こんにちは、今回は「帯状疱疹の治療と帯状疱疹後神経痛」について取り上げていきたいと思います。
帯状疱疹後神経痛がどれくらい残るのかなど、すごく気になっていました。
治療について
帯状疱疹には、抗ウイルス薬の経口薬や点滴を行います。
抗ウイルス薬の効果
帯状疱疹の抗ウイルス薬の効果は、次の2つがあります。
- 皮疹の改善や帯状疱疹関連痛を防止および消失までの期間を短縮させること1,2,3)。
- 眼症状や顔面神経麻痺などの合併症を予防すること。
この2つを達成するために、抗ウイルス薬を使用します。
それでは、それぞれの抗ウイルス薬について紹介していきます。
経口薬:バルトレックス®︎(バラシクロビル)
帯状疱疹の治療には、通常経口薬であるバルトレックス®︎(バラシクロビル)を使用します。
用法用量: 帯状疱疹として、バラシクロビル 1回1000mg(2錠)を 1日 3回 服用する。 |
内服期間: 7日間 内服する。 |
- 特徴
- 経口アシクロビルのプロドラックであり、アシクロビルより、バイオアベイラビリティが良い(54 %)。
- 適応
- 単純疱疹(単純ヘルペス)
- 帯状疱疹
- 造血幹細胞移植における単純ヘルペスウイルス感染症の発症抑制
- 水痘
- 性器ヘルペスの発症抑制
- 副作用
- 悪心や発疹があるが、基本副作用は少ない。
- 用量調節
- 腎機能によって、用量調節が必要。詳しくは添付文書を参照ください。
飲み始めのタイミングはいつからがいいですか?
抗ウイルス薬の目的は、ウイルスのDNAの合成を妨げて、ウイルスの増殖をさせないことです。
なので、服用のタイミングは、『 症状が出始めてから可能な限りすぐに開始するのが原則 』です。
では、帯状疱疹はどうでしょうか?
帯状疱疹のバルトレックス®︎(バラシクロビル)の飲み初めのタイミングは、
『 皮疹が出現してから3日以内に内服すること 』
がとても大切です。
ただし、皮疹が出現してから5日以降であっても、新しい皮疹が続いている場合、合併症が出現している場合や帯状疱疹後神経痛(PHN)の発症リスクが高い場合には、抗ウイルス薬の投与をした方が良いと考えられています4)。
治療を早く開始するためにも、皮疹を認めたら、すぐに医療機関を受診することが大切なのですね!
経口薬:ファムビル®︎(ファムシクロビル)
経口内服薬として、ファムビル®︎(ファムシクロビル)が使用される場合もあります。
用法用量: 帯状疱疹として、ファムシクロビル 1回 500 mg(2錠)を 1日 3回 服用する。 |
内服期間: 7日間 内服する。 |
- 適応
- 単純疱疹(単純ヘルペス)
- 帯状疱疹
- 服用のタイミング:皮疹が出現後、5日以内に服用を開始するのが良い
- 副作用
- 頭痛、傾眠、めまい、下痢、吐き気、腹部不快感、腹痛、口渇、嘔吐、口唇乾燥、便秘、発疹、動悸、倦怠感、発熱など
- 用量調節
- 腎機能によって、用量調節が必要。詳しくは添付文書をご参照ください。
経口薬:アメナリーフ®︎(アメナメビル)
用法用量: 帯状疱疹として、アメナメビル 1回 400 mg(2錠)を 1日 1回 食後に服用する。 |
内服期間: 7日間 内服する。 |
- 特徴
- アメナリーフ®︎は、主に糞便中に排泄されることから、患者さんの腎機能によって投与量の調節は必要ありません!
- 1日1回の服用で良い!
