今回は、全身性エリテマトーデス(SLE)のループス腎炎について紹介していきます。
ループス腎炎とは、SLEによる腎障害のことです。
どういった症状が起きますか?
腎臓に関連した症状が出るため、「四肢の浮腫み」、「尿の出が悪くなる」といった症状をきたします。酷くなると、顔や体幹にも浮腫みを認める場合もあります。
また、検査所見では、腎機能を指す「Cre(クレアチニン)」の上昇や、尿検査ではタンパク尿や血尿を認めます。(※出血ではないため、赤い尿となることは通常ありません)
ループス腎炎はどういった病態ですか?
ループス腎炎は、腎臓の糸球体という部分に起きる糸球体腎炎のことです。糸球体に「免疫複合体」が沈着することによって炎症が起きます。
〈 糸球体の模式図 〉
免疫複合体とは、抗核抗体などの自己抗体(自分の抗体)が、自己抗原(自分の身体の成分)とくっついてできたものです。これが、糸球体の基底膜やメサンギウムといった構造の至る所に沈着し、糸球体の濾過機能(尿をこしとる機能)を障害していきます。
それによって、尿からタンパク質や血液成分がタンパク尿や血尿という形で漏れ出てきます。
なので、やはり悪さをしているのは自己抗体の出現が問題なのです。
頻度は?
ループス腎炎は、SLEの方の約半数(50%)が認めると言われています。また、なんらかの腎障害は75%の方で認めると言われています。
重症度は?
ループス腎炎は、SLEの症状の中でも重症に分類されます。また、腎生検を行なった場合、その型(タイプ)によっても分類されます。
Class | 尿所見 | 重症度 |
Ⅰ 型(微小メサンギウムループス腎炎) | 正常 | 軽 |
Ⅱ 型(メサンギウム増殖性ループス腎炎) | 正常 or 軽度タンパク尿 or 軽度血尿 | 中 |
Ⅲ 型(巣状ループス腎炎) | 血尿 & タンパク尿(血尿優位) | 重 |
Ⅳ 型(びまん性ループス腎炎) | 血尿 & タンパク尿(血尿優位) | 重 |
Ⅴ 型(膜性ループス腎炎) | タンパク尿が多い | 重 |
Ⅵ 型(硬化性ループス腎炎) | タンパク尿 & 血尿 | 腎不全 |
※ここでの血尿は、顕微鏡的血尿といって、肉眼では赤みは出ない血尿です
また、患者さんの状況や、病院の状況によって、腎生検が出来ない場合もあります。その場合は、尿所見と腎機能(クレアチニンなど)を見ながら、腎組織のタイプを推測し、治療法を決定します。
例えば、「血尿も強く、タンパク尿もあり腎障害も出ているから、Ⅳ型が推測される。なので、ステロイドパルスとセルセプト®︎で行こう。」と言った形です。
初期治療(寛解導入療法)は?
基本的には腎生検による組織のタイプ(型)によって治療法が変わります。
どのタイプでも使用するのがステロイドの内服です。プレドニン®︎(プレドニゾロン)というステロイドを内服することが多いかと思います。初期症状が強い場合、点滴で行う場合もあります。
プラケニル®︎(ヒドロキシクロロキン)も、治療の早い段階で併用していきます。
以下に、タイプによって、併用する免疫抑制剤を記載した表を載せました。
Class | |
Ⅰ 型 | 経過観察 or 低用量ステロイド |
Ⅱ 型 | 低〜中等量ステロイド |
Ⅲ 型 | ステロイドパルス+セルセプト®︎orエンドキサン®︎ |
Ⅳ 型 | ステロイドパルス+セルセプト®︎orエンドキサン®︎ |
Ⅴ 型 | 中〜高用量ステロイド+セルセプト®︎orプログラフorネオーラル®︎ |
Ⅵ 型 | 保存的療法 |
その後、ステロイドは少しずつ減量していきます。また、セルセプト®︎は最初は少ない量からスタートして、副作用をみながら少しずつ増量します。
ステロイドを減量していく段階で、症状も落ち着いてきますが、稀に症状が再燃してくる場合があります。その場合、ステロイドを延長する、セルセプト®︎を増量する、プログラフ®︎などを追加するといった対応を検討します。
症状が落ち着き、寛解の状況に入ったら、その次の段階の維持療法(寛解導入療法が終わり、腎炎が落ち着いて状態)に入ります。
維持療法としては、少量のステロイドに加えて、セルセプト®︎やイムラン®︎(アザチオプリン)の併用を行います。併用しないでも、病態が落ち着いている場合があるので、患者さんの状態で、主治医が判断していきます。
ループス腎炎は、血液凝固(血が固まる)の関与があり、それにより微小循環障害を起こします。そのため、中等症から重症の場合は、抗血栓薬(血液サラサラの薬)を併用することが推奨されています。
具体的には、ヘパリン、ワーファリン®︎やバイアスピリン®︎などを使用します。
注意点は?
- 高血圧は、腎臓の血管を慢性的に傷つけてしまい、腎機能を悪化させてしまう可能性があるため、血圧管理は重要です。まずは、1日2〜3回血圧を測定し、正常範囲にいるかを確認しましょう。(140/90以下が目安です)
- ロキソニン®︎(ロキソプロフェン)といった、NSAIDsと呼ばれる解熱鎮痛薬は、腎障害を悪化させる可能性があるため、使用は避けます。
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