こんにちは、今回は『 ネフローゼ症候群 』について取り上げていきたいと思います。
ネフローゼ症候群は、あまり名前を聞いただけではよくわからなかったので、詳しく知りたいです!
ネフローゼ症候群について
ネフローゼ症候群を簡単にいうと?
ネフローゼ症候群と聞いても、なかなかイメージしづらいかもしれません。
ネフローゼ症候群を簡単にいうと、
何らかの腎臓の病気が原因で、多量のタンパク尿が出ることにより、特に下肢が著明に浮腫む状態がネフローゼ症候群です。
● 症候群とは?
症候群とは、いくつかの特徴ある症候の集まりのことを言い、一つの病気ではありません。
ネフローゼ症候群とは、腎臓の病気で認める、多量のタンパク尿や著明な浮腫といった特徴的な症候の集まりのことを指しています。
ネフローゼ症候群の症状
ネフローゼ症候群の症状で、一番多いのは、
『 浮腫(むくみ) 』です。
特に、重力的な影響から、下肢に認めることが多いです。
- 夕方になってくると、足がむくんでくる。
- 靴下を脱ぐと跡が残る。
- むくみが強くて、体重が急に増えた。
ネフローゼ症候群の診断
今回のとても大切なところです。
ネフローゼ症候群の診断基準は、以下のようになります。
〈 成人ネフローゼ症候群の診断基準(必須条件) 〉
- タンパク尿 ≧ 3.5 g / 日
- 腎臓から大量のタンパクが漏れ出ている
- 血清アルブミン(Alb)値 < 3.0 g/dl
- それによって、血液中のアルブミンが低下している
〈 他の参考となる所見 〉
- 浮腫
- 高LDLコレステロール血症(脂質異常症)
- TP(総蛋白量) ≦ 6.0 g/日
このネフローゼの診断基準は、「 尿にとても沢山のタンパクが漏れ出ていて、それによって血液中のアルブミンが低下しているのがネフローゼ症候群で、それによって、身体に著明な浮腫みができてしまいます 」と言っているんだ。
外来で1日の尿タンパク量を測るには?
血清Albは、血液検査でわかりそうですが、1日尿タンパク量はどうやったらわかりますか?
ネフローゼ症候群のタンパク尿は、3.5 g/日 以上が必須条件と書きましたが、1日タンパク尿を測るにはどうしたらいいでしょうか。
通常の尿検査では、採取した尿(随時尿)の中のタンパク濃度しかわかりません(随時とは、その時に採ったという意味です)。
なので、通常は、1日の尿を全て採取し、この尿のタンパク濃度と、1日尿量から1日タンパク尿を測定します。
ですが、これには蓄尿をしなくてはいけません!
蓄尿は、不衛生であったり、手間がかかるため、外来ではできませんし、入院でも頻度は減っている検査です。
ここで、登場するのが、
尿タンパク量(U-TP:mg/dL)と尿中クレアチニン(U-Cre:mg/dL)を測定することで、1日尿量を推測するというやり方です。
1日尿タンパク量(g/日) ≒ U-TP(尿タンパク量:mg/dL) / U-Cre(尿中クレアチニン)(単位:g/gCr)
この式によって、1日尿タンパク量を推測することができる、とても便利な式です。
※ この式が成り立つのは、クレアチニンが、1日におよそ1g 排泄されることによります。つまり、1日あたり1g排泄される尿中クレアチニンを分母にすることで、1日尿タンパク量が計算できるのです。
ネフローゼ症候群の原因
〈 糸球体の模式図 〉
では、身体の中では具体的にどんなことが起こっているのでしょうか?
〈 ネフローゼ症候群で起こっていること 〉
ネフローゼ症候群は、「大量のタンパク尿が出ている状態」と言いました。
具体的に、腎臓の中でどういうことが起こっているかといいますと、
腎臓にある、血液から尿を濾過する機能のある『 糸球体 』に異常があり、これによって尿にタンパクが漏れ出てしまっています。
通常は、タンパクは、糸球体から漏れ出たとしても、少量であれば近位尿細管で再吸収されます。
ですが、糸球体に障害があると、近位尿細管の再吸収でも賄いきれず、タンパクが尿に漏れ出てしまいます。
これが、ネフローゼ症候群の方の腎臓で起こっていることです。
糸球体に障害を起こす疾患
では、どういった疾患があると糸球体に障害が起きるでしょうか。
一次性ネフローゼ症候群
まず、ネフローゼ症候群を起こす原因として、『 糸球体腎炎 』という糸球体そのものに炎症があることでタンパク質が漏れ出てしまう、一次性ネフローゼ症候群があります。
- 微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)
- 膜生腎症(MN)
- 巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)
- 膜増殖性糸球体腎炎(MPGN)
ANCA関連血管炎も糸球体腎炎を起こすと聞きましたが、同じ腎炎でもネフローゼ症候群は起こさないのですか?
ANCA関連血管による糸球体腎炎は、『 半月体形成性糸球体腎炎 』と言います。
この半月体形成性糸球体腎炎は、タンパク尿を認めますが、それ以上に顕微鏡血尿が主体で、通常ネフローゼ症候群になるまでのタンパク尿は認めません。
このように、同じ糸球体腎炎でも、タンパク尿が有意なものと、顕微鏡的血尿が有意なものがあります。
二次性ネフローゼ症候群
次に、背景疾患があって、ネフローゼ症候群を起こすものを二次性ネフローゼ症候群といます。
- 糖尿病性腎症
- ループス腎炎(全身性エリテマトーデス)
- アミロイドーシス(多発性骨髄腫など)
- 感染症に合併するもの(B型肝炎、C型肝炎、HIV感染)
- 薬剤性(金製剤、非ステロイド性抗炎症薬)
糖尿病性腎症やループス腎炎は、二次性ネフローゼ症候群の代表的な疾患なんだにゃ。
なぜ、タンパク尿を認めると足がむくんでくるのですか?
最後に、多量のタンパク尿を認める時に、なぜ浮腫む原因となってしまうかを解説していきます。
〈 タンパク尿によって足がむくんでしまうメカニズム 〉
血液中にある主なタンパク質(およそ60%)である『 アルブミン (Alb)』は、血管内に血液を保持する働きをしています。
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ここで、ネフローゼ患者さんでは、尿に多量のタンパクが出ていること(1日尿タンパク量 ≧ 3.5 g/日)で、血液中のアルブミンが著明に低下しています(Alb < 3.0 g/dl )。
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なので、タンパク尿によって血液中のアルブミンがなくなってしまうと、血管内に水分を保持できなくなり、血管外に水分が漏れ出てしまうのです。
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これによって、血管外から漏れた水分が増えると、下肢などの浮腫みの原因となります。
〈参考〉
- 前嶋明人 レジデントのための腎臓教室 日本医事新報社
- ネフローゼ症候群は、腎臓の糸球体の障害によって多量のタンパク尿が出ることによって、下肢などに著明な浮腫みを認める状態である。
- 成人ネフローゼ症候群の診断の必須条件は、❶ タンパク尿 ≧ 3.5 g/日、❷ 血清アルブミン(Alb)< 3.0 g/dlである。
- ネフローゼ症候群は、糸球体腎炎が原因の一次性ネフローゼ症候群と、背景疾患がある二次性ネフローゼ症候群に分かれる。
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、よろしくお願いします?
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