミノフェン 325 mg
トラムセット®︎(トアラセット)の適応と用法用量
適応 | ・非がん性慢性疼痛 ・抜歯後の疼痛 |
用法用量 | 1回1錠 1日4回服用する。 |
最大 | 1回2錠 1日8錠まで投与可能。 |
・空腹時の服用は避けることが望ましい。 ・投与間隔は4時間以上あける。 |
トラムセット®︎の副作用は?
トラムセットによる副作用は、オピオイドによる副作用を起こしやすく、注意が必要です。
オピオイドの副作用とは?
オピオイドによる副作用は、主に以下の4つが起きやすいです。
- 嘔気・嘔吐
- 便秘
- 眠気
- めまい
他に、掻痒感、発汗、せん妄、排尿障害、肝障害も起こることがあります。
副作用が起こった場合はどうしますか?
トラムセットによる副作用が起こることはよくあります。
通常、1日4回服用しますが、薬に過敏な方など副作用が起きやすい場合は、1日2回や3回から開始します。
慣れてきたら、必要に応じて、1日4回へ回数を増やします。
それでも、副作用が起きてしまう場合は、
〈 副作用が起きた場合の対応 〉
- 減量する。
- 嘔気、嘔吐に対しては、制吐薬を併用したり、便秘に対しては、下剤を併用する。
- それでも副作用が強い場合は、中止を検討します。
トラムセット®︎はどういった時に使いやすいですか?
以下の場合には、トラムセット®︎(トアラセット)は良い適応となります。
- 腎障害がある場合は、投与量を調節すれば、NSAIDsよりも比較的使いやすい。
- NSAIDsでも、痛みが抑えられない場合に使いやすい。
❶ 腎障害がある場合は、投与量を調節すれば、NSAIDsよりも比較的使いやすい。
トラムセットは、主に肝臓に存在する薬剤代謝酵素である、「 CYP2D6 及び CYP3A4 」によって代謝されます。
このため、主な代謝部位は肝臓であり、腎障害がある場合でも投与量を調節すれば、腎障害を起こしやすいNSAIDsよりも使いやすいです。
具体的には、Ccr < 50 mL/min以下(クレアチニンクリアランス)の場合は、『 投与量を50%減量 』すれば、服用可能です。
ただし、腎障害がある場合は、副作用が強く出ることもあるため、注意しながら使用します。
※ 重篤な腎障害がある方には、禁忌となります。
Ccr(mL/分) クレアチニンクリアランス | |
トラムセット®︎ (トアラセット) | ・ > 50 :常用量 ・ < 50 :50%減量する ・ 維持透析:最大で25%まで可能 |
トラマドールを参考に作成
( 参考:CKD診療ガイド2012 )
❷ NSAIDsでも、痛みが抑えられない場合に使いやすい。
オピオイドは、WHOの3段階徐痛ラダーにもあったように、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の上に位置しています。
そのため、ロキソニン®︎といったNSAIDsでも鎮痛効果が不十分な場合は、弱オピオイドであるトラムセット®︎(トアラセット)は、良い適応となります。
トラムセット®︎とロキソニン®︎の違いまとめ
トラムセット®︎(トアラセット) [ トラマドール+アセトアミノフェン ] | ロキソニン®︎などの NSAIDs | |
非麻薬性弱オピオイド鎮痛薬 | 非ステロイド性抗炎症薬 | |
鎮痛効果の目安 | 中〜高 | 中 |
作用機序 | オピオイドがμオピオイド受容体に作用することで、下行性疼痛抑制系を賦活化するなどにより、鎮痛効果を得る。 | COX(シクロオキシゲナーゼ)を阻害することで抗炎症効果、鎮痛効果を得ている。 |
抗炎症作用 | ✖️ | ○ |
主な副作用 | ・嘔気・嘔吐 ・便秘 ・眠気 ・めまい | ・腎機能障害 ↓ 主にCOX非選択的阻害薬において ・胃潰瘍 ・易出血性 (ごく稀にアスピリン喘息) |
腎機能による調節 | ・Ccr < 50以下の場合は、50%減量 ・維持透析中は、最大25%まで | 使用は避ける |
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、ぜひよろしくお願いします?
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