こんにちは、今回は「脊椎関節炎の治療について」を取り上げていきたいと思います。
病気の次は、治療ですね!よろしくお願いしますっ!
脊椎関節炎の治療について
2016年にASAS / EULARより『 体軸性脊椎関節炎のマネジメントの推奨文』が出されました1)(ASAS:国際脊椎関節炎評価学会、EULAR:欧州リウマチ学会)。
今回は、この治療推奨文を参考に、脊椎関節炎の治療を紹介していきたいと思います。
ASAS / EULAR(2016年)における治療フローチャート(簡略版)
まずは、ASAS / EULARの治療をフローチャートを見てみましょう。
〈 体軸性脊椎関節炎の治療フローチャート 〉
1st:NSAIDs + リハビリテーション(自宅でのエクササイズ)+禁煙
⬇︎
2nd:活動性が高く、NSAIDsで効果が乏しい場合 → TNF阻害薬
- レミケード®︎(インフリキシマブ)
- ヒュミラ®︎(アダリムマブ)
⬇︎
3rd:TNF阻害薬で効果が乏しい場合 → IL-17阻害薬
- コセンティクス®︎(セクキヌマブ)
- トルツ®︎(イキセキズマブ)
- ルミセフ®︎(ブロダルマブ)
治療の基本
フローチャートにもありました様に、
まず、脊椎関節炎の治療の基本は、
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)とリハビリテーションとなります。
では、具体的に、NSAIDsやリハビリテーションの有効性やエビデンスを見てみましょう。
NSAIDs:非ステロイド性抗炎症薬(治療の基本)
脊椎関節炎に対する、治療の第1選択薬は、『 NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬) 』が推奨されています。
〈 NSAIDsの例 〉
● COX非選択的阻害剤
- ロキソニン®︎(ロキソプロフェン)
- ナイキサン®︎(ナプロキセン)
- ボルタレン®︎(ジクロフェナク)
- インテバン®︎(インドメタシン)
- ブルフェン®︎(イブプロフェン)など
● COX-2選択的阻害剤
- セレコックス®︎(セレコキシブ)
- ハイペン®︎(エトドラク)
- モービック®︎(メロキシカム)
ロキソニン®︎とセレコックスの違いについてはこちらをご参考ください ⬆︎
NSAIDsのエビデンス
有効性
ロキソニン®︎などの非選択的COX阻害薬でも、セレコックス®︎などのCOX-2選択的阻害剤でも脊椎関節炎の症状が軽減することは、いくつかの無作為化比較試験(RCT)で報告されています2-5)。
NSAIDsで変形の進行を抑えられるか
NSAIDsによって、背骨の変形の進行は抑えられるのですか?
高いエビデンスはありませんが、脊椎の変形の進行が抑えられる可能性が示唆されています6-8)。
しかし、ドイツの多施設研究の報告では、NSAIDsの持続使用が強直性脊椎炎の画像進行を抑えなかったという報告もあり9)、やはりNSAIDsだけでは、病状を抑えるのには不十分な場合もあり注意が必要です。
- NSAIDsを使用する際は、胃潰瘍などの消化管潰瘍のリスクが低い『 COX-2選択的阻害薬 』がより勧められる。
- ただし、NSAIDsの慢性的な使用には、腎障害、心血管のリスクがあるため使用には注意が必要である。
リハビリテーション(治療の基本)
体軸性脊椎関節炎は、運動で症状が改善し、安静で症状が悪化するのが一つの特徴です。
ASAS / EULARによる体軸性脊椎関節炎のマネジメントの推奨文(2016)1)でも、治療の基本として『 リハビリテーション(自宅でのエクササイズも含む) 』が推奨されています。
リハビリテーションのエビデンス
- 継続的な運動が、脊椎関節炎の症状を改善させる報告があります10)。
- 自宅でのエクササイズやストレッチも有効で、関節の可動域の維持や身体機能維持に重要です11)。
TNF阻害薬
NSAIDsで効果が不十分だった場合で体軸性脊椎関節炎の場合は、
次の選択肢として、
TNF阻害薬が推奨されます。
TNF阻害薬はどういった時に推奨されているのですか?
具体的に、TNF阻害薬が推奨される場合はどうなのですか?
〈 TNF阻害薬が推奨される場合 〉
- 疾患活動性が高い
- 炎症反応(CRPや赤沈 1時間値)の上昇がある
- NSAIDsが効かない(少なくとも2種類以上を4週間以上使用したにも関わらず)
- HLA-B27が陽性
- 病気発症からの期間が短い
TNF阻害薬のメリット
レミケード®︎(インフリキシマブ)とヒュミラ®︎(アダリムマブ)は、どちらも『乾癬』、『潰瘍性大腸炎』や『クローン病』にも有効性があり、保険適応があります。
これらの自己免疫疾患に合併する脊椎関節炎では、どちらの治療効果も期待できるため、非常に有効な治療法になります。
脊椎関節炎に保険適応のあるTNF阻害薬
レミケード®︎(インフリキシマブ)
〈 用法・用量〉
用量 | 1回の投与量: 体重1kg当たり5mg | ||
用法 | 初回投与後、2週、6週に投与し、以後6〜8週間の間隔で投与します。 |
ヒュミラ®︎(アダリムマブ)
〈 用法・用量〉
用量 | 1回の投与量: 1回 40 mg 効果不十分な場合は、1回 80 mgまで増量可能。 | ||
用法 | 1回 40 mgを、2週間毎に皮下注射。 |
メトトレキサートは併用すべきですか?
メトトレキサート(リウマトレックス®︎)は、併用すべきですか?
