こんにちは、今回は「ユプリズナ®︎(イネビリズマブ)の特徴について」取り上げていきたいと思います。
ユプリズナ®︎は、視神経脊髄炎関連疾患(NMOSD)に適応がある、お薬ですよね!
よろしくお願いしますっ!
ユプリズナ®︎(イネビリズマブ)の特徴について
ユプリズナ®︎(イネビリズマブ)は、2021年6月に発売された、『 抗CD19モノクローナル抗体製剤 』です。
視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)に対する治療薬として発売されたユプリズナ®︎ですが、どういった特徴があるのでしょうか。
適応疾患は?
ユプリズナ®︎(イネビリズマブ)の適応疾患は、以下のようになります。
- 視神経脊髄炎スペクトラム障害
どんな時に適応となりますか?
● 『 抗アクアポリン抗体陽性 』の視神経脊髄炎スペクトラム障害・・・第Ⅱ/Ⅲ相国際共同臨床試験1)において、抗アクアポリン抗体陽性の視神経脊髄炎スペクトラム障害患者さんに高い有効性を認めたため、抗アクアポリン抗体を認めていることが大切です。
同時に、高アクアポリン抗体陰性の場合は投与が制限されます。
用法・用量は?
ユプリズナ®︎(イネビリズマブ)の用法用量は以下のようになります。
用量: 1回 300 mg |
用法: 初回、2週間後に点滴静注。以降、6ヶ月ごとに1回の間隔で点滴静注する。 |
現状、薬価はかなり高価
下で紹介していますように、ユプリズナ®︎(イネビリズマブ)はかなり高価な薬剤ですが、
NMOSDは、国の指定難病に登録されており、申請し承認が得られれば、国から医療費の補助を受けることができますので、ご安心ください。
100 mg シリンジ 3,495,304 円。
1回 300 mgを使用すると、10,500,000円弱(およそ1千万円)となります。
なぜ、ユプリズナ®︎は、こんなに高価な薬なのですか?
ユプリズナ®︎は、そもそも抗体製剤であり、製造工程の複雑さから、もともと薬価が高いお薬ですが、
さらに、2022年2月現在のところ、対象疾患が希少疾患であるNMOSDのみであることが大きいかと思われます。
つまり、もともと高価な抗体製剤で、希少疾患のみ適応であるということで、需要と供給のバランスにおいて、極めて重要の割合が低く、とても高価となってしまうのです。
ただし、CD19抗体は、広くB細胞を除去できる治療であるため、今後、さまざまな疾患にも応用できる可能性がり、適応疾患が増えれば、今後薬価の改訂もあるかもしれません。
副作用は?
特に注意が必要なもの
インヒュージョンリアクション(Infusion reacton) 12%
抗CD19抗体製剤や抗CD20抗体製剤に、よく認められる、薬剤の過敏反応をインフュージョンリアクション(輸注反応)と言います。
投与初期に、頭痛、悪心、発熱、筋肉痛、発疹などの症状を認め、時に呼吸困難も認めることがあります。
投与初期に認められることが多いため、体調に異常を認めたら、すぐに伝えることが大切です。
感染症 12.4%
抗CD19抗体製剤であるユプリズナ®︎は、抗体産生など免疫系で重要な働きをするB細胞(リンパ球)をほぼ0にししまう治療です。
そのため、免疫抑制薬の中でも、高度に免疫抑制作用のある薬でもあり、感染症には十分な注意が必要です。
第Ⅱ/Ⅲ相国際共同臨床試験による副作用の報告
また、第Ⅱ/Ⅲ相国際共同臨床試験1)で報告された「 主な副作用と重篤な副作用 」を紹介します。
主な副作用
注入に伴う反応 | 8.6 % |
悪心 | 2.3 % |
貧血 リンパ球減少症 好中球減少症 頭痛 | 1.7 % |
尿路感染 関節痛 発疹 | 1.1 % |
重篤な副作用
異形肺炎 | 0.6 % |
霧視 | 0.6 % |
より詳しく知りたい場合は、こちらをご参考ください。
イネビリズマブの有効性について【こんな方に効果が期待できます】
第Ⅱ/Ⅲ相国際共同臨床試験1)
❶ ユプリズナ®︎は、NOMSDの発作のリスクを減少させる。
イネビリズマブ(ユプリズナ®︎)は、抗アクアポリン抗体陽性NOMSD患者の発作リスクを77.3 %と統計学的に有意に低下させました(p < 0.0001)。
❷ MRI画像における、累積病変数を低下させる。
(画像引用:http://www.treatneuro.com/archives/5091)
NMOSDのMRI画像
ユプリズナ®︎(イネビリズマブ)によって、抗アクアポリン抗体陽性NOMSD患者さんにおける、活動性MRI病変の累積数は、プラセボ群と比較して、統計的に有意に低値を示しました(発生率比 0.568 [ 95%CI:0.3851〜0.8363 ]p = 0.0042)。
ユプリズナ群 n=161 | プラセボ群 n=52 | |
