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2022年 ACR(アメリカリウマチ学会)リウマチ・筋骨格系疾患患者におけるワクチン接種のためのガイドライン

こんにちは、「2022年 ACR(アメリカリウマチ学会)リウマチ・筋骨格系疾患患者におけるワクチン接種のためのガイドライン」について取り上げていきたいと思います。

免疫抑制薬の休薬期間について、コロナのmRNAワクチンとインフルエンザワクチンでどう違うのか気になっていました。よろしくお願いします。

2022年 ACR リウマチ・筋骨格系疾患患者におけるワクチン接種のガイドライン

「 2022年 ACR(アメリカリウマチ学会)リウマチ・筋骨格系疾患患者におけるワクチン接種のガイドライン1)は、2022年8月にACRから発表されました。

今回のACRのワクチン接種のガイドラインはアメリカでの推奨で、日本で推奨されている訳ではなく、免疫抑制薬を使われている患者さんには参考となりますが、

実際の診療の場では、それぞれの患者さん毎の疾患活動性を考慮し、医師と患者さんが同意のもと免疫抑制薬の休薬が行われています

また、本ガイドラインを支持するエビデンスの質は全体的に低く、ほとんどの勧告は条件付きであることもご注意ください。

非生ワクチンの接種について

非生ワクチン時の免疫抑制薬の服薬管理について

それぞれの非生ワクチンにおける、免疫抑制薬の服薬管理は以下のとおりです。

インフルエンザワクチンそれ以外の非生ワクチン
メトトレキサートメトトレキサートはワクチン接種後2週間休薬するメトトレキサートを継続する(
リツキシマブ(リツキサン®︎)リツキシマブを継続する★★リツキシマブの次の投与時期に合わせてワクチン接種を行い、ワクチン接種後少なくとも2週間はリツキシマブを中止する。(
それ以外の免疫抑制薬★★★
免疫抑制薬を継続する(免疫抑制薬を継続する(

:条件付き推奨

  • 疾患活動性が許す場合のみ休薬する。リウマチ専門医以外の医師(一般小児科医や内科医など)は、ワクチン接種の機会を逃さないように、インフルエンザワクチン接種を行った後、患者のリウマチ専門医とメトトレキサートの休薬について相談することが推奨される。
  • ★★ インフルエンザワクチン接種を予定通りに行う。疾患活動性が許すならば、インフルエンザワクチン接種後少なくとも2週間は、その後のリツキシマブ投与を遅らせる。
  • ★★★タクロリムス(プログラフ®︎)、シクロスポリン(ネオーラル®︎)、ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト®︎)、アザチオプリン(イムラン®︎/アザニン®︎)、ミゾリビン(ブレディニン®︎)、シクロフォスファミド(エンドキサン®︎)

ステロイド内服中の非生ワクチンの服薬管理について

リウマチ・筋骨格系疾患患者さんには、

疾患の活動性にかかわらず非生ワクチンの接種が条件付きで推奨される

それぞれの非生ワクチンにおける、ステロイドであるプレドニゾロン(プレドニン®︎)の服薬管理は以下のとおりです。

プレドニゾロン(プレドニン®︎)インフルエンザワクチンそれ以外の非生ワクチン
PSL ≦ 10 mg/日継続(継続(
10 mg < PSL < 20 mg継続(継続(
PSL ≧ 20 mg/日継続(投与延期

:強く推奨、:条件付き推奨

  • PSL < 20mg/日に減量するまで、ワクチン接種を延期する。

不活化ワクチン(非生ワクチン) 一覧

  • 肺炎球菌
  • インフルエンザ
  • 子宮頸癌
  • A型肝炎
  • B型肝炎
  • 狂犬病
  • 破傷風
  • ジフテリア
  • 日本脳炎
  • ポリオ
  • 髄膜炎菌ワクチン
  • 帯状疱疹(シングリックス®︎)




生ワクチンの接種について

生ワクチン時の免疫抑制薬の服薬管理について

免疫抑制剤投与中のリウマチ・筋骨格系疾患患者さんには、

生ワクチンの接種を延期することが条件付き推奨される。

なので、生ワクチン接種時は、免疫抑制薬を一旦休薬してから、ワクチン接種後も4週間休薬することが条件付きで推奨される。(具体的には以下を参照ください)

(※ ただし、日本では免疫抑制薬使用中の患者さんにおける生ワクチンの接種は禁忌となります。)

