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ビタミンDと自己免疫疾患の関係について【自己免疫疾患の発症を抑制するか】

こんにちは、今回は「ビタミンDと自己免疫疾患の関係」について取り上げていきたいと思います。

ビタミンDも自己免疫疾患に関係があるのですね。
詳しく知りたいですっ!

ビタミンDと自己免疫疾患の関係について

今回は、2022年1月に BMJ で報告された『 VITAL試験1) 』の研究結果を取り上げます。

まず、結論からですが、

米国で行われた、参加者25871人の大規模な、無作為化二重盲検プラセボ対照2×2デザイン試験において、5年間の追跡期間において、

ビタミンD摂取群では、プラセボ群と比べて、有意に自己免疫疾患の発症を抑えたという結果でした。

それでは、背景から結果までみていきたいと思います。

ビタミンDって、本当に自己免疫疾患に効果があるの?

まず本研究の背景として、ビタミンDと免疫の関係について、これまでの報告を見ていきたいと思います。

試験管レベルでのビタミンDの効果(in vitro)

脂溶性の活性型ビタミンD(1,25-ヒドロキシビタミンD)は、炎症、獲得免疫、自然免疫反応に関わる多くの遺伝子を制御しています5)

さらに詳しく

  • ビタミンD受容体は、樹状細胞、T、Bリンパ球、マクロファージに高密度に存在し、その機能は1,25-ジヒドロキシビタミンDの活性化結合によって影響される2)
  • 1,25-ジヒドロキシビタミンD3は、Tリンパ球の重要な増殖因子であるIL-2(インターロイキン)の発現を抑制し、Th1細胞のIL-12、インターフェロンγ、TNFといった炎症性サイトカインを抑制する一方で、IL-4、IL-5、IL-10を増加させる3)
  • CD4陽性T細胞に1,25-ジヒドロキシビタミンD3を添加すると、自己免疫疾患の発症に関与するTh17細胞を刺激する重要な因子である炎症性サイトカインである IL-6 も抑制される4)

動物レベルでのビタミンDの効果

自己免疫疾患の動物モデルでは、ビタミンDは疾患の発症や進行を抑制するため有益であると報告されています(5,6,7,8

ヒトでのビタミンDの効果

ですが、これまでのヒトにおける小規模な観察研究では、ビタミンDの有益な結果は出ていませんでした(9,10,11,12

試験管レベルや、動物実験レベルでは、ビタミンDの免疫に対する抑制性の作用は示唆されていたけど、小規模な人での研究では、あまりいい結果は出ていなかったのですね。

ですが、これまでに大規模な無作為化対照試験(RCT)は不足しており、

今回、ヒトにおける自己免疫疾患発症におけるビタミンDの有効性を評価するために、大規模な臨床試験が行われました。




方法 Methods

  1. 研究デザイン: 無作為化二重盲検プラセボ対照2×2デザイン試験( randomized, double blind, placebo controlled, two-by-two factorial design trial )
  2. アメリカ
  3. 登録人数: 25,871人
    • 女性(55歳以上): 51%、男性(50歳以上): 49%
    • 平均年齢: 67.1歳
    • 非ヒスパニック系白人: 71%、黒人: 20%、その他の人種・民族: 9%
  4. 追跡期間: 5年間
  5. ビタミンD:コレカルシフェロール 2000IU/日、海洋性オメガ3脂肪酸(イコサペンタエン酸 460 mg、ドコサヘキサエン酸 380 mg)
  6. 除外疾患: 腎不全、人工透析、肝硬変、高カルシウム血症、がん、心血管疾患、その他の重病の既往
  7. 主要評価項目(primary end point):観察期間中の自己免疫疾患の確証例の発症率
  8. 副次評価項目(secondary end point):観察期間中の自己免疫疾患の確証例+可能性あり例の発症率

コレカルシフェロール 2000IUってどのくらい?

2000IU とは、およそビタミンD 50 μgに相当します。

食事などからのビタミンD摂取は制限はありましたか?