活動性MRI病変の 累積数の割合 | 46%( 74/161 ) | 60.0%( 31/52 ) |
発生率比* | 0.568 | |
95%CI | ( 0.3851, 0.8363 ) | |
p値 | 0.0042 |
*:活動性MRI病変の累積数の発生率ひの減少発生率比は、イベントが発生した患者だけでなく、全患者数を基にしている。
❸ NMOSD関連の治療のための入院回数を低下させる。
ユプリズナ®︎(イネビリズマブ)によって、NMOSD関連の治療のための累積入院回数は、抗アクアポリン陽性のNMOSD群の方が、プラセボ群と比べて、統計的に有意に低値を示しました(発生率比 0.258 [ 95%CI:0.0904〜0.7384 ]p = 0.00115)。
ユプリズナ群 n=161 | プラセボ群 n=52 | |
NMOSD関連入院の 累積回数の割合 | 5.0%( 8/161 ) | 13.4%( 7/52 ) |
発生率比* | 0.258 | |
95%CI | ( 0.0904, 0.7384 ) | |
p値 | 0.0115 |
ユプリズナ®︎(イネビリズマブ)の作用機序は?
イネビリズマブは、B細胞(リンパ球)に発現するCD19に対する『抗CD19抗体製剤』である。
イネビリズマブは、『抗CD19抗体製剤』です。
CD19は、リンパ球の一つであるB細胞に特異的に発現している、細胞表面マーカー(タンパク)です。
CD19は、B細胞に幅広く発現する細胞表面マーカーである
(引用画像:https://www.kidney-international.org/article/S0085-2538(20)30108-3/fulltext)
上図のように、CD19は、B細胞に幅広く発現しているのがわかるかと思います。
このためイネビリズマブ(ユプリズナ®︎)は、抗CD20抗体製剤である「リツキシブ(リツキサン®︎)」よりも、幅広くB細胞をターゲットとしています。
ユプリズナ®︎は、B細胞上のCD19に直接結合します。
これによって、免疫細胞(NK細胞など)がB細胞を直接攻撃し、B細胞を枯渇させます。(これをADCC活性:抗体依存性細胞障害と言います。)
(ADCC:antibody-dependent cellular cytotoxicity)
B細胞は、抗アクアポリン抗体を産生する
なんで、B細胞をターゲットとすることが大切なのですか?
それは、B細胞(リンパ球の一つ)は抗体を産生する細胞だからです。
通常、抗体は、ウイルスなどの病原体に対して作用する免疫機能の一つですが、この抗体は『 B細胞 』によって作られます。
そのため、B細胞をイネビリズマブによって除去することで、抗アクアポリン抗体の産生をなくし、NMOSDの症状を改善させることができるのです。
抗アクアポリン抗体の病原性について
そもそも、抗アクアポリン抗体って、視神経脊髄炎スペクトラム障害に悪さをしているのですか?
2004年に視神経脊髄炎の研究で、抗アクアポリン4抗体が発見され、
2005年にこの対応抗原が、中枢神経系にあるアストロサイトの足突起に高密度に発現するアクアポリン4であることが発見されました。
この抗アクアポリン4抗体が、アストロサイトを障害を起こすことで、視神経脊髄炎スペクトラム障害の原因となります。
そのため、抗アクアポリン抗体の産生を抑えることが、NMOSDの治療となるのです。
アストロサイトってなに?
(引用画像:http://plaza.umin.ac.jp/~pmd/iden_about.html)
アクアポリン4が発現するアストロサイトの模式図
アストロサイト(星状膠細胞)は、中枢神経に存在するグリア細胞の一つで、ニューロン(神経細胞)に栄養を与えたり、過剰なイオンや神経伝達物質を速やかに除去することにより、神経細胞の生存と働きを助けている細胞です。
〈参考〉
- ユプリズナ®︎(イネビリズマブ) 添付文書
- 1) Cree BAC Lancet 2019;394(10206):1352-1363.
- ユプリズナ®︎(イネビリズマブ)は、抗アクアポリン抗体陽性の視神経脊髄炎スペクトラム障害の治療で良い適応となる。
- 抗CD19抗体製剤である。
- B細胞枯渇療法によって、抗アクアポリン抗体の産生を抑えることで、治療効果を発揮する。
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、ぜひよろしくお願いします?
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※個人個人で症状の違いがあるため、詳細な治療などにつきましては直接医療機関へお問い合わせください。