ステロイドを内服されている方で、気になってしまうのは、やっぱりステロイドによる『骨粗鬆症』だと思います。
私も何年もステロイドを飲んでいますが、いつ骨粗鬆症が進んで圧迫骨折になってしまうのかとすごく心配でした。
- ステロイド性骨粗鬆症ってなに?
- プレドニン(ステロイド)『何 mg 』から予防する必要があるの?
- 骨粗鬆症はどうやって評価するの?
ステロイド性骨粗鬆症ってなに?

ステロイドの副作用の一つに『骨粗鬆症』があります。
ステロイドはストレスホルモンとも呼ばれ、体を元気にさせるホルモンなので、覚醒作用があったり、血糖値が上がったりします。
ただ、通常初期治療に使うステロイドは、正常1日に分泌されるステロイドホルモンよりもとても多く、副作用も起きてしまいます。
覚醒作用が過剰になることで「不眠」になったり、血糖値が高いのが長時間が続くことで「ステロイド性糖尿病」になったり、また「ステロイド性高血圧」になってしまいます。
逆に、ステロイドによって代謝が下がることもあります。
それが、『ステロイド性骨粗鬆症や高脂血症』といった副作用です。
1日のステロイドの分泌量ってどれくらい?
- プレドニン®︎(プレドニゾロン)換算で、1日 3〜5mg。
- コートリル®︎(ヒドロコルチゾン)換算で、1日 15〜20mg。

なぜ、ステロイドによって骨粗鬆症になるの?

じゃあ、なんでステロイドによって骨粗鬆症になるんですか?
ステロイドによる骨粗鬆症の原因は、『骨の代謝が下がること』によります。
具体的にはステロイドによって、
- 骨細胞や骨芽細胞の機能低下やアポトーシス(細胞死のこと)が活性化したり、
- 逆に、骨を溶かしてしまう破骨細胞の機能が亢進することで、
骨の代謝が低下してしまいます。
これによって、骨密度や骨質が低下し、骨粗鬆症に繋がってしまいます。
プレドニン(ステロイド)『 何 mg 』から治療する必要があるの?

とてもいい質問ですね。
ですが、実は、
骨粗鬆症について、プレドニン®︎何mg以下なら骨粗鬆症を起こさないという量はありません。
なので、ステロイド何mgでも、骨粗鬆症になってしまうリスクはあるのです。ここは大事なところです。
ですが、これでは納得できないし、対策が取れないですよね。。。
なので、ステロイド性骨粗鬆症ガイドライン(2014年)で「プレドニン®︎何 mg 」から治療を開始するかを参考にします。
ガイドラインを参考にすると、
プレドニン®︎(プレドニゾロン)換算で、『 7.5 mg 以上 』を使用中あるいは使用予定
の場合は、スコアが4点となり、治療開始の基準を満たします。
参考) ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン 2014年改訂版 大阪大学出版会
ステロイド性骨粗鬆症のガイドラインをみてみる

では、具体的に『ステロイド性骨粗鬆症のガイドライン(2014年)』を見てみましょう!(下図参照)
ガイドラインを見ると、
危険因子スコア 3点以上で薬物療法の開始が推奨されています。
ではここで、以下の一つでも該当すれば治療開始が推奨される項目(つまり一発で治療開始)を見てみましょう。
- 既存骨折あり(7点)
- 年齢65歳以上(4点)
- プレドニゾロン(プレドニン®︎)換算で7.5 mg以上 / 日(4点)
- 骨密度(%YAM)<70(4点)
以上のものどれか一つでも、該当すれば4点(≧3)となり一発アウトです。
意外に、簡単に基準を満たしてしまうんですね?
そうなんです。65歳以上というだけでも治療が推奨されてしまうのです。
スコアが 3 点未満では、胸腰椎のレントゲンや骨密度を測定して、定期的な骨折リスクを評価します。


(https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=11856 より引用)
参考) Suzuki Y, et al. J Bone Miner Metab 32,2014.
骨粗鬆症はどうやって評価するの?
では、骨粗鬆症はどうやって評価するのでしょうか?
具体的には、腰椎や大腿骨の骨密度検査を行います。
一般的に骨密度を評価するために行う検査は、『DXA法』を用います。

(https://www.honedaijoubu.com/measurement/ より引用)
骨密度検査のみかた
骨密度検査をやったことがあるのですが、表のみかたがよくわかりません。
そうですよね。
DXA法での骨密度の検査結果で、
あなたの骨密度と若い人の骨密度を比較した『%YAM(若年平均値に対するあなたの骨密度の割合)』に注目してください。
YAM( young adult mean )は、若年者の平均値に対してあなたの骨密度の割合(%)を表しています。
同年代と比較するよりも、若年成人と比較した割合(%YAM:ヤム)に注目してください。

%YAM(ヤム)が、いくつなら骨粗鬆症と診断されますか?
→ %YAM ≦ 70% で骨粗鬆症と診断されます。
なので、『ステロイドを3ヶ月以上内服されている方で%YAMが70%未満の場合』は、薬物療法が必要となります。
YAM | 評価 |
80 %以上 | 正常 |
70 〜 80 % | 骨塩量減少 |
70 %未満 | 骨粗鬆症 |
〈 YAM値と骨粗鬆症の指標 〉
※ ただし、骨粗鬆症の診断は下の図を参考すると、❶ もともと脆弱骨折ある方や、❷ 脆弱性骨折のない方で骨密度のTスコアが-2.5SD以下(標準偏差)でも診断基準を満たします。(詳しくは下図参照ください)

(https://fracture-net.jp/topics/topics15.html より引用)
骨代謝マーカーについて

ガイドライン上では、骨代謝マーカーは採用されていません。
なので、もし血液検査で採られた時は、参考程度に考えます。
骨代謝マーカー例
マーカー | |
骨形成 | ・BAP (骨型アルカリホスファターゼ) |
骨吸収 | ・TRACP-5b (酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ-5b) |
骨基質関連 | ・ucOC (低カルボキシル化オステオカルシン) |
〈 参考 〉
- ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン 2014年改訂版 大阪大学出版会
- 荻野昇 ケースでわかる リウマチ・膠原病診療ハンドブック 羊土社

- ステロイドによって骨代謝が低下し、骨粗鬆症が進行する。
- ステロイド性骨粗鬆症について、プレドニン®︎何mg以下なら骨粗鬆症をおこなさいという量はないが、7.5mg以上を3ヶ月以上使用している、また使用予定の場合は、薬物治療が必要である。
- 骨密度の検査は、若年成人と比較した %YAMに注目し、70%以下で骨粗鬆症と診断される。
今回はここまでです。次回は、ステロイド性骨粗鬆症の治療について紹介していきます。
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※個人個人で症状の違いがあるため、詳細な治療などにつきましては直接医療機関へお問い合わせください。
