ワクチン

【 大規模研究 】mRNAワクチンの安全性について

こんにちは、今回は「延べ240万人以上の大規模研究によるmRNAワクチンの安全性」について取り上げていきたいと思います。

時間がないという方は、方法や考察は飛ばし読みしても大丈夫です!?‍♂️

今回の論文は、ニューイングランドジャーナルに2021年8月に掲載された『Safety of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Setting』です。

参考) Noam Barda, et al. N Engl J Med. 2021 Sep 16;385(12):1078-1090.

方法 Methods

イスラエルで行われたコホート研究です。対象者は、のべ240万人以上の大規模コホート研究です。

使用されたmRNAワクチン(BNT162b2)は、ファイザー-ビオンテック社製です。

対象

mRNAワクチン接種群 884828人 コントロール群(非接種) 882828人

男性 461590人(52%)、女性 423238人(48人)

年齢の中央値は、43歳でした。

対象者の併存疾患の割合

重症化リスク因子を1つ以上持っていたのは、両群とも313223人でした。

重症化リスク因子が1つもない人が、両群とも595897人でした。

それぞれの群における、併存疾患を持っていた方の割合です。

高リスク因子ワクチン接種群コントロール群
(非接種)
悪性疾患1 %1 %
慢性腎病4%5%
COPD
(慢性閉塞性肺疾患)
1%1%
心疾患4%4%
臓器移植<1%<1%
肥満
BMI 30-40
15%14%
重度肥満
BMI≧40
1%1%
妊娠1%1%
鎌状赤血球症<1%<1%
喫煙18%21%
2型糖尿病7%7%
   
低リスク因子  
喘息5%5%
脳血管疾患2%2%
他の呼吸器疾患<1%<1%
高血圧11%11%
免疫抑制患者2%2%
脳神経疾患3%3%
肝疾患1%1%
太りすぎ
BMI 25-30
32%31%

研究の目的

BNT162b2 mRNAワクチンの安全性を評価する。

評価方法

・臨床的に意味のある短期および中期の潜在的有害事象を幅広く捉えるため、発熱、倦怠感、局所的な注射部位の反応などの軽度の有害事象は本研究の対象外としています。

・研究では、1回目と2回目のワクチン投与後にそれぞれ21日間の追跡調査を行い、42日間の追跡調査を行っています。

→ 本研究は、中期的な有害事象を確認することを、主な目的としています。

同様に、42日以内に診断できない有害事象(例えば、慢性自己免疫疾患)は対象外とされました。

コントロール群とのマッチング:

研究では、過去にその有害事象の診断を受けたことがない人の集団において、社会人口統計学的および臨床的変数に従って、ワクチン接種者と非接種者を個別にマッチングさせています。

新型コロナウイルス感染者と非感染者をマッチさせた同様の解析も行われました。

新型コロナウイルス感染者 173106人 非感染者(コントロール) 173106人

男性 79843人(46%) 女性 93263人(54%)

年齢の中央値は、34歳でした。

結果 Results

ワクチン接種によって有意差が出た有害事象4つ

  1. 心筋炎
  2. リンパ節腫脹
  3. 虫垂炎
  4. 帯状疱疹

具体的には?

心筋炎 リスク比 3.24 リスク差 2.7

→ つまり、ワクチン非接種と比べて、ワクチン接種の方が、3.24倍 心筋炎になるリスクが上がり、数で言うと、10万人あたり、2.7人 増えるということです。

リンパ節腫脹 リスク比 2.43 リスク差 78.4

→ ワクチン非接種と比べて、ワクチン接種の方が、2.43倍 リンパ節腫脹になるリスクが上がり、数で言うと、10万人あたり、78.4人 増えることになります。

虫垂炎 リスク比 1.4 リスク差 5

→ ワクチン非接種と比べて、ワクチン接種の方が、1.4倍 虫垂炎になるリスクが上がり、数で言うと、10万人あたり、5人 増えることになります。

帯状疱疹 リスク比 1.43 リスク差 15.8

→ ワクチン非接種と比べて、ワクチン接種の方が、1.43倍 帯状疱疹になるリスクが上がり、数で言うと、10万人あたり、15.8人 増えることになります。

その他わかったこと

・因果関係が不明部分もありますが、ワクチン接種によって、貧血、急性腎不全、頭蓋内出血、リンパ球減少などの有害事象を大幅に減少させました。

・ワクチン接種と関係がなかった症状(差がなかった)・・・関節炎/関節痛、脳血管イベント、深部静脈血栓症、心筋梗塞、心膜炎、てんかん、失神、めまいなど

新型コロナウイルス感染によるさまざまな有害事象

  1. 心筋炎
  2. 急性腎障害
  3. 不整脈
  4. 深部静脈血栓症
  5. 頭蓋内出血
  6. 心筋梗塞
  7. 心膜炎
  8. 肺塞栓症

→ mRNAワクチンを打つよりも、多くの有害事象が有意差をもって発生しました。

mRNAワクチンを打つことと新型コロナウイルス感染症にかかることによる有害事象の比較について

ワクチンを打った方がリスクが上がる?

  1. リンパ節腫脹
  2. 帯状疱疹感染症

新型コロナウイルス感染症にかかった方がリスクが上がる?

  1. 急性腎障害
  2. 不整脈
  3. 深部静脈血栓症
  4. 心筋梗塞
  5. 心筋炎
  6. 心膜炎
  7. 肺塞栓症

表の見方?

オレンジ色の新型コロナウイルス感染(SARS-CoV-2)の場合、「Acute Kidney Injury(急性腎障害)」だと、10万人あたり125人のリスクがあるということになります。

「Arrhythmia(不整脈)」だと、10万人あたり166人、「Deep Vein Thrombosis(深部静脈血栓症)」だと、10万人あたり43人、「Myocardial Infarction(心筋梗塞)」だと、10万人あたり25人、「Pulmonary Embolism(肺塞栓症)」だと、10万人あたり62人コロナにかかった場合に併発するリスクがあるということです。

青色のmRNAワクチン接種群の場合は、

「帯状疱疹(Herpes Zoster)」だと、10万人あたり16人、「Lymphadenopathy(リンパ節腫脹)」だと、10万人あたり78人ワクチン接種時のリスクがあったということです。

考察 Discussion

研究をしたあとの考察はとても大事ですね。結果からどんなことが考えられるでしょうか。

・ワクチン接種群(約88万人)で心筋炎を発症した21人のうち、年齢の中央値は25歳で、90.9%が男性であった。

・今回の研究では、ファイザー社製のBNT162b2ワクチンと様々な血栓塞栓症イベントとの間に関連性は見られなかった。

・今回の研究は、mRNAワクチンによる有害事象と新型コロナ感染による有害事象を対比させることで、mRNAの安全性や有用性を検討しようとした試験である。ただし、結果の比較には注意が必要である。ワクチンを接種する人は、接種率100%ですが、コロナ感染の確率は、人・場所・時間に依存する不確実なものであるため、ワクチンを打つ方が有害事象のリスクが低いのだと短絡的に言えるわけではないということを念頭に置いておく必要があります。

参考文献

Noam Barda, et al. N Engl J Med. 2021 Sep 16;385(12):1078-1090.

“今回のまとめ”
  • mRNAワクチン(BNT162b2)は,多くの有害事象のリスクとは関連していなかった。
  • しかし,心筋炎のリスクと関連していた(10万人あたり2.7件)。
  • 新型コロナウイルスに感染すると,重篤な有害事象およびその他多くの重篤な有害事象のリスクが大幅に上昇した。

今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになります!?

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