ITP(特発性血小板減少性紫斑病)

特発性血小板減少性紫斑病の治療について【ITP】

こんにちは、今回は特発性血小板減少性紫斑病の治療(ITP)について取り上げていきたいと思います。

ITPの治療は、脾臓も摘出する時もあると聞いたことがありますが、気になります。よろしくお願いします!

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の治療について

特発性血小板減少性紫斑病は長いため、以下『 ITP 』と表記します。

ITP:immune thrombocytopenic purpura

ITPの治療適応は?

ITPの治療適応は、必ずしも血小板減少があるからといって、全員が治療する訳ではありません

具体的には、通常は、PLT(血小板)が2〜3万/μL 以上の場合で、出血症状がないもしくは軽症ならば、治療をせずに経過観察をします

それは、血小板数が 2 ~ 3万万/μL 以上あれば、多少の出血では、重症になる可能性は低く、むしろ治療による副作用などのデメリットの方が大きくなってしまうためです。

ITP治療の目安

〈 血小板数 〉出血症状あり出血症状なし
10万 > PLT ≧ 2〜3 万/μL
適応あり原則適応なし(経過観察)
PLT < 2万適応あり適応あり

ただし、PLTが2万以上でも、ピロリ菌感染によるITPの場合は、除菌で治療が完結するため、除菌を行うことはあります。

また、高齢の方で、ワーファリン®︎(ワルファリン)などの抗凝固薬(サラサラ薬)を内服している場合は、脳出血のリスクがあるため、血小板 5万/μL以下で治療を始めます。

ITPの治療目標は?

ITPの治療目標は、

血小板数を正常にすることではありません。

PLT 3〜5万以上あれば、致命的な出血を招くことは多くはないため、

『 血小板数の正常化ではなく危険な出血を防ぎ、かつ生活の質を向上すること 』を目標とします。

まずはピロリ菌の除菌

ITPの原因が、ピロリ菌(Helicobacter pylori)感染である場合は、ピロリ菌の除菌を行います

ITPの方の、ピロリ菌感染陽性率は、65 〜 70%程度とされています1)

ピロリ菌を除菌することで、およそ50%の方で、血小板増加を認めます

除菌が成功すれば、再発はありません。




ステロイド

ピロリ菌が陰性または除菌無効の場合は、次に行うのは、ステロイドです。

なぜ、ITPにステロイドが有効なのですか?

それは、ITPの血小板減少の原因は、免疫学的機序によるためです。

そのため、ステロイドによって免疫を抑えることで、血小板減少が改善します

ステロイドの投与量

ステロイドは、プレドニゾロン(プレドニン®︎)を 初期量として 0.5 〜 1 mg/kgを 2〜4 週間投与後、血小板の反応を見て徐々に減量していきます。

プレドニゾロンの目標は、10mg /日を目指します。理想は、5 mg/日〜中止です。

〈 例 〉

  • 体重 50 kgの人は、初期量 プレドニゾロン(プレドニン®︎) 25~50 mg。
  • 体重 60 kgの人は、初期量 プレドニゾロン(プレドニン®︎) 30~60 mg。

ステロイドが無効の場合(難治例)

ステロイドが無効、あるいは脾摘の適応がない難治例の場合は、以下の薬剤を検討します。

トロンボポエチン受容体作動薬

トロンボポエチンとは?

トロンボポエチンとは、血小板特異的な造血因子です。

トロンボポエチンによって、骨髄における巨核球の増加や促進され、血小板数が増加します。

トロンボポエチン受容体は、血小板や巨核球の細胞膜上に発現しています

巨核球は、骨髄中に見られる、血小板を産生する細胞です。

レボレード®︎(エルトロンボパグ)

レボレード®︎は、慢性特発性血小板減少性紫斑病に適応があります。

用法用量初回 1日1回 12.5 mg
食事の前後2時間を避けて、空腹時に内服する
最大:1日 50 mg

レボレード®︎は、難治例の80%以上に有効です。

有効な場合は、血小板数が、5 万/以上に増加し出血が回避されます。

注意点:血栓症が誘発される可能性があるので、注意が必要です。

他の副作用で、肝障害、悪心、頭痛などがあります。

トロンボポエチン受容体作動薬であるレボレード®︎は、リツキシマブと違って、免疫抑制作用がないため、ステロイド無効例では、比較的使いやすい薬剤です

ロミプレート®︎(ロミプロスチム)

ロミプレート®︎は、レボレード®︎と同じで、慢性特発性血小板減少性紫斑病に適応があります。

皮下注射製剤で、週1回皮下注を行います。

用法用量初回 1 μg/kgを皮下注し、その後血小板や症状に応じ増減し、週1回皮下注する。
最大:週1回 10 μg/kg

免疫抑制薬

リツキシマブ(リツキサン®︎)

リツキシマブ(リツキサン®︎)は、トロンボポエチン受容体作動薬や脾臓摘出よりは、有効性が劣りますが(約 6割)、難治の場合に使用することがあります。

リツキシマブは抗体を産生するB細胞(リンパ球)を枯渇させることで、抗血小板抗体の産生を抑えます

リツキシマブはこれによって、治療効果を得ています。

シクロスポリン(ネオーラル®︎ / サンディミュン®︎)

カルシニューリン阻害薬である、シクロスポリン(ネオーラル®︎ / サンディミュン®︎)を使用する場合もあります。

脾臓摘出

従来は、ステロイドが無効な場合は、脾臓の摘出が行われていました。

ただし、脾臓がなくなることにより、重篤な感染症発症や静脈血栓症のリスクが増加するため

最近では、レボレード®︎といったトロンボポエチン受容体作動薬やリツキシマブ(リツキサン®︎)といった薬物治療の方が重篤な副作用も少ないため、脾臓摘出の機会は減っています。

緊急時はどうしますか?

血小板 2 万/μL以下は、原則緊急対応が必要です。

出血症状がある場合は、血小板減少によって止血が難しくなり、貧血が進行したり、最悪の場合出血によって血圧が低下し、命の危険性を伴う場合もあります

そのため、PLT 2 万/μL以下の場合は、まずは、出血部位を検索し、重篤な止血を認めた場合は緊急で止血を行います。

そして、薬物療法として、ステロイド治療と共に、 免疫グロブリン大量静注療法や ステロイドパルスを併用したりします。

血小板輸血は行いますか?

ITPの場合は、原則として血小板輸血は、緊急事態を除いて行いません

これは、血小板減少が免疫学的機序によるため、輸血をしても、すぐに血小板が壊されてしまうためです。

まとめ

“今回のまとめ”
  1. ITPの治療は、まずはピロリ菌感染がある場合は、ピロリ菌の除菌を行う。
  2. ピロリ菌陰性、あるいは除菌無効の場合は、次にステロイドが使用される。
  3. ステロイドでも効果不十分の場合は、最近では、トロンボポエチン受容体作動薬やリツキシマブ(リツキサン®︎)が使用される。
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〈参考〉




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