こんにちは、今回はリウマチ性多発筋痛症の治療について取り上げていきたいと思います。
よろしくお願いしますっ!
本文では、リウマチ性多発筋痛症をPMRとも表記しています。
リウマチ性多発筋痛症の治療について
PMRの第一選択薬は?
PMRの第一選択薬は、
なんと言っても、『ステロイド』です。
これは、PMRが、ステロイドにとてもよく反応することによります。
ステロイドは、通常プレドニゾロン(プレドニン®︎)が使用されます。
通常の初期量は、低用量のステロイド(プレドニン®︎換算で 10〜20mg)で開始されます。
〈 処方例 〉
- プレドニン®︎(プレドニゾロン) 15〜20 mg /日程度で開始する。
- その後、およそ3週間ごとに 12.5 mg/日 → 10 mg/日と減量する。
- その後は、4〜8週ごとに 1 mgずつ減量していきます。
※ 個々人で症状の強さや経過が違うため、実際の治療経過は多少前後します。
PMRはステロイドが著効することが多く、患者さんは、それまで立ち上がることも困難だったのが、数日から1週間ほどで、『嘘のように身体の痛みが良くなりました』と仰ることが多いです。
ステロイドだけでは、コントロールできない場合はどうしますか?
ステロイドだけでは寛解に至らない場合は、
他の選択薬として、
- メトトレキサート(リウマトレックス®︎など)
- IL-6阻害薬 : アクテムラ®︎(トシリズマブ)
が選択肢として挙がります。
※ 以上の2剤は、PMRに対しては保険適応がありません。通常は関節リウマチの保健病名として使用する場合が多いです。
(アクテムラ®︎は、巨細胞性動脈炎を合併している場合は、巨細胞性動脈炎として使用されるかと思います。)
メトトレキサート
プレドニンで治療抵抗性の場合は、『メトトレキサート』の早期併用も推奨されています。
使用量は?
2015年欧州・米国リウマチ学会(EULAR/ACR)のRecommendations1)では、
『 7.5〜10mg /週 』程度の使用が推奨されています。
アクテムラ®︎(トシリズマブ)
アクテムラ®︎(トシリズマブ)は、IL-6阻害剤という生物学的製剤です。
アクテムラ®︎については、ランダム化比較試験の結果があるわけではなく、エビデンスが高いわけではないですが、フランスで行われたTENOR試験では、前向きオープンラベルでの有効性が報告されています2)。
エビデンス
前向きオープンラベルのTRNOR試験では、1年以内に発症した中等症以上のPMR患者さんでアクテムラ®︎(トシリズマブ)の単剤療法の有効性が示されました。
- 1年以内に症状が出現し、PMR-AS > 10であるステロイド未治療のリウマチ性多発筋痛症患者20名に対して、トシリズマブ 8mg/kgを4週ごとに計3回投与した。
- ベースラインのPMR-ASの中央値は 36.6(IQR 30.4 – 43.8)で、12週目の時点で全ての患者がPMR-AS ≦ 10であった。
- 12週目と24週目のPMR-ASの中央値は、それぞれ4.5 ( IQR: 3.2 – 6.8 )と0.95 ( IQR: 0.4 – 2 )であった(両時点ともベースラインに対して P < 0.001)。
- ➡︎ 今後、無作為化比較試験が望まれる。
※ PMR-AS (activity score):PMRの疾患活動性スコア。
※ PMR-AS (activity score) | 活動性 |
0 – 1.5 | 寛解 |
1.5 – 7 | 低 |
7 – 17 | 中 |
>17 | 高 |
TNF阻害薬の使用はどうですか?
2015年欧州・米国リウマチ学会(EULAR/ACR)のRecommendations1)では、
『 TNF阻害薬の使用は推奨されていません。むしろ、強く反対するとされています。 』
これは、PMRに対する有効性を示すエビデンスが乏しく、逆に潜在的な有害性にもなりかねないとも言われているためです3)。
なので、実臨床でも基本的には、TNF阻害薬は使用されません。
※ TNF阻害薬の例
- レミケード®︎(インフリキシマブ)、エンブレル®︎(エタネルセプト)、ヒュミラ®︎(アダリムマブ)など
最終的にステロイドは終了できますか?
疾患の活動性や治療経過にもよりますが、ステロイドを終了できる方はいます。
ただし、焦ってステロイドを早めに減量すると、再燃のリスクが上がりますので、治療は長い目でみる方が良いかと思います。
〈参考〉
- 1) Dejaco C, et al:Ann Rheum Dis. 2015;74(10):1799-807.
- 2) Devauchelle-Pensec, et al. Ann Rheum Dis, 2016;75(8):1506-10.
- 3) Ramiro S, et al. Ann Rheum Dis 2014;73:529-35.
- 荻野 昇 ケースでわかるリウマチ・膠原病診療ハンドブック 羊土社
- リウマチ性多発筋痛症の第一選択薬は、低用量ステロイドである(プレドニン®︎換算で15〜20mg程度)。
- 第2選択薬としては、メトトレキサートやアクテムラ®︎(トシリズマブ)が検討される。
今回はここまでです。最後までお読み頂きありがとうございました。ご参考になりましたら幸いです? Twitterでのいいねやフォローをして頂けますと励みになりますので、ぜひよろしくお願いします?
リンク
※個人個人で症状の違いがあるため、詳細な治療などにつきましては直接医療機関へお問い合わせください。