変形性関節症

変形性膝関節症に有効な薬物療法はありますか?【OA】

こんにちは、今回は「変形性膝関節症の薬物療法の有効性」について取り上げていきたいと思います。

私のおばあちゃんも、変形性膝関節症で、いつも膝が痛いと言っていますが、どんな薬が有効なのかとても気になります。

変形性膝関節症の薬物療法の有効性について

変形性膝関節症で、膝の痛みで困っている方は大変多くいらっしゃいます。

変形性膝関節症の薬物療法の長期効果についてのシステマティックレビューとネットワークメタ解析研究が2018年12月にJAMAにて報告されました。

変形性膝関節症に有効性を認めた薬剤は、あったのでしょうか?

JAMAとはどんな雑誌?

JAMA(Journal of the Medical Association)米国医師会が発行する、世界5大医学雑誌の一つです。

IF(インパクトファクター)はおよそ47です。

〈 その他の世界5大医学雑誌 〉

New England Journal of Medicine(IF=79)、 The Lancet(IF=53)、 BMJ(British Medical Journal、IF=24)、 Annals of Internal Medicine(IF=19)

結論

まず結論です。

変形性膝関節症の疼痛抑制に有効性を示したのは、セレコキシブ(セレコックス®︎)(SMD:ー0.18、95%CI:−0.35〜ー0.01)とグルコサミン(SMD:ー0.18、95%CI:−0.49〜ー0.09)でした。

しかし、プラセボとの比較ではすべての薬剤で多大な不確実性が認められました。

それでは、詳しい研究結果を見ていきましょう。

方法 Methods

まずは、方法についてみていきます。

研究の概要
  1. 12ヶ月以上追跡した薬物療法の無作為化臨床試験(RCT)のシステマティックレビューネットワークメタ解析である。
  2. 1年以上の治療とフォローアップが続けられた変形性膝関節症患者の無作為化試験を検索し、47試験が採用された。
  3. 試験期間:1〜4年の幅があった。
  4. 主要評価項目:膝疼痛のベースラインからの変化
  5. 副次評価項目:身体機能、関節構造(X線画像で評価した関節裂隙狭小化)

今回の研究で、変形性関節症に用いられた薬はどんなものでしたか?

以下の7つの薬剤クラスに分けられ、合計33種類が解析されました。

解析された7つの薬剤クラス
  1. 鎮痛薬
    • アセトアミノフェン(カロナール®︎)
  2. 抗酸化薬
    • ビタミンE
  3. 骨活性薬
    • ラネル酸ストロンチウム
    • カルシトニン
    • リセドロネート(アクトネル®︎、ベネット®︎)
    • ビタミンD
    • ゾレドロン酸(ゾメタ®︎)
  4. 非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)
    • セレコキシブ(セレコックス®︎)
    • ジクロフェナク(ボルタレン®️)
    • エトフェナメート
    • エトリコキシブ
    • インドメタシン
    • ナプロキセン(ナイキサン®︎)
    • ニメスリド
    • ロフェコキシブ
    • チアプロフェニック酸
  5. 関節内注射薬
    • ヒアルロン酸
    • ベタメタゾン
    • メチルプレゾニゾロン
    • トリアムシノロン
    • ヒアルロン酸+メタメタゾン
    • ヒアルロン酸+メチルプレゾニゾロン
    • ヒアルロン酸+トリアムシノロン
  6. 変形性関節症治療用遅効性薬(SYSADOA)
    • グルコサミン硫酸塩
    • コンドロイチン硫酸塩
    • ジアセリン
    • グルコサミン塩酸塩
    • グルコサミン塩酸塩+コンドロイチン硫酸塩
  7. 推定疾患修飾薬
    • Cindunistat
    • Sprifermin
    • Doxycyclin
    • Matrix metalloproteinase inhibitors




結果 Results

それでは、結果を見ていきたいと思います。

システマティックレビューとネットワークメタ解析には、47件の無作為化試験が選ばれました。

  • 患者数:22,037人
  • 年齢のほとんどは55〜70歳
  • 約70%が女性

〈 47試験の特徴 〉

  • 47試験のうち25試験(53%)は、1群あたり100人以上の参加者を含んでいた。
  • 33試験(70%)は、高品質の研究であった(バイアスのリスクを評価するためのCochrane Collaborationツールによる)。
  • 14試験(30%)はバイアスのリスクが高いものであった。

疼痛の抑制に有効な薬剤はありましたか?