参加者には、外部からのビタミンDの摂取は、1日 800 IU 以下に制限され、魚油のサプリメント(海洋性オメガ3脂肪酸)の使用を控えることが要求されました。

オメガ3脂肪酸(イコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸)

また、本研究では、ビタミンDだけでなく、これまでに免疫性炎症に対して抑制的に働くと考えられていた『オメガ3脂肪酸(イコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸) 』も合わせて検証されています

結果 Results

ビタミンD摂取による、自己免疫疾患の発症率は?(Primary Endpoint)

5年間の追跡期間中に、自己免疫疾患を発症したのは、

ビタミンD群 123人に対し、ビタミンDプラセボ群 155人でした。

ビタミンD摂取群の方が、統計的に有意に自己免疫疾患の発症率を低下させました

(ハザード比 0.78、95% CI:0.61〜0.99、P=0.05)

オメガ3脂肪酸摂取による、自己免疫疾患の発症率は?(Primary Endpoint)

5年の追跡期間中に、自己免疫疾患を発症したのは、

オメガ3脂肪酸群 130人に対し、オメガ3脂肪酸プラセボ群 148人でした。

ですが、オメガ3脂肪酸群の方が発症人数は少ないですが、統計的有意差は示せませんでした

(調整ハザード比 0.85、95% CI:0.67〜1.08、P=0.19)

サブグループ解析

さらに、本試験では、以下のように、4群(2×2)に分けて、サブグループ解析しています。

  1. ビタミンD + オメガ3脂肪酸 群
  2. ビタミンD + オメガ3脂肪酸プラセボ 群
  3. ビタミンDプラセボ + オメガ脂肪酸 群
  4. ビタミンDプラセボ + オメガ3脂肪酸プラセボ 群

5年間の観察期間中に、自己免疫疾患を発症したのは、 ビタミンDプラセボ + オメガ3脂肪酸プラセボ 群と比較して、

ビタミンD + オメガ3脂肪酸 群ビタミンD + オメガ3脂肪酸プラセボ 群が、統計的有意差を持って、発症率が低下しました。(それぞれ、ハザード比 0.69、95% CI:0.49〜0.96、P=0.03、ハザード比 0.68、95% CI:0.48〜0.94、P=0.02)

ただし、ビタミンDプラセボ + オメガ脂肪酸 群でも有意差はなかったですが、自己免疫疾患の発症率は低い傾向はありました

自己免疫疾患別の発症率は?

それぞれの自己免疫疾患別では、統計的に有意差を持って発症を抑制した疾患はありませんでした

〈今回調べられた自己免疫疾患〉

  1. 関節リウマチ
  2. リウマチ性多発筋痛症
  3. 自己免疫性甲状腺疾患
  4. 乾癬
  5. その他の自己免疫疾患
それぞれの発症率の解析
〈 関節リウマチ 〉
ビタミンD 15人、プラセボ群 24人 ハザード比 0.58、95% CI:0.30〜1.13、P=0.11(有意差なし)
オメガ3脂肪酸 15人、プラセボ群 24人 ハザード比 0.58、95% CI:0.30〜1.13、P=0.11(有意差なし)
リウマチ性多発筋痛症 〉
ビタミンD 31人、プラセボ群 43人 ハザード比 0.70、95% CI:0.44〜1.12、P=0.14(有意差なし)
オメガ3脂肪酸 34人、プラセボ群 40人 ハザード比 0.87、95% CI:0.55〜1.38、P=0.55(有意差なし)
自己免疫性甲状腺疾患
ビタミンD 21人、プラセボ群 11人 ハザード比 1.63、95% CI:0.77〜3.45、P=0.20(有意差なし)
オメガ3脂肪酸 12人、プラセボ群 20人 ハザード比 0.53、95% CI:0.25〜1.14、P=0.10(有意差なし)
〈 乾癬 〉
ビタミンD 15人、プラセボ群 23人 ハザード比 0.72、95% CI:0.37〜1.39、P=0.32(有意差なし)
オメガ3脂肪酸 23人、プラセボ群 15人 ハザード比 1.57、95% CI:0.80〜3.07、P=0.19(有意差なし)
その他の自己免疫疾患
ビタミンD 40人、プラセボ群 56人 ハザード比 0.74、95% CI:0.49〜1.11、P=0.15(有意差なし)
オメガ3脂肪酸 45人、プラセボ群 51人 ハザード比 0.84、95% CI:0.56〜1.26、P=0.40(有意差なし)

