こんにちは、今回は『 ダイフェン / バクタ®︎を飲む必要性 』について取り上げていきたいと思います。
私もプレドニン®︎を飲み始めるようになって、先生から予防の抗菌薬を飲みましょうといわれて、ダイフェンを飲んでいます。
でも、どういった菌に対して飲んでいるのか疑問がありました。
ダイフェン®︎ / バクタ®︎を飲む必要性について
免疫抑制剤を使用していると、やはり免疫力が低下してしまいます。
そのため、一般的に、中等量〜高用量のステロイドや、少量のステロイドでもその他に免疫抑制薬を併用する場合には、ダイフェン®︎ / バクタ®︎といったST合剤(抗菌薬)が併用されます。
では、『 なぜ、ダイフェン®︎やバクタ®︎という抗菌薬が使われるのでしょうか。』
今回は、こういった疑問にお答えしていきたいと思います。
ステロイドは自然免疫も獲得免疫も幅広く低下する
免疫力と言いますが、なんとなくざっくりした言葉ですね。
免疫力には、『自然免疫』と『獲得免疫』があります。
ステロイドは、この『自然免疫も獲得免疫も幅広く低下させる』のが特徴です。
自然免疫とは
自然免疫とは、病原微生物が侵入した際に、真っ先に動員される、いわば切り込み部隊のことを言います。
具体的には、好中球やマクロファージなどが、「誰でもいいから敵が侵入したらまずは、食べて(貪食)仲間に情報を伝えろ(抗原提示)!」といったように働いています。
いわば、自然免疫は『 非特異的防御機構 』 です。
- 好中球
- マクロファージ
- 好酸球
- 好塩基球
- 樹状細胞
- NK細胞(ナチュラルキラー)など
獲得免疫とは
獲得免疫は、自然免疫の免疫細胞から得た(抗原提示された)情報を受けて働く免疫機能のことをいいます。いわば、特攻部隊です。
具体的には、抗原提示されて活性化されたT細胞が直接攻撃したり(細胞性免疫)、B細胞が抗原に特異的な抗体を作ったりします(液性免疫)。
このように、獲得免疫は、『 特異的防御機構のこと 』をいいます。
- ヘルパーT細胞
- キラーT細胞
- 制御性T細胞
- B細胞
- 形質細胞
- メモリーB細胞など
自然免疫も獲得免疫も低下するとどうなるか?
ステロイドを飲むことによって、自然免疫も獲得免疫も幅広く低下するとどうなるでしょうか。
自然免疫、獲得免疫いずれも低下すると、
日和見感染症にかかりやすくなってしまいます。
この日和見感染症を予防する目的で内服するのが、『 ダイフェン®︎ / バクタ®︎ 』なのです。
えっと、そもそも日和見感染症ってなんですか?
日和見感染症とは、正常の人の免疫力があれば感染性を持たない『弱毒菌』による感染症のことです。
代表的な弱毒菌は、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、緑膿菌、結核菌、ニューモシスチス、サイトメガロウイルス、カンジダ、クリプトコッカスなどがあります。
なぜ、ニューモシスチスを予防することが大切なの?
弱毒菌であるニューモシスチスは、カビ(真菌)の仲間です。
では、なぜニューモシスチスを予防することが大切なのでしょうか?
それは、
ニューモシスチスが致命的な肺炎を起こすからです。
このために、強い免疫抑制下の方では、あらかじめ予防することが大切なのです。
ステロイド(プレドニン®︎)は何mgから、ニューモシスチス肺炎を予防をすればいいですか?
これは、とても大事な質問ですね。
経験的に、プレドニン®︎(プレドニゾロン) 20 mgを1ヶ月以上使用する場合にニョーモシスチス肺炎の予防が必要といわれています。
参考) Fishman JA, et al. J Rheumatol 1994;21:246-251.
予防投与の目安
ニューモシスチス肺炎の予防薬は、ダイフェンやバクタ®︎といったST合剤が第一選択薬です。
予防投与については、各施設ごとに若干違いがありますが、主に以下のように処方されることが多いです。
予防投与例
- 1日1回 1回 0.5〜1錠 を内服
- 1日2回 1回1錠 を週2回内服 など
ST合剤が使用できなかった時の選択薬
- サムチレール®︎(アトバコン)
- ペナンバックス®︎(ペンタミジン)の吸入
サムチレール®︎は以前飲んでいましたが、黄色の液体で、ちょっと苦手でした。
ニューモシスチス肺炎の特徴について
では、具体的にニューモシスチス肺炎は、どういった時に疑い、そして治療をするのでしょうか。
症状
ニューモシスチス肺炎の症状で特徴的なのは、痰の混じっていない『空咳(肝性咳嗽)』を認めることです。
その他に、「発熱や呼吸困難」を認めます。
あまり苦しくはなかったけど、気づいたらSpO2(酸素飽和度)という血中の酸素濃度が低下している場合もありますので、注意が必要です。
SpO2 ≧ 95%が正常となります。
検査
検査で大切なのは、『βーDグルカンとCT検査』です。
β-Dグルカン
β-Dグルカンは、血液検査で調べることができます。
β-D-グルカンは真菌全般の細胞質の骨格を構成する成分で、『深在性真菌症のスクリ-ニング法』として利用されます。
ただし、注意が必要なのは、β-Dグルカンはニューモシスチス以外でも上昇するということです。
また、これは余談ですが、同じ真菌でもβ-Dグルカンが上昇しないものもあります。
以下に、β-Dグルカンが上昇する真菌とそうでない真菌をまとめましたので、ご参照ください?