体軸性のみの脊椎関節炎では、メトトレキサートなどの、csDMARDsの併用は推奨されていません。
メトトレキサートは、2006年のメタ解析により強直性脊椎炎(体軸性脊椎炎)には効果がないという結論になっています12)。
ただし、実臨床では、脊椎関節炎に対してではなく、乾癬に対して使用してる場合などは考えられます。
※ csDMARDs(内服抗リウマチ薬)とは?
- メトトレキサート、アザルフィジン®︎(サラゾスルファピリジン)、リマチル®︎(ブシラミン)、プログラフ®︎(タクロリムス)、ケアラム®︎(イグラチモド)
IL-17阻害薬
TNF阻害薬の効果が乏しかった場合は、
次の選択肢として、
IL-17阻害薬が推奨されます。
(IL:インターロイキンというサイトカインの略)
IL-17阻害薬はどういった時に推奨されているのですか?
具体的に、IL-17阻害薬が推奨される場合はどうなのですか?
〈 IL-17阻害薬が推奨される場合 〉
- NSAIDs や TNF阻害薬を使用しても、疾患活動性が高い
- 炎症反応(CRPや赤沈 1時間値)の上昇がある
IL-17阻害薬の注意点
IL-17阻害薬の注意点として、
IL-17阻害薬のごく稀な副作用として、『 薬剤誘発性の炎症性腸疾患 』の報告(トルツ®︎やコセンティクス®︎では、0.4 ~ 0.5%)があり、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患が背景にある場合は、禁忌ではありませんが、使用には十分な検討が必要です。
脊椎関節炎に保険適応のあるIL-17阻害薬
コセンティクス®︎(セクキヌマブ):抗IL-17Aモノクローナル抗体
〈 用法・用量〉
用量 | 1回の投与量: 150 mg | ||
用法 | 1回 150 mgを、初回、1週後、2週後、3週後、4週後に皮下投与し、以降、4週間の間隔で皮下投与します。 |
トルツ®︎(イキセキズマブ):抗IL-17Aモノクローナル抗体
〈 用法・用量〉
用量 | 1回の投与量: 80 mg | ||
用法 | 1回 80 mgを、4週間隔で皮下投与します。 |
ルミセフ®︎(ブロダルマブ):抗IL-17受容体Aモノクローナル抗体
〈 用法・用量〉
用量 | 1回の投与量: 210 mg | ||
用法 | 1回210mgを、初回、1週後、2週後に皮下投与し、以降、2週間の間隔で皮下投与します。 |
治療と適応疾患 早見表
脊椎関節炎 | 乾癬 | 潰瘍性大腸炎 | クローン病 | |
---|---|---|---|---|
〈 TNF阻害薬 〉 | ||||
レミケード®︎ (インフリキシマブ) | ● | ● | ● | ● |
ヒュミラ®︎ (アダリムマブ) | ● | ● | ● | ● |
〈 IL-17阻害薬 〉 | ||||
コセンティクス®︎ (セクキヌマブ) | ● | ● | ||
トルツ®︎ (イキセキズマブ) | ● | ● | ||
ルミセフ®︎ (ブロダルマブ) | ● | ● |
〈 脊椎関節炎を来たす自己免疫疾患と生物学的製剤の対応表 〉
その他
末梢性脊椎関節炎に対する治療は何がありますか?
末梢性脊椎関節炎に対しては、ASAS / EULARによる体軸性脊椎関節炎のマネジメントの推奨文(2016)1)では、
『アザルフィジン®︎(サラゾスルファピリジン)』の使用は考慮される
と記載されています。
ただし、乾癬などで手指や足趾に『 付着部炎や指趾炎 』を認める場合は、関節リウマチの治療に準じて、メトトレキサートなども使用されることはあります。
末梢性関節炎については、エキスパートオピニオンや個々の患者さんの症状の程度に対して、治療適応を検討している場合が多いです。
避けたいこと
- 喫煙は、治療の反応性が悪くなるため、禁煙することが推奨されています20)。
〈参考〉
- 1) van der Heijde, et al. Ann Rheum Dis 2017;76:978-991.
- 2) van der Heijde, et al. Ann Rheum 2005;52:1205-15.
- 3) Sieper J et al. Ann Rheum Dis 2008;67:323-9.
- 4) Barkhuizen A, et al. J Rheumatol 2006;33:1805-12.
- 5) Dougados M, et al. 2001;44:180-5.
- 6) Wanders A, et al. Arthritis Rheum 2005;52:1756-65.
- 7) Kroon F, et al. Ann Rheum Dis 2012;71:1623-9.
- 8) Proddubnyy D, et al. 2012;71:1616-22.
- 9) Sieper J et al. Ann Rheum Dis 2016;75:1438-1443.
- 10) Cochrane Database SyST Rev 2008.
- 11) Masiero S, et al. J Rheumato 2011;38:1335-42.
- 12) Chen J, et al. Cochrane Data-base Syst Rec 2006;(4):CD004524.
- 13) Rhumatology(Oxford) 2016;55:659-68.
- 萩野 昇 ケースでわかるリウマチ・膠原病診療ハンドブック 羊土社
- ホスピタリスト 特集 膠原病 メディカル・サイエンス・インターナショナル
- 脊椎関越炎の治療の基本は、NSAIDsとリハビリテーションである。
- それでも効果が乏しかった場合は、次にTNF阻害薬を、その次にIL-17阻害薬を選択する。
- 体軸性脊椎関節炎のみの場合、メトトレキサートといったcsDMARDs(内服抗リウマチ薬)の併用は推奨されていないが、末梢性脊椎関節炎に対しては、アザルフィジン®︎(サラゾスルファピリジン)がまず考慮される。
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、ぜひよろしくお願いします?
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※個人個人で症状の違いがあるため、詳細な治療などにつきましては直接医療機関へお問い合わせください。