- 適応
- 帯状疱疹
- 服用のタイミング:皮疹が出現後、5日以内に服用を開始するのが良い
- 副作用
- 紅斑、過敏症、薬疹、湿疹、発疹、NAG増加、BUN増加、尿中蛋白陽性など
- 用量調節
- 腎機能による用量調節が不要。
点滴薬:アシクロビル(ゾビラックス®︎など)
『 重症の場合 』や『 経口接種が難しい場合 』は、点滴で治療する場合もあります。
その場合は、アシクロビルの点滴が使用されます。
用法用量: アシクロビル 1回 800 mgを 1日 5回 |
内服期間: 7日間 投与する。 |
- 適応
- 単純疱疹(単純ヘルペス)
- 帯状疱疹
- 造血幹細胞移植における単純ヘルペスウイルス感染症の発症抑制
- 服用のタイミング:皮疹が出現後、3日以内に開始するのが良い
- 用量調節
- 腎機能によって、用量調節が必要です。詳しくは添付文書を参照ください。
点滴薬:アラセナ-A®︎(ビダラビン)
免疫抑制患者の帯状疱疹には、アラセナ-A®︎(ビダラビン)の点滴薬も適応があります。
用法用量: ビダラビン 1回 5〜10 mg / kg / 日 |
内服期間: 5日間 投与する。 |
- 特徴
- アラセナ-Aは、アシクロビル耐性のウイルスにも有効です。
- 適応
- 単純疱疹(単純ヘルペス)
- 帯状疱疹
- 服用のタイミング:皮疹が出現後、5日以内に開始するのが良い
- 用量調節
- 腎機能によって、用量調節が必要です。詳しくは添付文書を参照ください。
帯状疱疹後神経痛について
帯状疱疹後神経痛(PHN)は、あまり聞き慣れない言葉かもしれません。
帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹に罹った後に神経障害が残存し、それによる神経痛を起こすことをいいます。
頻度はどれくらいですか?
帯状疱疹後神経痛は、どれくらいの頻度で認めますか?
帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹の合併症の中でも頻度が高く、5〜20%ほどが発症します。
高齢になればなるほど、合併する頻度が高く、80歳以上の方は、30%以上に発症するといわれています。
痛みはどういった痛みを感じますか?
患者さんによっても痛みの感じ方は多少違いはありますが、
典型的な神経痛の症状は、
- ヒリヒリ焼けるような痛み
- 針で刺すような痛み
が一定時間持続すると訴えます。
他にも、ピリピリ、ズキズキ、電気が走るような痛みと感じる方もいます。
また、それに付随して、アロディニアという触れただけで痛みを感じたり、逆に感覚が鈍くなることもあります(感覚鈍麻)。
帯状疱疹後神経痛の治療について
薬物療法
神経痛が強い場合は、まずは薬物療法が行われます。
実際に、処方されることが多い薬剤を紹介していきます。
リリカ®︎(プレガバリン):鎮痛作用[中]
リリカ®︎(プレガバリン)は神経障害性疼痛に対して、最もよく使用されている薬剤の一つです。
注意点として、内服すると、『 眠くなったり、傾眠傾向にする作用 』があります。
そのため、内服後の運転は避け、また、高齢者は転倒のリスクがあるので、内服後は十分に注意する必要があります。
また、リリカ®︎は腎排泄性のため、腎機能に応じた用量調節が必要です。
タリージェ®︎(ミロガバリン):鎮痛作用[中]
タリージェ®︎は、リリカ®︎と同じ神経障害性疼痛に対する治療薬です。
リリカ®︎と同じように、眠くなったり、傾眠、めまいなどの作用があるため、内服後の運転は避け、転倒には注意することがとても大切です。
タリージェ®︎も腎排泄性のため、腎機能に応じた用量調節が必要です。
サインバルタ®︎(デュロキセチン):鎮痛作用[中]
セロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質は、痛みの抑制をかけている『 下行性痛覚抑制系を活性化 』しています。
サインバルタは、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)であり、これによって、セロトニンやノルアドレナリンが低下するのを防いでおり、下行性痛覚抑制系の活性化を持続させています。
このようにして、サインバルタは、鎮痛効果を発揮しています。
トラマドール(トラマール®︎ / ワントラム®︎):鎮痛作用[中]
トラマドールは、μオピオイド受容体作動薬の作用と抗うつ作用(SNRI)を併せ持った鎮痛薬です。
医療用麻薬には指定されていない『 弱オピオイド鎮痛薬 』になります。
SNRIは、先ほど出た、サインバルタ®︎(デュロキセチン)と同じですね。
ただし、トラマドールには、悪心、嘔吐、便秘の副作用(オピオイド薬の副作用)を認めることがあるため、症状が強い場合は、制吐剤や下剤を併用します。
メチコバール®︎(メコバラミン):鎮痛作用[小]
メチコバール®︎(メコバラミン)は、『 活性型ビタミンB12 』です。
活性型ビタミンB12には、ダメージをうけた末梢神経を修復する働きがあります。
具体的には、末梢神経のタンパク質とリン脂質の合成を促進する作用があります。
ノイロトロピン®︎(ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液):鎮痛作用[小]
ノイロトロピンは、下降性疼痛抑制系という脊髄レベルで脳の痛みを感じにくくする作用や末梢の血流改善作用によって、神経痛を改善します。
実際、薬物療法の有効性はどれくらいなのか?