〈β-Dグルカンが上昇する真菌〉
- カンジダ
- アスペルギルス
- ニューモシスチスなど
〈β-Dグルカンが上昇しない真菌〉
- ムコール
- クリプトコッカス
〈 ニューモシスチス・イロベチイ 〉
β-Dグルカン 正常値: 20 pg/mL以下
β-Dグルカンは検査結果が出るのに結構時間がかかるので、疑わしい場合は先行して治療を開始する場合もあります。
CTでのスリガラス陰影
ニューモシスチス肺炎はCT画像が特徴的で、肺炎部分は『スリガラス影』を認めます。
さらに、胸膜まで達していないスリガラス影が特徴的です(胸膜をスペアされていると言ったりします)。
もちろん、胸部レントゲンでも、同じようにスリガラス影を認めますが、判断が難しいこともあるため、CTができる施設では、積極的にCTを撮ることでより診断精度が上がります。
ニューモシスチス肺炎によるCTでのスリガラス影
(http://www.kameda.com/pr/pulmonary_medicine/20mg1.html より引用)
治療
空咳、発熱、呼吸困難があり、β-Dグルカンの上昇、CTなどでスリガラス影を認めたら、『ニューモシス肺炎』を疑います。
スリガラス(間質性肺炎)の原因が、膠原病由来やその他の原因がなければ、ニューモシスチス肺炎と診断し、治療を開始します。
治療は、ダイフェン / バクタ®︎とステロイド
ニューモシスチス肺炎の治療の第一選択薬はST合剤である「ダイフェン / バクタ®︎」が使用されます。
予防量は、とても少ないのですが、「治療量」になると結構多くの量を内服します。
また、ニューモシスチス肺炎は、免疫学的機序も関与しているといわれており、プレドニン®︎(ステロイド)の内服もしくは点滴も同時に行います。
治療例
- ST合剤:ダイフェン / バクタ®︎ 1日9〜12錠 3〜4回に分けて内服(14〜21日間)
- ステロイド:プレドニン®︎換算で 80 mg 分2で5日間、40 mg 分1で5日間、20 mg 分1で11日間投与(計21日間)
副作用には注意!
治療量で使用するST合剤は、副作用が出現する可能性が高く注意が必要です!(予防量の場合は、頻度は減ります)
ST合剤の代表的な副作用
- 腎障害
- K(カリウム)上昇
- 薬疹
- 血小板低下
- 悪心・嘔吐など
ダイフェン®︎ / バクタ®︎ が使えない時は?
ST合剤は、ニューモシスチス肺炎の第一選択薬なのですが、
やはりその副作用の多さや皮疹などのアレルギー反応から、継続が難しくなってしまうケースもよくあります。
その場合には、別の治療薬に変更します。
第二選択薬:サムチレール®︎(アトバコン)
〈メリット〉
- 腎障害の副作用がない薬剤であり、腎機能低下がある方でも使うことができます。
- 副作用が少ない
〈デメリット〉
- コストが高いのが難点です。1日2包あたりおよそ3500円かかります。1ヶ月で約10万円、3割負担で3万円の薬代がかかってしまいます。
- 多少飲みにくい。蛍光黄色で特徴的な味があり、毎日内服するのが大変という方もいます。
まとめ
- ダイフェン / バクタ®︎は、ニューモシスチス肺炎を予防するために使用される。
- プレドニン®︎(ステロイド)20 mgを1ヶ月以上使用する場合にニューモシスチス肺炎を予防すべき。
- 空咳、発熱、呼吸困難はニューモシスチス肺炎のサインかもしれない。異常を感じたらすぐに医療機関を受診する。
参考)
- 田中 廣壽 1冊できわめる ステロイド診療ガイド 文光堂
- 萩野 昇 ケースでわかるリウマチ・膠原病 診療ハンドブック 羊土社
- 浦部 晶夫ら 今日の治療薬 南江堂
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、ぜひよろしくお願いします?
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※個人個人で症状の違いがあるため、詳細な治療などにつきましては直接医療機関へお問い合わせください。