生ワクチンの休薬期間生ワクチンの休薬期間
〈 ステロイド
プレドニゾロン(プレドニン®︎)< 20 mg
メチルプレドニゾロン(メドロール®︎)
デキサメタゾン(デカドロン®︎)
ベタメタゾン(リンデロン®︎)
4週間の休薬(4週間の休薬(
メトトレキサート
アザチオプリン(アザニン®︎ / イムラン®︎)★★
4週間の休薬(4週間の休薬(
ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト®︎)
タクロリムス(プログラフ®︎)
シクロスポリン(ネオーラル®︎/サンディミン®︎)
経口エンドキサン®︎(シクロフォスファミド)
レフルノミド(アラバ®︎)
4週間の休薬(4週間の休薬(
〈 JAK阻害薬 〉
トファシチニブ(ゼルヤンツ®︎)
バリシチニブ(オルミエント®︎)
ペフィシチニブ(スマイラフ®︎)
ウパダシチニブ(リンヴォック®︎)
フィルゴチニブ(ジセレカ®︎)
1週間の休薬(4週間の休薬(
〈 TNF阻害薬 〉
インフリキシマブ(レミケード®︎)
アダリムマブ(ヒュミラ®︎)
エタネルセプト(エンブレル®︎)
ゴリムマブ(シンポニー®︎)
セルトリズマブぺゴル(シムジア®︎)
〈 IL-17 阻害薬 〉
イキセキズマブ(トルツ®︎)
セクキヌマブ(コセンティックス®︎)
ブロダルマブ(ルミセフ®︎)
ビメキズマブ(ビンゼレックス®︎)
〈 IL-12/23 阻害薬 〉
ウステキヌマブ(ステラーラ®︎)
〈 IL-23 阻害薬 〉
グセルクマブ(トレムフィア®︎)
リサンキズマブ(スキリージ®︎)
〈 抗 BLyS 抗体製剤 〉
ベリムマブ(ベンリスタ®︎)
1回投与を控える(★★★4週間の休薬(
〈 IL-6 阻害薬 〉
トシリズマブ(アクテムラ®︎)
サリルマブ(ケブザラ®︎)
1回投与間隔分休薬(★★★★ 4週間の休薬(
〈 IL-1 阻害薬 〉
カナキヌマブ(イラリス®︎)
1回投与間隔分休薬(★★★★ 4週間の休薬(
アバタセプト(オレンシア®︎)1回投与間隔分休薬(★★★4週間の休薬(
アニフロルマブ(サフネロー®︎)1回投与間隔分休薬(★★★4週間の休薬(
シクロフォスファミド静注(エンドキサン®︎)1回投与間隔分休薬(★★★4週間の休薬(
リツキシマブ(リツキサン®︎)6ヶ月間(4週間の休薬(
免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)★★★★★
① 300-400 mg/kg
② 1 gm/kg
③ 2gm/kg
① 8ヶ月
② 10ヶ月
③ 11ヶ月(
4週間の休薬(

:条件付き推奨

  • プレドニゾロン 20 mg/日未満(体重10kg未満の患者には2mg/kg/日未満)を受けている患者さんに対してはワクチン接種が重要であり、ステロイドを休薬した場合の病勢悪化や副腎機能不全のリスクが高い場合、ステロイドの低用量での接種を継続することができる。
  • ★★ メトトレキサート≦0.4mg/kg/週またはアザチオプリン≦3mg/kg/日(低レベル免疫抑制)服用中の患者さんに対してはワクチン接種が重要で、免疫抑制薬休薬による再燃のリスクが高い場合、休薬期間を短縮することが可能である。
  • ★★★ 投与間隔が2つ以上ある薬剤については、最も長い投与間隔を選択する(例:エタネルセプト(エンブレル®︎)の皮下投与は1週間に2回でも1週間に1回でも可能であるが休薬は1週間行う)。
  • ★★★★ 自己炎症性疾患や全身型若年性特発性関節炎の子どもで、生物学的DMARDsを休薬した場合の疾患再燃のリスクが非常に高い場合、弱毒生ワクチン接種が重要であれば、休薬期間の短縮を検討することができる。
  • ★★★★★ ワクチン接種前に免疫グロブリン免疫グロブリン静注療法(IVIg)を投与することを推奨するのは、ワクチンの効果を高めるためであり、安全性を高めるためではない。(麻疹の流行時など、状況によっては、ワクチン接種を遅らせるよりも早める方が望ましい)

弱毒生ワクチン 一覧

  • 肺炎球菌
  • BCG
  • はしか(麻疹)
  • 風疹
  • おたふくかぜ
  • みずぼうそう(水痘)
  • 黄熱
  • ロタウイルス




同じ日にワクチンを複数回接種するのはどうですか?

リウマチ・筋骨格系疾患患者さんには、個々のワクチン接種を別の日に行うのではなく、複数のワクチン接種を同じ日に行うことが条件付きで推奨され

免疫抑制薬使用中のリウマチ・筋骨格系疾患患者における特定のワクチンの適応拡大について

シングリックス®︎(帯状疱疹ワクチン)

  • 65歳以上のリウマチ・筋骨格系疾患(RMD)患者、および免疫抑制剤使用中の18歳以上65歳未満のRMD患者に対しては、通常量のインフルエンザワクチン接種よりも高用量またはアジュバント接種を行うことが条件付きで推奨。
  • 免疫抑制剤使用中の65歳未満のRMD患者には,肺炎球菌ワクチン接種が強く推奨される.
  • 免疫抑制剤使用中の18歳以上のRMD患者には、遺伝子組換え帯状疱疹ワクチンの接種が強く推奨される(ただし、日本では遺伝子組み換え帯状疱疹ワクチンは50歳以上に限定)。
  • 免疫抑制剤使用中の26歳以上45歳未満のRMD患者で、ワクチン接種歴のない患者には、HPVワクチンの接種が条件付きで推奨される。

最後に

繰り返しにはなりますが、本ガイドラインのエビデンスの質は全体的には低く、ほとんどの勧告は条件付きとなっています

実診療の場では、それぞれの患者さん毎の疾患活動性を考慮し、医師と患者さんが同意のもと免疫抑制薬の休薬が行われます

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今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです! Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!

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※個人個人で症状の違いがあるため、詳細な治療などにつきましては直接医療機関へお問い合わせください。