様々な、内服薬があるのですが、実は帯状疱疹後神経痛は、厄介なことが多く、なかなか鎮痛効果が得られないことも多いのが現状です。
時間経過によって、次第に神経痛が治まっていくことも多いのですが、一部の方は、何年にも渡り神経痛が持続する場合もあります。
臨床をしていて、神経痛は頭を抱える症状の一つです。。。
その他
薬物療法でも、十分な鎮痛が得られない場合は、理学療法や神経ブロック療法を行う場合もあります。
こういった治療は、ペインクリニックなどがメインで行われることが多いです。
- 理学療法
- 温熱療法
- 低反応レベルレーザー治療
- 電気刺激療法など
- 神経ブロック療法
- 星状神経節ブロック
- 硬膜外ブロックなど
その他にも、血行良くすることで痛みを和らげる『入浴』をしたり、冷えによる痛みを和らげる『保温』することなども大切です。
まとめ
開始のタイミング | 腎機能調節 | 特徴 | |
〈 経口薬 〉 | |||
バルトレックス®︎ (バラシクロビル) | 皮疹が出現後、3日以内 | 必要 | ・アシクロビルと比べてバイオアベイラビリティが良い(54%)。 |
ファムビル®︎ (ファムシクロビル) | 皮疹が出現後、5日以内 | 必要 | |
アメナリーフ®︎ (アメナメビル) | 皮疹が出現後、5日以内 | 不要 | ・1日1回の服用で良い。 ・糞便中に排泄されるため、腎機能による調節が不要。 |
〈 点滴薬 〉 | |||
アシクロビル (ゾビラックス®︎など) | ・皮疹が出現後、3日以内 ・皮疹出現後5日以降でも、重症の場合や新規皮疹が持続する場合等は投与することもあり | 必要 | ・重症の場合や経口摂取が難しい場合に適応がある。 |
アラセナ-A®︎ (ビダラビン) | ・発症から、5日以内 ・皮疹出現後5日以降でも、重症の場合や新規皮疹が持続する場合等は投与することもあり | 必要 | ・アシクロビル耐性のウイルスにも有効。 ・免疫抑制患者の帯状疱疹にも適応がある。 |
〈参考〉
- 1) Tyring S, et al., Ann Intern Med 123(2): 89-96, 1995
- 2) Tyring SK, et al., Arch Fam Med 9: 863-869, 2000
- 3) Degreef H, et al., Int J Antimicrob Agents 4, 241, 1994
- 4) 渡辺大輔ら, 臨床医薬 28: 161-173, 2012.
- バルトレックス®︎(バラシクロビル)の添付文書
- ファムビル®︎(ファムシクロビル)の添付文書
- アメナリーフ®︎(アメナメビル)の添付文書
- アシクロビル(ゾビラックス®︎など)の添付文書
- アラセナ-A®︎(ビダラビン)の添付文書
- 清水 宏 あたらしい皮膚科学 第3版 中山書店
- 抗ウイルス薬は、発症してからなるべく早期に開始することが原則であり、症状を認めたらすぐに医療機関を受診する。
- 帯状疱疹に使用される抗ウイルス薬は、アメナリーフ®︎(アメナメビル)以外は、腎排泄性であるため、腎機能によって投与量を調節が必要である。
- 帯状疱疹後神経痛には、薬物療法が基本であるが、鎮痛効果は十分ではなく、症状が持続することも多い。
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、ぜひよろしくお願いします?
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