変形性膝関節症の疼痛の抑制に有効性を示したのは、

  1. セレコキシブ(セレコックス®︎)(NSAIDs) SMD:ー0.18、95%CrI:−0.35〜ー0.01
  2. グルコサミン硫酸塩 SMD:ー0.18、95%CrI:−0.49〜ー0.09

でした。

SMD:標準化平均差、95%CrI:95%信用区間(credible interval)

ただし、バイアスリスクの高い試験を解析から除外した場合には、疼痛抑制との関連性はみられませんでした。

一方で、グルコサミン硫酸塩は痛みの改善との関連を保ちました。

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身体機能の改善効果があった薬剤はありましたか?

身体機能の改善に有効性を示したのは、

  1. グルコサミン硫酸塩 SMD:-0.32、95%CrI:−0.52〜ー0.12

でした。

関節裂隙狭小化の改善効果があった薬剤はありましたか?

関節裂隙狭小化の改善に有効性を示したのは、

  1. グルコサミン硫酸塩 SMD:-0.42、95%CrI:−0.65〜ー0.19、平均差 0.27
  2. コンドロイチン硫酸塩 SMD:-0.20、95%CrI:−0.31〜ー0.07、平均差 0.16
  3. ラネル酸ストロンチウム SMD:-0.20、95%CrI:−0.36〜ー0.05、平均差 0.12

でした。

ラネル酸ストロンチウムは、骨粗鬆症の治療薬として欧州でのみ承認されており、心血管系の安全性が懸念されるため、現在その使用は制限されています

その他

  1. ヒアルロン酸とコルチコステロイドの関節内注射の組み合わせは、中程度の有益性を示したが、痛みとの関連は非常に多彩であった。
  2. アセトアミノフェン(カロナール®︎)は薬価の安い鎮痛薬であるが、今回の研究では長期的な痛みの改善との関連は認められなかった。

まとめ

変形性膝関節症の薬剤有効性のまとめ
  1. グルコサミン硫酸塩は、痛み、身体機能、関節構造と一貫して改善と関連していた
  2. しかし、グルコサミン塩酸塩など他のグルコサミンには効果が見られなかった(これは、短期間の研究を対象とした従来のメタアナリシスと一致している)。
  3. 痛みの変化に対する効果には、プラセボとのすべての比較において、多大な不確実性が認められた

➡︎ 変形性膝関節症における薬剤の有効性に関する不確実性を解決するために、より大規模なRCTが必要。

グルコサミンとは?

グルコサミンは、アミノ糖の一つで、軟骨や結合組織に広く分布しており、軟骨を生成する基礎となる物質です。

元々体内で生成され、軟骨、爪、靭帯、心臓弁などに存在していますが、年齢を重ねることで減少することがわかっています。

日本では、グルコサミン塩酸塩が主流ですが、欧米では、グルコサミン硫酸塩が主流です。

グルコサミンのサプリメントは、カニの甲羅やえびの殻から生成されることが多く、普通の食事に使用される食材摂取は難しいです。

なので、グルコサミンを摂取する場合には、サプリメントから摂ることが必要ですが、カニやエビアレルギーがある方は避けた方が良いです。

1日の推奨量はどれくらいですか?

1日どれくらい摂取すれば良いのですか?

研究などでは、1日あたり1500 mgのグルコサミンを摂取することが多いです。

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