大事なこと

今回、試験で投与された、ビタミンDの「コレカルシフェロール 」は、病院で処方される『活性型ビタミンD3製剤』とは違いますので、くれぐれも混同しないようにご注意ください

コレカルシフェロールは、通常食事から摂取される、活性化されていないビタミンDのことです。

活性型ビタミンD3は、体内に吸収されたビタミンDが腎臓で代謝されることで活性型となります。

ワンアルファ®︎/アルファロール®︎、エディロール®︎といった活性型ビタミンD3製剤は、腎臓での代謝関係なしにビタミンD3を補充し、骨粗鬆症などの治療に使用されます。

〈 活性型ビタミンD3製剤 〉

  • アルファカルシドール(ワンアルファ®︎ / アルファロール®︎)
  • カルシトリオール(ロカルトロール®︎)
  • エルデカルシトール(エディロール®︎)など

「 こういった活性型ビタミンD3製剤を飲めば大丈夫 」というわけではありませんので、くれぐれもご注意ください。

終わりに

今回のビタミンDの研究は、大規模で無作為化比較試験が行われ、ビタミンDが自己免疫疾患の発症率低下に有益である可能性が示唆された重要な研究ですが、今後もビタミンDのヒトにおける免疫の作用については、研究を要する部門です。

繰り返しますが、ビタミンDの効果には期待したいですが、「ビタミンDを摂取すれば大丈夫」と短絡的には考えることがないようにご注意ください

ビタミンDの免疫に対する抑制性の作用は、以前から言われていましたが、ビタミンDは、身体にとって毒性がほぼなく、比較的安価で継続しやすいというとてもメリットがあるサプリメントです。

今後、さらなる研究が進めば、自己免疫疾患のコントロールに重要なサプリメントとなるかもしれません。

ビタミンDの多い食品

ビタミンDは、骨の健康だけでなく、筋肉、神経、免疫系の健康維持になどに重要な働きを担っている栄養素です。

ビタミンDを多く摂取したい場合は、食事やサプリメントから摂取しましょう。

〈 ビタミンDの多い食品 〉

  1. サケ、マス、サバなどの脂肪の多い魚
  2. マグロ、イワシ、ニシンになどの魚の缶詰
  3. タラ肝油
  4. キノコ類
  5. 強化食品

https://ai-kando.jp/news/2021/01/16457/ より引用)

ビタミンDの1日の推奨量について

そしたら、1日にビタミンDはどれくらいとったら良いのですか?

米国食品栄養会では、成人19〜70歳の方で、摂取推奨量は『 1日 600 IU( ≒ 15 μg)』を推奨しています。

本研究では、1日 2000 IU( ≒ 50μg)を摂取しているので、600 IUと比べると、3倍以上の量となります

ただし、ビタミンDは、脂溶性ビタミンであるため過剰摂取には注意が必要です

目安として、『 許容上限量は 1日 4000 IU 』と言われています。

頻度は稀ではありますが、過剰摂取に注意しながら、上手くビタミンDを摂取していきたいですね。

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〈参考〉

  • 1) Jill Hahn, et al. BMJ 2022;376;e066452.
  • 2) Dankers W, et al Front Immunol 2017;7:697.
  • 3) Bouillion R, et al. Endocr Rev 2019;40:1109-51.
  • 4) Stockinger B,et al. Immunol Cell Biol 2007;85:83-4.
  • 5) Kriegel MA, et al. Aeminars in arthritis and rheumatism 2011, Elsevier.
  • 6) Ding Y, et al. J Cell Mol Med 2017;21:975-85.
  • 7) Gallo D, et al. J Endocrinol Invest 2020;43:413-29.
  • 8) Yamamoto E, et al. J Autoimmun 2019;100:7-16.
  • 9) Altieri B, et al. Rev Endocr Metab Disord 2017;18:335-46.
  • 10) Costenbader KH, et al. Arch Intern Med 2008;168:1664-70.
  • 11) Murdaca G, et al. Autoimmun Rev 2019;18:102350.
  • 12) Skkaby T, et al. Endocrine 2015;50:231-8.
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今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです🥝 Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、ぜひよろしくお願いします🕊

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