ステロイド

ステロイド離脱症候群について【ステロイドは自己判断でやめない】

ステロイドは、膠原病などの自己免疫疾患において、今でも最もよく使用される治療薬の一つです。ですが、ステロイドの特徴の一つとして、勝手にやめてしまうと『離脱症状』が起きてしまいます。

私も、ステロイドを処方された時に、先生から、「ステロイドは体調が悪いからといって勝手にやめないでください。」と言われました。
どういった離脱症状が起きるのか気になります!

ステロイド離脱症候群はなぜ起きるの?

ステロイドを長期に使用していると、段々とステロイドホルモンを分泌する副腎がステロイドホルモンを作らなくなってきます。

そうしていくうちに、副腎の働きも悪くなり、副腎は萎縮していきます。

筋肉を使わないと、細くなっていくのと同じです。

そこで、突然ステロイドをやめるとどうなるでしょう?

突然ステロイドをやめてしまうと、

今まで、ホルモンを作らずに楽をしていた副腎は、急にはステロイドホルモンを作れないため、ステロイドホルモンが低下した状態となります。

このため、
急にステロイドをやめてしまうと『副腎機能低下症』になってしまうのです。

つまり、ステロイド離脱症候群とは『 一時的な副腎機能低下症のこと 』なのですね。




ステロイド離脱症候群はどんな症状がありますか?

では、ステロイド離脱症候群にはどういった症状が起きるのでしょうか。

以下に、ステロイド離脱症候群で起きる症状を列挙しました。

〈 ステロイド離脱症候群で認める症状 〉

  • 倦怠感
  • 脱力感
  • 食欲不信
  • 嘔気
  • 腹痛
  • 発熱
  • 関節痛
  • 起立性低血圧
  • 低血糖
  • 体重減少
  • 低Na血症(ナトリウム)
  • 高K血症(カリウム)など

上記の症状は、基本的に副腎不全の症状と同じです。

いろいろな症状が起きる可能性があるのですね。

副腎クリーゼ

さらに、ステロイド離脱症候群の症状が強いと、『 副腎クリーゼ 』という命にも危険を及ぼす程の状態になってしまうこともあります。

これは、身体のステロイドホルモンが十分でないために、血圧や血糖が急激に低下したり、それにより意識混濁といった症状を認めます。

ステロイドを急にやめないで下さいと言うのは、このような生命に危険を及ぼす副腎クリーゼを発症させないようにするためなのです

離脱症候群とは言わないまでも、

ステロイドの減量が比較的少量でも、減量した週は倦怠感があったと感じる患者さんも中にはいらっしゃいます。

大量な減量でなければ、少しずつ身体が慣れてくることが多いですが、どうしても症状が強い場合は、かかりつけ病院での相談をご検討ください。

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ステロイドをどのくらいの量をどのくらいの期間飲むと離脱症候群が起きますか?

ステロイドをどれくらいの量を飲んで、どれくらいの期間使用すると、離脱症候群が発症しやすいかについては、

実は、一定の見解はありません。

でも、それでは、納得いかないと思いますので、

ステロイドホルモンが、正常のヒトの身体でどれくらい分泌されているのかに注目してみます。

ステロイドホルモン、別名 グルココルチコイドの分泌は、

  • コルチゾール換算で 10〜15 mg/日程度
  • プレドニゾロン換算で 2〜3 mg/日程度

といわれています。

なので、

プレドニゾロン換算で、3 ~ 5 mg 以上を長期に使用している場合に、急にプレドニゾロンを大幅に減量、中止する場合は、ステロイド症候群の発症を念頭に置く必要があります。




ステロイドホルモン(グルココルチコイド)の分泌量を測る検査はありますか?

内因性ステロイドホルモン(グルココルチコイド)の分泌能を評価するには、

  1. 血中ACTH
    • 正常値 7.2〜63.3 pg/mL
  2. 血中コルチゾール
    • 正常値 4.5〜21.1 μg/mL

を測定します。

血中ACTHもコルチゾールも、早朝安静時に取ります。外来では、午前8時〜10時に来院して採血をします。

早朝安静時に採血する理由は、コルチゾールの分泌が早朝〜午前中にかけてピークを迎えるためです。

(図:https://online.sbcr.jp/2014/12/003873.html)

また、必要に応じて

  • 迅速ACTH負荷試験

を行います。

迅速ACTH負荷試験とは?

http://www.jssi.org.au/column/4111 より引用)

ACTH(adrenocorticotropic hormone)とは、副腎皮質刺激ホルモンのことで、

脳の下垂体(前葉)から分泌されます。

ステロイドホルモンが足りていない時に、ACTHの分泌が増えることで、ステロイドホルモンの分泌を促すため、『刺激ホルモン』と呼ばれます。

迅速ACTH負荷試験は、

ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を負荷することで、

健常者なら、負荷後30分値・60分値を測ると、コルチゾールの値が前値の2〜4倍に増量します。

しかし、副腎のステロイドホルモン分泌が低下している場合では、コルチゾールの増量を認めません。

以上から、

迅速ACTH負荷試験によって、副腎のステロイドホルモン(コルチゾール)の分泌能を評価することができます。

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ステロイド離脱症候群を発症させないためには?

ステロイド離脱症候群を発症させないためには、どうしたらいいでしょうか?

それは、何よりも


ステロイドを勝手にやめない(自己中断しない)ことです。

これにつきます。

私の経験でも、私の患者さんには口を酸っぱくしてステロイドは自分の判断で途中でやめないでくださいと言っているので、皆さんそうしてくれています。

ステロイドの減量について

また、ステロイドの減量についても、一度に大量に減量しないことがステロイド離脱症候群を予防するために重要となります。

通常、ステロイドの減量の目安は、1〜2週間ごとに10%程度の減量を行います(厳密には、疾患毎や活動制によってに減量スピードは変わります)。

例えば、プレドニン®︎(プレドニゾロン) 60mgで開始して、次に減量した時の量は30mgではなく、50mgにします。

具体的なステロイドの減量・中止については、主治医と相談して決めていきます

ステロイドは経鼻的でも、経皮的でも、経気管支的投与でも、離脱症候群はおきますか?

ステロイドを経口、経静脈投与ほど起きやすくはないですが、

経鼻的1)・経皮的2)・経気管支的3)投与でも、副腎からのステロイドホルモン分泌は抑制されるという報告はあります。

なので、喘息の吸入ステロイドを長期に吸われている方でも、離脱症候群が起きる素因はあることになります。

それでも、ステロイド離脱症候群になってしまったら?

ですが、どうしてもステロイド離脱症候群になってしまう場合もあります。

その場合には、どう対応するのでしょうか。

ステロイド離脱症候群になってしまった場合は、

  • まずは、かかりつけ医に相談する(意識低下など緊急の場合は救急車も検討)。
  • そして、飲んでいたステロイドを再開する。
  • その後は、適切なタイミングで減量していく。

〈参考〉

  • 田中 廣壽 一冊できわめるステロイド診療ガイド 文光堂
  • 1) Bruni FM , et al. Neuroimmunomodulation 2009;16:353-362.
  • 2) Tempark T, et al. Endocrine 2010;38:328-334.
  • 3) Lapi F, et al. Eur Respir 2013;42:79-86.
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“今回のまとめ”
  1. ステロイド離脱症候群とは、副腎皮質機能低下症のことである。
  2. 離脱症候群の発症に、ステロイドの量と期間には一定の見解はないが、プレドニゾロン換算で 3 ~ 5 mg/日以上を長期に使用している場合は、急な大量の減量や中止によって、発症の可能性があり注意する。
  3. ステロイド離脱症候群にを発症させないためには、勝手に自己中断しないことがとても大切である。

今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです。Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!

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